季節メニュー投入で増収減益の飲食店! 業績改善できた理由とは?

2016年7月23日

※本記事は2024年2月22日にタイトル及び内容の一部を更新しました。
旧タイトル「なぜ、お荷物の季節メニューが稼ぎ頭に変わったのか?」

飲食業

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2016/07/23

質問

お客さまには喜んでいただきたいけれども、季節メニュー投入で想定外の業績悪化を招いてしまった「レストランミロク」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

売上が増えても利益が減ってしまっては経営が成り立たないので、季節メニューを取りやめる。

パターン2

季節メニューの原価を正確に計算し、適切な価格設定をした上で、来客数が少ない月曜・火曜の限定メニューとする。

パターン3

お客さまが増えているので、目先の利益にとらわれずに引き続き季節メニューを投入する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
飲食店イメージ01
飲食店イメージ02

季節メニューが評判の店

現在、とある県を中心に5店舗を展開する「レストランミロク」は、旬の食材を活かした定番メニューが評判のお店です。また定番メニューに加えて、お客さまを飽きさせることがない季節メニューのおかげで、以前は閑古鳥が鳴いていた月曜日と火曜日も安定的にお客さまが訪れます。この季節メニューは既存のお客さまの来店頻度を高めるとともに、口コミで新規のお客さまも呼び込んでくれています。季節メニューをうまくもうけにつなげられるようになったおかげで、業績も好調に推移しています。

今でこそ、繁盛店となり業績も順調に伸びている「レストランミロク」ですが、実はかつて季節メニュー投入で大失敗したことがあったのです。ちょっとその頃の様子をのぞいてみることにしましょう。

数年前 ~大失敗!季節メニュー投入で増収減益

それは数年前の春のことでした。「飲食店はお客さまのご要望にお応えしてこそ、お客さまから受け入れられてお得意さまになっていただけるんだ」とばかり、お客さまから要望の多かった素材を活かした料理数点を何としてもメニューに追加するんだと試行錯誤していました。苦労のかいがあって間違いなくお客さまに満足いただける自信作がついに完成、春の季節メニューとして3つのメニューを投入しました。季節メニューは、食材にこだわっているため食材原価が少し高くつくかもしれないものの、集客の目玉にしたいので、定番メニュー並みの価格設定にして提供することにしました。

季節メニュー投入直後からお客さまの反応は上々で、3つの季節メニューはどれもその後さらに注文がうなぎのぼりに増えていき、そのうちの1つはいつの間にかそれまでの人気ナンバーワンメニューをも上回る月間販売数を達成。この季節メニューのおかげで来店客も増え、店も大忙し。社長も手応えを感じていました。

社長 A店長、春の季節メニュー、どれも大ヒットだな
A店長 本当ですね。お客さまに満足していただけてうれしい限りです
社長 苦労したかいがあっていいメニューができたからな。今月は思った以上にたくさんのお客さまに来店していただけたから、だいぶ忙しかったろう? アルバイトを増やして何とかしのげたけどな。大変かもしれないが、引き続きよろしく頼むよ
A店長 お客さまに喜んでいただけるんで、忙しいですけど、疲れも吹き飛びます
社長 そうか、そうか。この季節メニュー、お客さまにどんどんおすすめしていこう!
そんな中、経理担当のBさんから4月の業績について報告を受ける日がやってきました。お客さまに満足していただけたという達成感に心を満たされながらBさんの報告に耳を傾けます。
Bさん 社長、4月の業績が出ましたのでご報告させていただきます。4月度の売上高は先月よりも12%の伸びです。前年同月と比べると18%も伸びています
社長 季節メニューを投入した4月は季節メニューの売上が絶好調だったからな。思った以上に売上が伸びたな
Bさん 社長、確かに売上は良かったんです。ですが、……
Bさんが一瞬間を置いた上で続けます。
Bさん 実は利益の方に問題がありまして……。4月度は営業利益が前年同月よりも70%も減ってしまっているのです
社長 えっ、本当かい? そんなはずはないだろう?

春の季節メニュー投入効果が出て来店客が順調に増えていることを肌で感じ、安心し切っていた社長でしたが、自分の予想に反し利益が激減しているとの事実にショックを隠せません。報告前の達成感はすっかり吹き飛んでしまったのです。

結局、そのとき投入した春の季節メニューは思惑どおり集客には貢献し、売上は上がったものの、業績悪化を招いてしまったのでした。

質問

お客さまには喜んでいただきたいけれども、季節メニュー投入で想定外の業績悪化を招いてしまった「レストランミロク」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

売上が増えても利益が減ってしまっては経営が成り立たないので、季節メニューを取りやめる。

パターン2

季節メニューの原価を正確に計算し、適切な価格設定をした上で、来客数が少ない月曜・火曜の限定メニューとする。

パターン3

お客さまが増えているので、目先の利益にとらわれずに引き続き季節メニューを投入する。

今回の季節メニュー投入は、業績に及ぼす影響が大き過ぎました。今回の失敗からリスクが大きそうな季節メニュー投入に慎重になるのはもっともですね。しかし、苦労しながら試行錯誤して開発した季節メニューがお客さまに支持されたことは確かです。ぜひ、お客さまを飽きさせず、季節感を味わっていただけるような特別な季節メニューを継続的に提供できるようマネジメントしたいところですね。そのためには原価計算を含めた会計の知識が役に立ちます。

実は、当時、「レストランミロク」の社長が選択したのはパターン2でした。たくさんのお客さまに来店していただけ、日々の売上も順調に伸びていたので、社長は、利益は自然についてくるものと安心し切っていました。 “どれだけ魅力的なメニューを提供して多くのお客さまに来店していただくか” ばかり気にしていたし、実際に来店客が増加したことに満足していたことは否めません。実は、そのために大事な点を見落としてしまっていたのですが……。

確かに売上が増えることで利益がついてくることもあります。しかし本当に今回の季節メニューは売上が拡大すれば利益が増加するのでしょうか。もしかしたら季節メニューにかかわるコストが販売価格を上回っている可能性もあり得ます。その場合、定番メニューで稼いだ利益を季節メニューの赤字で食いつぶしていることになりますから、季節メニューを売り続けることでいつか赤字になってしまいます。季節メニューを続けるかどうかを決定する前に、まずは季節メニューにかかわるコストをしっかりと計算してみるべきでしょう。

業績改善のターニングポイントは事前に採算を考えたことだった

季節メニューは想定以上の来店客を呼び込み、売上も大きく増えました。しかし、季節メニューは食材にこだわっているため食材原価が高くつく割に、定番メニュー並みの価格設定をしていたので、売上が大きくても利益はそれ程出ません。社長自身、定番メニューよりは利益率は低めだろうとは思っていましたが、どの位利益率が低いかまできちんとつかんではいませんでした。利益率の高い定番メニューも十分に売れて利益を下支えしてくれていれば良かったのですが、想定以上に売れた季節メニューに押されて定番メニューは売上が落ちてしまったため、トータルでは粗利益率が大きく落ち込む結果を招いたのでした。

さらにもう1点、今回投入した季節メニューが定番メニューと違って仕込みに手間がかかるものになっていた点も見過ごしていました。キッチンが大忙しとなって急きょアルバイトを採用して対応しなければならなくなり、人件費の増加を招いてしまいました。社長は来店客が増えて忙しくなったからと考えていましたが、むしろ季節メニューの仕込みに手間がかかることの問題の方が大きかったのです。

こうして、季節メニュー目当てのお客さまが殺到した結果、粗利益率の悪化と人件費の増加というダブルパンチで、業績を大きく悪化させてしまったのでした。

今回の季節メニューでの失敗から、
・メニュー投入の前段階でそのメニューの食材原価と利益率をつかんでおく必要があったこと
・食材原価だけでなく人件費などオペレーションにかかる費用への影響も考える必要があったこと
・利益率が低いメニューが売れ過ぎると他のメニューの売上を食って、トータルの利益を押し下げてしまいかねないこと
などを実感した社長は、失敗を繰り返さないよう次回の季節メニューに向けての準備を進めていったのでした。

メニュー別に採算をつかむ仕組み作りとしては、メニュー1食作るのにどの位の食材原価がかかるのか、その目安(標準原価)を設定するようにしました。その過程で、今回の季節メニューの利益率が、実は投入時に社長が思っていた以上に低かったことも分かったのです。次に季節メニューを投入した際は、集客の目玉とするため利益率は抑え目にしましたが、しっかり利益は確保できるよう食材原価が高くなり過ぎない工夫をしたり、仕込みの手間のかかるメニューは回避したりするなど、事前のシミュレーションをしっかり行いました。

また利益率が抑え目の季節メニューは、来客数が極端に少なくなる月曜日と火曜日の限定メニューとしました。集客数の増加を狙った目玉策です。それによって定番メニューの売上を食ってしまい想定外の利益率低下を招くというカニバリゼーション(共食い)を避けるようにしました。こうして投入した曜日限定の季節メニューでは、前回のような失敗を繰り返すことはありませんでした。

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