Banner
×

制度対応編

電⼦帳簿保存法・インボイス・電⼦申告の実務への影響

税理士開業道場は、税理士として独立・開業するために準備しておきたいポイントを、6つのテーマに分けて解説する連載企画です。
顧客獲得、業務フロー、システム選定、制度対応、費用・登録手続きについて順を追って解説し、最終回で開業準備の全体像をまとめます。
第四回のテーマは「制度対応編」。実務に大きな影響を与える電子帳簿保存法、インボイス制度、電子申告について、開業税理士が備えるべきポイントを「自事務所の対応」と「顧問先支援」の2軸から整理し、具体的対策と実務フローを解説します。

この記事のポイント

  • 制度対応(電帳法・インボイス)は、「自事務所」と「顧問先支援」の2つの側面から準備を整理する。
  • 採用する「業務モデル(記帳代行/自計化支援)」によって影響が異なるため、開業前に対応方法を検討しておくことが必要である。
  • 電子帳簿保存法・インボイス・電子申告について、税理士として実務を円滑に進めるために、会計・税務申告システムに求められる要件を理解する。

電子帳簿保存法やインボイスへの対応では、さまざまな準備や実務対応が必要になります。開業前後の迷いや手戻りを減らすためにどのような工夫をすべきか、対応方法を見ていきましょう。

制度対応は事務所と顧問先との2軸で整理

まずは制度対応を「自事務所としての対応(事業者としての義務)」と「顧問先への支援・指導(コンサルティング)」の2つの観点に切り分けて整理することが重要です。

税理士事務所としての対応(事業者として守るべき義務)

税理士事務所も一つの事業者であるため、まずは自らが法令に則った正しい処理を行わなくてはなりません。

当然、事務所の経費支払いなどに伴い、メールやクラウド経由で受領する電子領収書やPDFなどの電子証憑は、電子帳簿保存法の要件を満たした形で保存する「電子取引データ保存義務」に従う必要があります。

事務所自体のインボイス発行(顧問料請求書)の様式設定や、免税事業者からの仕入れ(経過措置対応を含む)についても、適正な処理が求められます。

顧問先の支援・指導(コンサルティング)

一方、顧問先への支援は、それぞれの状況に合わせた運用方法を検討する必要があり、体制づくりにも時間がかかります。

顧問先はそれぞれITリテラシーが異なることも多いため、電子領収書やPDFなどの電子証憑を適切に保存・管理してもらえるよう、無理なく運用できるルールを整えておくことが重要です。

さらに、顧問先が交付する請求書のインボイスの様式確認や、受け取った適格請求書の登録番号・税区分のチェックがスムーズに回る指導体制を開業後の早い段階で構築しておく必要があります。

業務モデル別に見た制度対応の負荷と開業前の具体的対策

制度対応に伴う事務所の実務負荷や必要となる対策は、第二回で解説した「記帳代行」と「自計化支援」のどちらを主軸にするかによって大きく異なります。

業務モデルごとの対応を開業前に整理しておくことが、業務フローの標準化や適切な会計・税務システムの選定につながります。

記帳代行モデルの場合証憑回収のルール化と自動化が鍵

記帳代行モデルの主な特徴と課題

  • 電子領収書やPDFなどの電子証憑の回収作業や、適格インボイスと非適格インボイスの税区分判定、入力コストなどによる負荷が発生しやすい。
  • データと紙の混在で、確認のタイムラグや管理コストが膨らみやすい。

開業前の具体的対策

  • スキャンやクラウドを活用した電子領収書やPDFなどの電子証憑の受領・送付の流れやスケジュールの型を決めておく。
  • AI自動仕訳や証憑保管、電帳法対応の自動判定機能を備えたクラウド型の会計システムを選定する。

AI仕訳・証憑保管・電帳法対応のクラウド会計システム

記帳代行が多い事務所の場合は、開業初月から、メールで受領した領収書やWeb上で発行された電子領収書は毎週指定のクラウドストレージに保存してもらう、適格請求書に該当するかどうかの一次確認は顧問先側で行うことを前提とする、などのルールを作成し、徹底することが重要です。

システム選定では、OCR機能やAI仕訳に優れたものを選ぶとよいでしょう。また、インボイス登録番号を自動検証できることはもちろん、経過措置による控除率の変更などに対応できる、制度改正に迅速に対応できる製品を選ぶことが重要です。

税区分の誤りは税理士としての信頼に直結するため、導入コストが高くとも精度の高いソフトを利用することをお勧めします。

自計化支援モデルの場合初期の「型づくり」と伴走支援が鍵

自計化支援モデルの主な特徴と課題

  • 顧問先の入力時における税率の誤り(軽減税率等)や、登録番号の確認漏れが発生しやすい。
  • 不備データの修正や整合性の検証作業に時間がかかる。

開業前の具体的対策

  • 顧問先向けの簡易操作マニュアルを作成しておく。
  • インボイス情報の確認や仕訳の自動入力機能があり、かつ顧問先が使いやすいクラウド型会計システムを選定する。

自計化支援が多い事務所では、顧問先が入力段階で迷わないための仕組みを作ることが重要です。入力時のミスや確認漏れが多いと、税理士側の確認・修正作業が結局増え、結果として作業負担が大きくなってしまいます。開業前に、インボイスの確認手順や電帳法対応の保存ルールなどを作成しておきましょう。

また、会計ソフトの税区分や証憑連携の初期設定などは税理士側で行ったうえで、顧問先に利用を始めてもらうことも重要です。最初の数カ月は、会計ソフトの操作についても継続的にサポートするとよいでしょう。

適格請求書発行事業者の登録についての相談を受けたら

顧問先が免税事業者の場合、適格請求書発行事業者として登録すべきかどうか相談を受けるケースがあります。このような相談を受けた際は、画一的に登録を勧めるのではなく、顧問先の状況によって慎重に判断しましょう。

登録は義務ではないため、取引先が一般消費者中心の小売業などでは、適格請求書発行事業者として登録する実務上のメリットが小さい場合もあります。

顧問先の業種や主要な顧客層を見極め、無駄な税負担や事務コストを避けるためのアドバイスができると、顧問先との強固な信頼関係を築くことにもつながるでしょう。

会計・税務申告システムの選定にあたっての参考情報

インボイス制度や電子帳簿保存法など、改正が続く制度への対応をすべて自力でチェックするには限界があります。

そこで、第三回で解説したシステム選定軸の重要項目「制度対応の速さ」をさらに具体化し、電帳法・インボイス・電子申告への対応において、会計・税務申告システムにどのような機能が求められるのか、具体例を整理しました。

対象制度・領域 会計・税務申告システムに求める要件の一例
電子帳簿保存法 電子取引データの「検索性要件」(日付・金額・取引先での検索)や「真実性要件」(訂正削除履歴の保持または防止仕様)への対応に必要な機能を備えていること。
スキャンした証憑データやメール添付のPDFが、会計ソフトの仕訳データと一元管理できる仕組みになっていること。
インボイス制度 インボイスの情報を的確に読み取って仕訳に反映できること。
2026年10月改正による「経過措置(70%控除)」への日付ベースでの自動税区分判定など、最新のインボイス制度の状況に対応する仕組みが整っていること。
電子申告(代理送信) 作成した申告データに税理士の電子証明書を付与し、国税(e-Tax)・地方税(eLTAX)の行政システムに直接送信できること。
システム内で、顧問先ごとの利用者識別番号の管理や、電子申告前の確認を容易に行えること。

このように、会計・税務システムを選定する際には、カタログに記載された機能だけで判断するのではなく、自分自身が行う記帳代行や自計化支援の具体的な業務に当てはめて検討することが重要です。

上記に記載した要件をはじめ、必要な機能を洗い出すことで、システム導入後の手戻りを減らすことができます。

制度対応を開業後の「強み」に変える

昨今の頻繁な税制改正は、税理士にとって業務負荷を高めるだけの課題に思えるかもしれません。

しかし、これから開業する税理士は、こうした環境変化に迅速に対応できることを、強みの一つとすることもできます。

従来の実務フローや属人的な仕組みに縛られることなく、「当事務所にお任せいただければ、電子帳簿保存法もインボイス制度も安心です」と新規顧問先に対して、デジタルと実務の両面から一貫した支援を打ち出すことは、顧客獲得における他事務所との大きな差別化要因(付加価値)となります。

制度対応を強みへと転換し、スムーズな開業スタートを切りましょう!

次回は【資金・登録編】として、税理士登録手続きの流れや注意点、開業に必要な費用の全体像や融資、料金表・顧問料の決め方を解説します。お楽しみに!

第五回【資金・登録編】は2026年10月公開予定!

システム選びで失敗したくない税理士の方へ

製品資料のご請求・システム選定のご相談はこちら!

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら