第46回 年収の壁・支援強化パッケージ

2023年11月8日

 令和5年度(2023年)の最低賃金は、全国加重平均額がついに1,000円を超えて1,004円(東京都1,113円)となりました。これは、昨年度比で+43円(4.3%)となり、昭和53年(1978年)の制度開始以来最大の引き上げ幅となりました。最低賃金を上げることで、労働者全体の給与額を底上げするのが最大の目的ですが、一方で、いわゆる「年収の壁」を意識して働いているパート・アルバイトを雇用している企業にとっては、最低賃金の上昇は就業調整を招き、実質的に労働時間の減少を招くことになってしまいます。このことは、ただでさえ人手不足に悩む中小・零細企業にとっては死活問題です。そこで政府はこの「年収の壁」に対する当面の施策として「年収の壁・支援強化パッケージ」を発表しました。今回は、この施策の概要について解説いたします。

「年収の壁」の種類

 「扶養の範囲を超えないように働きたい」というパート・アルバイトの方々にとっての「年収の壁」は、主に4段階あり、所得税や住民税に係る「税金」に関する基準と、年金や健康保険に係る「社会保険」に関する基準があります(図表1)。

(図表1)

 「年収の壁・支援強化パッケージ」は、上記4段階の壁の内、社会保険に関する「106万円」と「130万円」についての対策となっています。

「106万円の壁」対応 

キャリアアップ助成金に新コース「社会保険適用時処遇改善コース」を設置

106万円を超えないように働いている従業員の賃上げ努力などをした企業に、対象となる従業員1人当たり最大50万円を支給(図表2、図表3)。

社会保険適用促進手当

事業主が社会保険適用に伴い、手取り収入を減らさないように手当を支給した場合、本人負担分の社会保険料相当額を上限として、社会保険料の算定対象外とする(図表2、図表4)。

(図表2)

(図表3)キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」受給額

(1)手当等支給メニュー

(2)労働時間延長メニュー

  • 助成金は中小企業の金額(大企業は3/4の額)
  • 1年目に(1)の取組による助成(20万円)を受けた後、2年目に(2)の取組による助成(30万円)を受給可能

(図表4)社会保険適用促進手当

事業主が被用者保険適用に伴い手取り収入を減らさないよう手当を支給した場合は、本人負担分の保険料相当額を上限として社会保険料の算定対象としません。

「130万円の壁」対応

 パート・アルバイトで働く方が、繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、一時的に収入が上がったとしても、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となります(図表5)。ただし、今のところ2年間の時限措置の予定となっています。

(図表5)

※ 図表2~図表5は、厚生労働省「年収の壁・支援強化パッケージ」リーフレットより引用

配偶者手当への対応

 企業が独自に支給している「配偶者手当」「扶養手当」「家族手当」などは、社会保険の被扶養者の人数等により金額を決定して支給している場合が多いので、扶養から外れないように就業調整を行う要因となっているといわれています。
 そこで政府は、各企業が不利益変更とならないように留意しながら、配偶者手当等の見直しを促進しています。具体的には、配偶者手当の収入制限の撤廃、あるいは配偶者手当を廃止または縮小し、基本給の増額・こども手当の増額などです。
 詳しくは、以下の厚生労働省のホームページを参考にされると良いでしょう。

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