2026年12月施行公益通報者保護法改正は中小企業にも関係する? 内部通報制度の確認ポイント

2026年10月23日

質問

卸売業を営む中堅企業である「MJS興業」では、内部通報制度と呼べる仕組みがまだ整備されていません。内部通報制度について、最も適切な説明はどれでしょうか?

パターン1

内部通報制度は、法令違反などへの対応を目的とする制度であり、会計情報の信頼性とは直接関係しない。

パターン2

内部通報制度は、通報窓口を設けることだけを指し、通報者を保護する仕組みや是正措置の手続までは含まれない。

パターン3

内部通報制度は、不正や法令違反などの情報を経営者や適切な窓口等に伝える仕組みであり、内部統制の一部としても位置付けられる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

公益通報
SOS

内部通報制度の運用を始めた中堅企業

「MJS興業」は、業務用食品の卸売を営む中堅企業です。従業員数は約250人で、営業部門、物流部門、管理部門などを抱えています。社内の管理体制を少しずつ見直してきたMJS興業では、新たに整備した内部通報制度の運用が始まっています。


社長

内部通報窓口の運用状況について、今月の報告を見たよ。大きな問題は起きていないようだが、社員からの問い合わせも少しずつ出ているんだね

はい。通報窓口や相談の流れを社内に周知したことで、社員からも『こういう場合は相談してよいのか』といった確認が出ています。まだ運用を始めたばかりですが、制度として少しずつ動き始めています


経理部長


社長

問題が起きてから慌てるのではなく、情報を受け止める仕組みを先に整えておくことが大切だね

しかし、半年前は、MJS興業に内部通報制度と呼べるような仕組みはありませんでした。気になることがあれば直属の上司に相談する、という運用にとどまっていたのです。

半年前 ~内部通報制度は大企業だけのもの?

半年前、MJS興業の社長が、1枚のリーフレットを手に経理部にやってきました。


社長

経理部長、公益通報者保護法の改正に関するリーフレットをもらったんだが……。これは大企業向けの話だよね?

従業員数が多い会社ほど対応が強く求められる、という面はありますね。常時使用する労働者が301人以上の事業者には、内部公益通報に適切に対応するための体制整備などが義務付けられているんです


経理部長

ここでいう内部公益通報に対応する社内の仕組みが、一般に内部通報制度と呼ばれるものです。

一方、労働者が300人以下の事業者については、努力義務とされています


経理部長


社長

努力義務か。じゃあ、うちの会社ではそれほど気にしなくてもいいのかな

いえ、そんなことはありません。努力義務であっても、今回の改正をきっかけに、自社としてどのような対応が必要かを確認しておくことは大切だと思いますよ


経理部長


社長

義務かどうかだけで判断する話ではないんだね。そもそも、内部通報制度というのは、どのようなものなんだ?

質問

卸売業を営む中堅企業である「MJS興業」では、内部通報制度と呼べる仕組みがまだ整備されていません。内部通報制度について、最も適切な説明はどれでしょうか?

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パターン1

内部通報制度は、法令違反などへの対応を目的とする制度であり、会計情報の信頼性とは直接関係しない。

パターン2

内部通報制度は、通報窓口を設けることだけを指し、通報者を保護する仕組みや是正措置の手続までは含まれない。

パターン3

内部通報制度は、不正や法令違反などの情報を経営者や適切な窓口等に伝える仕組みであり、内部統制の一部としても位置付けられる。

内部通報制度は、法令違反などへの対応だけでなく、不正や不適切な取引に関する情報を会社が把握するための仕組みでもあります。こうした問題は会計数値に影響することがあるため、内部通報制度は、会計情報の信頼性を支える内部統制の一部としても重要です。

内部通報制度は、単に通報窓口を設ければ足りるものではありません。通報した人が不利益な取扱いを受けないように保護する仕組みや、通報内容を適切に確認し、必要な是正措置につなげる手続を整えることで、実効性のある仕組みとして機能します。

内部通報制度は、不正や法令違反など、通常の報告経路では伝わりにくい情報を、経営者や監査役、適切な外部窓口等に伝えるための仕組みです。不適切な取引や資産の流用などは会計数値にも影響する可能性があるため、内部通報制度は、会計情報の信頼性を支える内部統制の一部としても重要です。

直接伝えにくいことを受け止める仕組み

そんなある日、経理部長は、営業担当のAさんが顧客から大幅な値引きを求められ、対応に苦慮しているという話を耳にしました。


社長

♪♪(スマホの着信音)……おっと、自宅マンションの管理センターから電話だ。失礼。……はい、そうですか。ご対応いただきありがとうございます。
……中断して悪かったね。実は、自宅の上階の騒音が気になって、管理センターに相談していたんだ

上階の方に直接伝えるのは、少し気を遣いますからね


経理部長


社長

そうなんだ。管理センターに相談すれば、こちらから直接言いにくいことでも、いったん窓口で受け止めてもらえる。必要に応じて、管理センターから相手方に連絡してもらうこともできるからね

会社の中でも、それに近い場面があります。気になることがあっても、通常の報告ルートでは伝えにくいことがあります。そのような情報を、別のルートで会社に伝える仕組みが、内部通報制度です


経理部長

公益通報者保護法とは? 2026年12月施行の改正ポイント

公益通報者保護法は、会社の従業員などが、勤務先などにおける一定の法令違反行為などを通報した場合に、その通報を理由とする解雇、降格、配置転換などの不利益な取扱いから保護するための法律です。

公益通報の通報先には、勤務先、行政機関、報道機関等があります。このうち、勤務先への通報、いわゆる内部通報に適切に対応する体制を整えることは、会社にとって重要な管理上の課題です。

たとえば、上司が承認した経費精算に不自然な点がある、取引先と不適切な取引が行われているように見える、といったことがあっても、直属の上司には報告しにくい場合があります


経理部長


社長

相手との関係や自身の職場での立場を考えると、『本当に言ってよいのだろうか』と迷う状況もあり得るだろうね

はい。そこで、通常の報告経路とは別に、会社が重要な情報を受け止めるための仕組みとして設けられるのが、内部通報制度なんです


経理部長

常時使用する労働者が301人以上の事業者には、内部公益通報に適切に対応するための体制整備などが義務付けられています。一方、300人以下の事業者については努力義務とされています。

2026年12月1日には、制度の実効性を高めるため、改正公益通報者保護法が施行されます。今回の改正では、公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底、公益通報者の範囲拡大、公益通報を妨げる行為や公益通報者を探索する行為の禁止、不利益な取扱いの抑止・救済の強化などが盛り込まれています。

たとえば、公益通報者の範囲に、事業者と業務委託関係にあるフリーランスや、業務委託関係が終了して1年以内のフリーランスが追加されます。また、正当な理由なく公益通報を妨げる行為や、公益通報者を特定することを目的とする行為が禁止されます。さらに、公益通報から1年以内の解雇や懲戒は、公益通報を理由とするものと推定される(※)など、通報者を保護するための仕組みも強化されます。

※外部通報については、事業者がその通報を知って解雇や懲戒をした場合、事業者が通報を知った日から1年以内かどうかで判断されます。なお、公益通報とは別の理由による処分であることが示されれば、この推定は覆ることがあります。

通報妨害や通報者を探索する行為は、会社の従業員数に関わらず禁止されます


経理部長


社長

なるほど。制度の趣旨を踏まえて、自社に合った対応を考える必要があるな

内部通報制度は会計情報の信頼性も支える

内部通報制度というと、法令違反やコンプライアンス上の問題に対応するための制度という印象が強いかもしれません。

しかし、会社の中で起こる不正や不適切な行為は、会計情報にも影響することがあります。たとえば、架空取引、不適切な経費精算、資産の流用、取引先との不自然なやり取りなどが見過ごされると、売上、費用、資産などの会計数値が実態を正しく表さなくなるおそれがあります。

会計情報の信頼性を支えるためには、会計システムに正しく入力することや、報告・承認体制を整えることが重要です。ただ、通常の業務手続や報告・承認体制だけで、すべての問題を把握できるとは限りません


経理部長


社長

上司や取引先が関係している可能性がある場合などは、通常の報告経路では情報が上がりにくいだろうな

そこで重要になるのが、通常の報告経路とは別に、気になる情報を会社に伝えられる仕組みです。内部通報制度は、不正や法令違反などの情報を受け止め、必要な調査や是正につなげるための仕組みであり、内部統制の一部としても位置付けられます。


社長

『内部統制』という用語からは、上場会社向けの大がかりな仕組みを思い浮かべがちだが……

内部統制は、会社が業務を適切に行い、ミスや不正を防止・発見し、必要な情報を経営者に届けるための仕組みでもあります。ですから、当社でも、その規模や実情に応じて整えておくことが大切なんです


経理部長

内部通報制度も、会社の規模に応じて整えておきたい内部統制の一つです。問題を早めに把握し、必要な対応につなげることは、会社の信用を守るだけでなく、会計情報の信頼性を支えることにもつながります。


社長

大企業と同じような仕組みをそのまま導入する必要はないとしても、当社に合った形で、情報を受け止めるルートを整えておくことは大事だね。今回の改正をきっかけに、当社でも検討してみよう

内部通報制度をこれから整備する場合には、まず、誰が通報対応の責任者となるのか、どこに通報窓口を設けるのか、メール・電話・チャットなど、どのような方法で通報を受け付けるのかを決めることから始めるとよいでしょう。実際に内部通報制度を整備する際には、消費者庁が公表している「内部通報制度導入支援キット」も参考になります。内部規程例や社内周知用ポスター、チェックリスト付きパンフレットなどが用意されており、自社の体制を検討する際の手がかりになります。

「内部通報制度」

内部通報制度は、不正や法令違反など、通常の報告経路では伝えにくい情報を会社が受け止め、必要な調査や是正につなげるための仕組みです。

こうした仕組みは、会社の信用を守るだけでなく、会計情報の信頼性を支える内部統制の一つとしても重要です。中小企業でも、自社の規模や実情に合った形で整えておくことが大切です。

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