導入事例

宮本律夫税理士事務所/有限会社有明会計センター 

2021年1月14日

宮本律夫税理士事務所/有限会社有明会計センター(熊本県熊本市)は、創業24年目を迎える地域に密着した会計事務所である。代表の宮本律夫氏は、現在も約280の顧問先のうち6割を直接訪問しているという。それと並行して、地域の青年会議所や税理士会の活動にも積極的で、そうした取り組みが評価されて新規顧客の獲得につながっている。宮本氏に、同事務所のさまざまな取り組みや活動、今後の展望について伺った。

創業から一貫して地域の産業と顧客を支援

――本日は、宮本律夫税理士事務所/有限会社有明会計センターの代表である宮本律夫先生にお話を伺います。
 同事務所は、熊本県熊本市にオフィスを構える、地域密着型の会計事務所です。早くからITシステムを導入し、地場産業を営む数多くの顧問先の会計・税務を支える一方で、ご自身は青年会議所や税理士会の会務などでも精力的に活動されているとお聞きしています。
 今回の取材では、事務所の現在までの成長の軌跡と、宮本先生のさまざまな組織における活動の内容や、直近の取り組みなどについて伺いたいと思います。
 まずは、宮本先生のこれまでの歩みを振り返っていただけますか。

宮本 私は、大学を卒業した昭和61年に、熊本市の会計事務所で働き始めました。その事務所の所長先生は、父の古くからの友人です。
 私が大学を卒業するタイミングと、その先生が開業するタイミングが、偶然にも一致したことと、父に「手伝ってくるように」と言われたことから、その会計事務所に入所しました。

――当初から税理士を目指されていたのですか。

宮本 入所から2~3年は、「税理士になれたらいいな」くらいに思っていました。それが、ある出来事を契機に意識改革が起こり、本気で税理士を目指そうと考えるようになったのです。

――それは、どのような出来事だったのでしょうか。

宮本 平成元年に、私が担当していたお客様が、青年会議所の理事長に就任しました。そして、その方から青年会議所への入会を誘われるようになったのですが、当初は断っていました。
 しかし、その年のある忘年会の二次会で、ばったりそのお客様とお会いしました。私はその店のなかで口説き落とされて、青年会議所に参加することになりました。

――青年会議所に参加したことが、資格取得の大きなモチベーションになったのですね。

宮本 そのとおりです。
 青年会議所のメンバーのほとんどは、創業者か二代目の経営者だと思います。懇親会に参加すると、皆さんが領収書を発行してもらっています。しかし、サラリーマンの私には、領収書は必要ありません。また、「平日昼間の事業に参加できる?」と聞かれても、「サラリーマンですから平日は無理です」と答えていました。
 このとき、経営者とサラリーマンとの違いをはっきり見せつけられた気がして、とても悔しい思いをしました。
 そして、「絶対に税理士になって、自分も一国一城の主になるぞ」と心に誓ったのです。私にとって、大きなターニングポイントといえる出来事でした。
 そこで資格取得に向け、平成3年から東京の専門学校に通って受験勉強に専念することを決めました。

――すると、東京に行くにあたって、勤めていた事務所を退職されたのですか。

宮本 ええ。ちなみに、その専門学校のパンフレットには税理士2年コースとあったので2年で合格する予定だったのですが、私の努力不足で合格するまで5年かかってしまいました。
 私が税理士登録をして開業したのは平成9年3月です。そのとき一緒に勉強した友人たちも、ほとんどが税理士になっており、今でも情報交換をしたりして、交流が続いています。

所長による顧問先の訪問を重視

――続いて、宮本先生の事務所経営における理念についてお聞かせください。

宮本 私は常に、お客様との距離を近くすることを心掛けています。ですから現在も、毎月の巡回監査では、可能なかぎり多くのお客様のところに、私が直接訪問しています。

――現在の顧問先数は何件くらいですか。

宮本 法人のお客様が80社弱あり、個人のお客様は200件ほどいらっしゃいます。

――それだけの数の顧問先をなるべく多く訪問するとなると、時間がいくらあっても足りませんね。

宮本 はい。ですから、私が事務所に腰を落ち着けていることはあまりありません。「朝9時に来てほしい」とリクエストされる経営者もいらっしゃるので、始業時から不在ということも珍しくありません。

――事務所の職員は何人いらっしゃるのですか。

宮本 私以外に4名のスタッフがいます。そのうちのひとりは税理士です。

――個人の顧客が3分の2を占めるということは、冒頭で触れたように地場産業に従事している方が多いのでしょうか。

宮本 仰るとおり、熊本は有明海に面しているという地域柄、個人のお客様では海苔漁師さんや加工業業者さんといった、海産物に関連した事業を営む方が多いですね。そのため、確定申告シーズンは目が回るほど忙しくなるのです。

会務を通じて時間の有効活用法を会得

――続いて会計・税務以外の、宮本先生のさまざまな組織における活動について伺います。青年会議所には、事務所の開業後に復帰されたのですか。

宮本 はい。東京の専門学校で勉強している期間は休会していましたが、私の意識改革のきっかけとなった組織ですから、恩返しをしたいという思いがありました。
 そこで、開業後は積極的に青年会議所の活動に参加し、熊本ブロックの副会長も務めました。

――税理士会での活動についてはいかがですか。

宮本 平成9年に税理士登録した際、南九州税理士会の面接を受け、部会や委員会について説明されました。当時の私は税理士会のことがよく分かっておらず、青年会議所と同じようなイメージを持っていたので、「自分の希望した部会に行けるのですか?」と質問しました。
 すると、面接をしていた役員に「自ら手を挙げるのはあなたが初めてです」と驚かれました。そうして、1年目からさまざまな役目を引き受けることになりました。具体的には、本部では調査研究部、支部では厚生委員会での役をいただきました。
 また、南九州税理士協同組合では、事業推進委員長を皮切りに、専務理事まで務めています。さらに、南九州税理士政治連盟では熊本県の会長、南九州の幹事長を経て、現在は南九州の会長を仰せつかっています。

――極めて多方面で活動をされているのですね。

宮本 青年会議所には、「仕事は忙しい人に頼め」という格言があります。私自身、青年会議所の活動、税理士会の活動、そしてお客様への対応に追われ、のんびり過ごす時間はほとんどありませんでした。
 いくら忙しくても、1日は誰にとっても24時間であり、平等に与えられています。ですから私は、その時間をいかに効率的に使うのかも、青年会議所で学びました。具体的には、空き時間をまとめて、その時間にどのような活動をすればよいかを決めるのです。

青年会議所での活動が新規顧客の獲得につながる

――青年会議所や税理士会での活動でお忙しいなか、どのようにして顧客を増やしてこられたのですか。

宮本 特に戦略として意識していたわけではありませんが、青年会議所での活動が顧問先の獲得にもつながりました。青年会議所で役職を務めていると、会員の皆様から評価されて、新たなお客様になってくださるのです。
 青年会議所で活動できるのは40歳までですが、その後も当時の会員さんたちが、新規顧問契約を結んでくださっています。
 また、既存のお客様からのご紹介も、とても多いですね。

――青年会議所での活動は、事務所の成長にとってもプラスに働いたのですね。

宮本 そのとおりです。一生懸命に活動した姿を皆さんに認めていただいたからこそ、今の自分があると思っています。

入力しやすさと使い勝手のよさで会計ソフトを選択

――ここからは、貴事務所の会計システムについて伺います。
 宮本先生は、開業時から株式会社ミロク情報サービス(以下、MJS)のシステムを導入し、顧問先の自計化支援などにも活用されているそうですね。また、同社製品のユーザーで構成される九州ミロク会計人会の副会長と熊本地区の会長を兼務されているとお聞きしています。
 現在、導入されている製品を教えていただけますか。

宮本 ERPパッケージである「ACELINK NX-Pro」です。オプションを含めて30近くのアプリケーションを利用しています。

――MJSとの付き合いはいつからでしょうか。

宮本 そもそも、私が新卒で入った会計事務所が、MJSさんのシステムを利用していました。当時は、オフコンの会計ソフトでした。
そうしたご縁もあって、自分が開業するにあたり、MJSさんのソフトを導入しました。ですから会計人としての私は、勤務時代から現在に至るまで、ずっとMJSさん一筋ということになります。

――MJSの会計ソフトのどのようなところを評価されているか教えていただけますか。

宮本 私にはとても入力がしやすいと感じています。個人のお客様のなかには、他社の会計ソフトで入力したデータを持ってこられる方もいますが、そちらは私には合わないと感じています。

――自計化している顧問先の支援には、何を利用されているのですか。

宮本 「MJS自計化データ共有サービス」です。このサービスを利用しているお客様との間では、事務所からインターネットを通じて情報を閲覧したり、修正したりできるので、とても使い勝手がよいと感じています。
ちなみに、当事務所のお客様で自計化されている方は一部にとどまり、多くのお客様は記帳代行も含めて引き受けているのが現状です。

研修会で世界的ウイルス学者が講演予定

――宮本先生は、今年開催される予定の、ミロク会計人会連合会主催の「第45回全国統一研修会 熊本大会」の実行委員長を務められるそうですね。この大会についても紹介していただけますか。

宮本 この大会は、もともと昨年の11月5日に開催される予定で、一昨年から計画を練ってきたものです。
ところが、皆さんご存じのとおり、昨年の3月頃から新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が急速な拡大を見せていました。会場として、約1200名規模のホテルを押さえていたので、実行委員会では開催するかどうか、とても悩みました。
結局、コロナ感染の拡大や、会場のキャンセルの問題などもあり、6月に1年間延期することを決定しました。

――今年の開催日は既に決まっているのでしょうか。

宮本 はい。11月18日を予定しています。 内容は、一昨年から準備していたものがベースになるので心配していませんが、やはり新型コロナウイルスの感染状況がどのようになっているかが懸念されます。
とはいえ、2年延期することは難しいでしょうから、「ウィズコロナ」時代の新しい研修会、例えばオンラインの活用などの可能性も模索しながら、全国の皆さんに喜んでもらえるような研修会にしたいですね。

――差し支えない範囲で内容についてもお聞かせください。

宮本 ひとつご紹介すると、ウイルス学者の満屋裕明先生に講演していただく予定です。
満屋先生は、熊本大学医学部出身のウイルス学者です。エイズの治療薬を開発し、紫綬褒章を受賞されました。エイズの治療薬は、途上国が特許料なしで利用できるようにしたことでもよく知られています。
満屋先生は、新型コロナウイルスの研究でも活躍されています。ぜひ、全国の皆さんに満屋先生のお話を聞いてほしいですね。

次の時代に生き残るため早めの承継を計画

――最後に、宮本先生の今後の展望をお聞かせください。

宮本 私は現在58歳ですが、65歳で一線から身を引こうと考えています。事務所に在籍するもうひとりの税理士に承継する予定です。

――その方は宮本先生のご親族ですか。

宮本 いえ。血縁関係のない職員です。彼は入所後に猛勉強して、見事税理士試験に合格しました。その翌年くらいには、彼への承継を具体的に考えるようになりました。

――生涯現役の先生も珍しくないなか、とても動きが早いですね。

宮本 税理士の仕事はICT化の課題があったり、ウィズコロナ時代をいかに生き延びるかという問題を抱えたりしています。来るべき時代に、間違いなく重要になるのはMJSさんのような会計ソフトベンダーとの連携機能にほかなりません。テクノロジーに詳しくなければ、税理士として生き残れない時代が到来するのではないかと思っています。うまく後継者にバトンを渡し、事務所として生き残っていければうれしいですね。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。貴事務所のますますのご発展を祈念しています。

導入事務所様のご紹介

宮本律夫(みやもと・りつお)

有限会社有明会計センター代表。宮本律夫税理士事務所代表。昭和37年生まれ。熊本県出身。熊本商科大学(現熊本学園大学)卒。大学卒業後の昭和61年、熊本市の会計事務所に入所。平成3年、資格取得のため東京の専門学校に入学。平成9年、税理士登録して開業。

有限会社有明会計センター

所在地

熊本県熊本市中央区上水前寺2-10-26

代表者 所長 宮本律夫
設立 平成9年
構成人数 4名
主な業務 所得税、法人税、開業支援
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

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