第7回 健康保険・厚生年金保険料のコロナ特例改定

2020年8月5日

新型コロナウイルス感染症は、未だ出口が見えない状態が続いています。多くの会社の労働者が休業に追い込まれ、休業手当が支払われたが手取りが大幅に減ってしまったという方も少なくありません。中には「休業手当すら払ってもらえない!」という方々もいるようです。もちろん会社には休業手当を支払う義務(※1)があるのですが、その資金すら無い!という会社が存在するのも事実です。このように急激に収入が減ってしまった場合、給与から控除されている雇用保険料と源泉所得税は支給額に応じて減額されます。ところが、健康保険料(介護保険料を含む)と厚生年金保険料は標準報酬月額(※2)が決められていて、毎月一定額が控除されることになっているため、収入が減ってもすぐに減額されません。通常は、給与の支給額に著しい変動があった月から4か月目にようやく標準報酬月額が改定(随時改定)されます。この間、支給額が減ったにもかかわらず従前と同じ額の保険料が控除されるため、手取り額はより少なくなってしまいます。

※1 使用者の責に帰すべき事由による休業は、労働者に対して平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければならない(労働基準法第26条)
※2 会社が支払う1ヶ月の給与額を標準月額といい、その標準月額を等級表にあてはめたものを標準報酬月額という。健康保険の等級は1~50等級、厚生年金の等級は1~31等級まで区分されていて、それぞれの等級ごとに保険料が定められている

標準報酬月額の特例改定

前述のような事態を改善するため、次の要件を満たした場合、特例により翌月から標準報酬月額の改定が可能となりました。(令和2年6月25日~)

①新型コロナウイルス感染症の影響による休業があったことにより、令和2年4月から7月までの間に、報酬が著しく低下した月が生じた方
②著しく報酬が低下した月に支払われた報酬の総額(1ヶ月分)が、既に設定されている標準報酬月額に比べて2等級以上下がった方
③本特例措置による改定内容に本人が書面により同意している

対象となる保険料

令和2年4月から7月までの休業により給与等が著しく減少した場合に、その翌月の令和2年5月から8月分の保険料が対象となります。また、令和3年1月末日までに届出があったものが対象となるので、その間は遡及して申請が可能です。

特例改定の特徴

通常の随時改定は固定的賃金の変動(基本給や毎月決まって支給される手当など)を伴わないと改定の対象とならないので、定時決定(算定)を待たなければなりません。ところが、今回の特例改定では固定的賃金の変動が無い場合も改定の対象となるのが大きな特徴です。例えば、休業手当は100%支給されたが、毎月の残業が極端に減り、実質的に給与額が著しく減少してしまった様な場合、本来の随時改定の対象にはなりませんが、特例改定の対象にはなるので、その翌月に改定することができます。(下図参照)

以上のように、雇用保険制度は企業に雇用されている労働者はもちろんのこと、雇用している企業も当然に活用できるものなのです。

特例改定の注意点

特例改定を行うと事業主の保険料負担分も同様に軽減されるため、労働者の同意を強要する場面も考えられます。標準報酬月額の改定は、労働者が受給する傷病手当金・出産手当金の額、及び年金額に影響がありますので、本人の十分な理解に基づく同意が必要になります。また、7月または8月に特例改定が行われ、その後休業が回復した月から3か月間の平均報酬が2等級以上上昇した場合には、固定的賃金の変動の有無に関わりなく、必ず随時改定(月額変更届)の届出が必要になります。

今回の特例改定は年金額等に多少の影響があるものの、まだまだ先が見えないコロナ禍の影響の下、少しでも月々の費用負担を減らすべく積極的に活用したいものです。

筆者紹介

加藤千博

MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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