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第70回 健康保険における被扶養者認定要件の変更
2025年11月5日
2025年10月1日より、健康保険における被扶養者認定要件のうち、「19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)」について、年間収入要件が「130万円未満」から「150万円未満」へ引き上げられました。今回の変更は、若年層の就労促進と所得制限緩和、税制改正との整合性確保、被扶養者制度の現代的運用への対応を目的としています。
今回はこの改正について、改正に至った背景や実務上のポイント等について解説いたします。
改正の背景と政策的経緯
(1)人手不足と「年収の壁」問題
少子高齢化による労働力不足が進む中、特にサービス業・介護業・飲食業では若年層の人材確保が課題となっています。一方で、「130万円の壁」を意識した就業調整が広がり、労働供給が抑制されている現状がありました。今回の改正は、学生・若年層が一定の収入を得ても扶養を維持できるようにすることで、働く機会を広げる狙いがあります。
(2)税制改正との連動
2025年度税制改正では、所得税法上の「特定扶養親族(19~22歳)」の所得基準を引き上げ、特定扶養控除の範囲を拡大しました。健康保険制度はこれと整合を取る形で年間収入要件を150万円未満に引き上げ、税・社保両制度の一体運用を図りました。
(3)配偶者を除外した理由
配偶者には独自の配偶者控除制度が存在するため、今回の改正対象はあくまで「子・孫・弟妹」などの若年層親族に限定されています。
年齢・収入判定
(1)年齢判定の基準日:扶養認定日が属する年の12月31日時点で判断します。
N年10月に19歳の誕生日を迎える場合には、N年(暦年)における年間収入要件は150万円未満となります。
N-1年(18歳の誕生日を迎える年)における年間収入要件は130万円未満。
N年~N+3年の間(19歳の誕生日を迎える年から22歳の誕生日を迎える年)における年間収入要件は150万円未満。
N+4年(23歳の誕生日を迎える年)以降、60歳に達するまでの間の年間収入要件は130万円未満。
なお、民法の期間に関する規定を準用するため、年齢は誕生日の前日において加算します。例えば、誕生日が1月1日である方は、12月31日において年齢が加算されます。

(2)収入判定:過去の実績ではなく、今後1年間の収入見込み額で判断します。雇用契約書・シフト・勤務日数・仕送り額などを総合的に勘案して認定します。
実務上のポイント
(1)社内への周知について
今回の改正は2025年10月1日から施行され、この日以降に健康保険の被扶養者認定を行う場合、年間収入要件150万円未満の新基準が適用されます。したがって、対象となる従業員および人事担当者が正しく理解できるよう、社内文書や掲示等による周知を行うことが望まれます。特に、被扶養者異動届を提出する際に誤った基準で申請するケースを防ぐため、改正内容を具体的に明示しておくことが重要です。
(2)対象家族の年齢と収入要件の取り扱い
被扶養者の収入要件は、その年の12月31日時点の年齢を基準に判定します。したがって、認定日当日の年齢ではなく、認定日が属する年の年末時点での年齢によって「130万円未満」か「150万円未満」かが決まります。この点は誤解されやすく、特に19歳以上23歳未満という区分は、大学生のアルバイト収入を想定したもので、高校卒業から大学進学、そして就職に至る過程では、年度(4月〜翌年3月)の途中で年齢が切り替わるため、学年と年齢要件のタイミングが一致しないことがあります。
例えば、同じ「大学1年生」であっても、4月生まれなど「早生まれ以外」の学生は、年度初めから150万円未満が適用される場合が多いのに対し、1〜3月生まれの「早生まれ」の学生は、同じ大学1年生でもその年の多くの期間(約3/4)は130万円未満の基準が適用されます(図表1参照)。このような違いは従業員が混乱しやすいため、社内説明や通知の際に具体例を交えて案内することが望まれます。特に扶養認定手続きを行う時期には、担当者が年齢判定の基準日(12月31日)を意識して確認するよう注意喚起することが重要です。
制度的意義と今後の見通し
今回の改正は、若年層就労促進を目的とした政策的対応であり、単なる金額変更にとどまりません。「学びながら働く若者を支援し、人手不足を緩和する」ことを目的としています。今後も、103万円・106万円・130万円といった「年収の壁」の包括的見直しが進む見込みです。企業としては、税制・社保の両面を俯瞰し、制度改正への柔軟な対応体制を整える必要があります。
筆者紹介
MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/
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