売れ残りと長時間労働に悩むパン屋! 2つの悩みを同時に解決した、その秘策とは?

2019年10月23日

小売業

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2019/10/23

質問

都心の住宅地の一角にあるパン屋「Bäckerei MJS」は、それなりに固定客があるものの、日々の販売数量の変動が大きく、売れ残りが多いことに悩んでいました。また、経営者夫婦は自分たちの労働負担を減らしたいとも考えていました。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

新しい安定顧客を開拓し、店舗販売の割合を縮小する。

パターン2

販売担当の従業員を雇って、販売強化を図る。

パターン3

移動販売によって商圏を広げる。
 

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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悩みを解決し、幸せなパン屋夫婦

「Bäckerei MJS」(ベッカライMJS)は、会社勤めをしていた夫婦が、二人の共通の趣味であるパン作りが高じて、いわゆる脱サラをして始めたパン屋さんです。現在は、日によって多量に生じていた売れ残りも減少し、夫婦二人の労働負担も減少でき時間的ゆとりもできました。

しかし、3年前までは違っていました。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

3年前 ~2つの悩みを抱える日々

Bäckerei MJSは、ドイツ風のパンをメインで販売しているパン屋さんです。パンのおいしさには定評があり、ドイツ風のパンが好きな人は定期的にたくさん購入してくれています。

しかし、万人受けするパンではないこともあってか、店主が思っていたよりも日々の販売量の変動が大きく、日によっては多量に売れ残りが出ていました。元々、パンが好きで始めた商売なだけに、パンを廃棄することには強い抵抗感がありました。

また、夫婦二人の他にパート・アルバイトを加えて製造・販売を行っていますが、夫婦で朝早くからパンを製造し、できるだけ売れ残りが出ないように遅くまで営業しているため、慢性的な長時間労働の状態であり、夫婦の労働負担が重くなりがちでした。

営業時間を短くすることも考えましたが、現状の儲けを極端に減らしてしまうと生活をしていく上で困ります。しかし、長く健康的にパン屋を続けていくためにも、何とか労働時間を減らしたいと思っています。

こうした悩みを抱え、今後どうすればいいのか決められないまま時間が経過していました。

質問

都心の住宅地の一角にあるパン屋「Bäckerei MJS」は、それなりに固定客があるものの、日々の販売数量の変動が大きく、売れ残りが多いことに悩んでいました。また、経営者夫婦は自分たちの労働負担を減らしたいとも考えていました。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

新しい安定顧客を開拓し、店舗販売の割合を縮小する。

パターン2

販売担当の従業員を雇って、販売強化を図る。

パターン3

移動販売によって商圏を広げる。

Bäckerei MJSが選択したのは、新しい安定顧客を開拓し、店舗販売の割合を縮小することだったのですが、それは一体どんな方法で、なぜそのような選択をしたのでしょうか?
 

これは、販売力を強化することで売れ残りを減らそうとする案です。新たに販売担当の従業員を雇うことで、夫婦の労働負担は減ることになります。しかし新たな人件費が生じるので、儲けが大きく減ることになるかもしれません。

移動販売によって商圏を広げることで売れ残りを減らすことができるかもしれません。しかし、この方法では夫婦の労働負担の軽減にはつながらないかもしれません。
 

きっかけは妻と常連客の立ち話だった?!

ある日、常連のお客さんがBäckerei MJSにパンを買いに来て、店主の妻と立ち話をしていました。

常連客 前にちょっと話したドイツレストラン、この間行ってみたのよ
店主の妻 あら、そうだったんですか。いかがでしたか?
常連客 それがさぁ、料理はおいしいんだけど、パンが全然ダメだったの。ほんとに残念! お宅のパンを買ってあのレストランに持ち込めたらもっと最高な時間になったのに~って思っちゃった
店主の妻 まぁ、うちのパンをそんなにほめて頂けてうれしいです


そんなやり取りをちょうど耳にした店主は、そのとき思ったのです。

店主の心の声 <そうか、何も店に来てくださる方だけがうちのお客さんじゃないんだ!>


これをきっかけに、店主はBäckerei MJSの新たな展開について考え始めたのです。

店主の心の声 <ドイツレストランっていうのはドイツパン好きな人が来る可能性が高い場所だ。だったら、うちのパンが喜ばれる可能性も高いはず。しかも、レストラン向けならある程度のボリュームが事前に見込めるから、売れ残りを心配しなくてもいい……>


さらに店主の考えは進みます。

店主の心の声 <レストラン向けである程度のボリュームが売れれば、店頭での販売量も減らせるから、店の営業時間も短縮できる。今の長時間労働からも解放されるかもしれない>


こうして、妻と常連客の立ち話をきっかけに、Bäckerei MJSはパンの卸売りという新たな販売チャネルの開拓に一歩踏み出したのでした。最初は近隣のレストランから始めた卸売りですが、Bäckerei MJSのおいしいドイツ風パンは評判で、次第に商圏も広がっていきました。

もう1つの展開 ~孫娘の給食がヒントに!

ただし、ドイツパンというニッチな商品だけでは卸売りにも限界があります。そのため店主は、ドイツレストラン向けの卸売りを進めるとともに、さらなる展開も必要だと考えていました。

そんなある日のこと、近くに住む店主の娘と小学校に通う孫娘が、一緒に店に立ち寄ったのです。
 
店主の妻 お腹すいてない? 何か食べたいパンある?
孫娘 毎週水曜日の給食はパンなの。だから今日はもうパン食べちゃったからいい
店主の妻 そうなの。じゃあ、今度パンの日じゃないときにね

それを聞いていた店主はふと思いました。
 
店主の心の声 <毎日同じパンを店頭にたくさん並べるのではなく、曜日によってパンの種類を変えてみたらどうだろう? パンを提供するレストランとかにも、いつも同じパンではなく、日によって違うパンを提供したらお客さんも飽きないんじゃないか?>

こうしたヒントを得た店主は、レストランや老人施設、そして最近増えてきた民泊施設などに、日替わりのパンメニューを提供できることを提案していきました。そして、定番のパンの他にオリジナルのパンも提供できることが功を奏し、新規取引での採用も進んでいきました。その結果、安定的な売上へとつなげることができたのです。

Bäckerei MJSの店頭販売については、曜日によって提供するパンの種類を変える一方で一日に提供するパンの種類を絞ることで、日々のパンを焼く工程が単純化でき作業負担を軽減することができました。また、パンを提供する曜日や焼き上がり時間の告知を行い、取り置きなどの予約販売などにも対応することで、売れ残りが減少しパンを廃棄することもなくなりました。こうした取り組みの結果、店舗の営業時間も短縮でき経営者夫婦の負担も軽減することができました。

店頭での売上は以前よりも減少したものの、卸売り販売の増加や廃棄の激減で、Bäckerei MJSは増収・増益で推移しています。何より労働時間が以前よりも削減でき「生産性が向上」したことが大きな喜びとなっているのです。

 
ワンポイント解説

「販売チャネル」

販売チャネルとは、販売する場所や販売するための経路などを言います。本記事のように、パンの販売であっても、店舗での一般消費者向けの小売りもあれば、レストランなどへの卸売りもあります。場合によっては移動販売や通信販売などもあり得ます。従来の販売チャネルを見直すことで、新たな事業展開の可能性が出てきます。

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