第23回 テレワーク運用上の問題点と対策1

2021年12月1日

コロナ禍の影響もあり、急速に浸透したテレワーク。制度設計する間もなく導入した企業も多く、テレワークの対象者と非対象者との問題、労働時間管理の問題、費用に関する問題、メンタルヘルス問題など、様々な問題が発生しています。今回はその中で、「対象者と非対象者との問題」と「労働時間管理の問題」について説明いたします。

テレワーク対象者と非対象者との問題

いかにテレワークが多くなったとはいえ、接客業や現場仕事等、物理的にテレワークが難しい職種も多く存在します。弊社にもテレワークを導入した企業から「本社は原則テレワークだが、テレワークができない店舗スタッフが不公平感を訴えている。どうすれば良いか?」という問い合わせがありました。このような場合は「接客業だからテレワークはできない」などと最初から諦めさせるのではなく、受発注業務、書類作成業務、顧客管理業務など、多少なりとも会社や現場でなくてもできる業務に関してはテレワークを行わせることをお薦めしています。また、特別に手当を支払ったり、特別休暇を付与するなどの施策も良いかもしれません。

テレワークを導入したことで、少しでもスタッフ間がギクシャクしないように、会社としての努力も必要となります。

労働時間管理の問題

第8回労務管理トピックスでご紹介させていただきました、「情報通信技術を利用した事業場外勤務(テレワーク)の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(以下、「旧ガイドライン」といいます)は、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(厚生労働省 2021年3月25日策定、以下「新ガイドライン」といいます)として生まれ変わりました。新ガイドラインは、テレワークを運用するうえで、より具体的な施策等が記載されています。労働時間管理の問題については、この新ガイドラインに従って説明したいと思います。

長時間労働対策

テレワークは、労働者自身が仕事しやすい環境で行えることによる業務効率化が見込める半面、仕事と生活との区別が曖昧となるため、かえって業務効率が落ちて長時間労働に陥る可能性もあります。この件に関して、旧ガイドラインでは時間外労働や深夜労働を原則禁止することも有効とされていましたが、新ガイドラインでは、時間外労働や深夜労働を行う前提での次のような対策が記載されています。

(1)メール送付の抑制等、(2)システムへのアクセス制限、(3)時間外・休日・所定外深夜労働についての手続、(4)長時間労働等を行う労働者への注意喚起、その他、勤務間インターバル制度も有効な手段のひとつとなります。

また、テレワークで注意しなければならないのが、終業後や休憩時間中のメールやSNSでのやり取りです。「ちょっとだから良いだろう」の積み重ねで、気が付いたらメールのやり取りは終業後に、などということにもなりかねません。労使間のトラブルに発展した場合は、パソコンのログやメールの送受信履歴などが有効な証拠として取り上げられる可能性もありますので、注意が必要です。緊急性が高い場合を除き、終業後や休憩時間中のメール等のやり取りは避けるべきでしょう。

中抜け時間

自宅でテレワークを行っていると、宅急便が届いたり、家事が気になったり、私用電話が鳴ったり、場合によっては子供が話しかけてきたりと、業務が中断することが多々あると聞きます。このような時間のことを「中抜け時間」といいますが、多くの企業がこの扱いに苦慮しているようです。本人や直属の上司の判断に委ねると、不公平感を助長しかねませんので、会社として一定の基準を設けた方が良いと思います。例えば、「15分以上の離席は休憩時間として扱う」「私用電話は出ない」「休憩時間以外の家事は認めない」「育児をしながらの業務は認めない」などです。

新ガイドラインによれば、そもそも「中抜け時間を把握しない」という方法もあり得ることが示されています。これは、中抜け時間も「労働時間」として扱うということになりますので、時間管理の側面から見れば、一番簡便な方法といえます(図表1参照)。

まとめ

テレワークにおける労働時間管理の難しさは、いうまでもなく始業・終業の時刻を使用者による現認ができないことが大きな要因となっています。そのため、通常勤務とは別に、テレワークの場合における労働時間の管理方法を明確にしておく必要があります。

時間管理が細かすぎて業務効率が落ちてしまっては本末転倒ですので、場合によっては、フレックスタイム制や事業場外みなし労働時間制等の導入も考えた方が良いのかもしれません。

あらかじめ労使で十分に話し合い、テレワークを導入する目的を再確認しつつ、自社にあった時間管理の方法を見出してください。

次回の労務管理トピックスでは、テレワークにおけるその他の問題点やその解決方法について説明いたします。

図表1

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