導入事例

東秀優税理士事務所 様

2015年3月18日

「わさもん」の感性で地域経済を活性化させる 東秀優税理士事務所

東秀優税理士事務所(熊本県熊本市)は、「経営のバランス」をキーワードに掲げ、中小企業の安定成長を支援している税理士事務所である。同事務所の所長を務める東秀優氏(写真)は、有資格者の積極的な雇用やパソコンの早期導入など、常に時代の一歩先を行く取り組みで事務所を発展させてきた。また、南九州税理士会熊本県連の会長を務め、会計業界の活性化に大いに貢献した実績を持つ。今回の取材では、変化の激しい会計業界の展望、会計事務所経営のあるべき姿について、東氏にお話を伺った。

金融機関から会計事務所へ

―― 本日は東秀優税理士事務所の東先生にお話を伺います。まずは、東先生が税理士を志したきっかけを教えてください。

私は学生時代から税理士を目指していたわけではありません。高校は熊本の進学校に入学しましたが、マージャンにのめり込んでしまいました。学校にはほとんど行かず、毎日のように雀荘に通い詰め、何とか卒業できましたが、もちろん浪人です。
その後、横浜商科大学に進学しましたが、またマージャンざんまいの日々でした。それでも卒業はでき、東京の金融機関に就職することになります。

―― 金融機関に就職されたのですね。

はい。驚いたことに配属先の支店長が、大のマージャン好きでした。昔はお得意先との接待マージャンが多く、「こいつは使える」と特別待遇でした。マージャンで築いた人脈のおかげで、1年目で3000人くらいいる職員のなかで成績ナンバー1になりました。
そのようなとき、父が胃がんで倒れました。私は長男ですから、金融機関を辞めて実家に帰りました。父は奇跡的に助かり、私は就職先を探しましたが、仕事はありません。そのとき、父の入院先に税理士の方がいたのを思い出したのです。
調べてみると、5科目ある試験全て同時に合格する必要はなく、何年かかってもよいと分かったのです。そこで税理士になろうと決心しました。これが昭和52年のことです。

―― 資格は何年くらいで取られたのですか。

父の親友に紹介してもらった税理士事務所で働きながら勉強を始めました。ゼロからのスタートでしたが、意外と早く簿記論に合格して、気を抜いてしまいました。マージャンにもまた手を出し、結局7年もかかりましたね(笑)。

―― その後、独立されるわけですね。

試験に通ったのは昭和58年12月で、独立したのが昭和59年3月です。まずは地元の八代市で開業し、3年後に熊本市に移りました。

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人に投資する経営方針で 頭脳集団を形成

―― 東先生の事務所経営に対する考え方、理念について教えてください。

人間は、ひとりでは何もできません。ですから、私は税理士事務所を経営するにあたり、税理士有資格者を積極的にスタッフに加えようと思いました。
以前は税理士事務所に税理士を入れると、顧問先を取られるという悪いイメージがありました。しかし、私は自分より優秀な人と働きたいと思ったのです。ですから、年上の税理士もスタッフとしました。今では普通のことですよね。

―― かつては、資格を取ろうとしている人を採用しない風潮がありましたよね。

そうですね。しかし、私の事務所からは独立した先生も数多くいます。二十数人くらいになるのではないでしょうか。

―― 東先生の事務所経営は、所長のワンマン型ではなく、組織として人材を活用するという考え方ですね。

税理士を積極的にスタッフとした理由はもうひとつあります。当時、月額顧問料は平均5万円でした。ですから、開業したてでもあっという間に収入が増えました。そこで職員を入れて、2人で切り盛りしましたが、それでも報酬が1000万円くらいになってしまう。こんなにお金があったら自分は駄目になると思い、人に投資をしようと考えたのです。そのほうが効率はよいですからね。

―― 人に投資するのは重要ですが、実践するのは簡単なことではないと思います。

自分がいい加減だから、人に頼りたくなるというだけです。アンドリュー・カーネギーの有名な言葉がありますよね。「己より賢き者を周りに置ける男、ここに眠る」。それに倣い、頭のよい人の力を借りて頭脳集団をつくろうと思ったのです。

―― 資格者を迎え入れて組織をつくり、顧客にどのようなサービスを提供しているのですか。

まず、お客様が何を求めているのかをよく考えました。すると、お客様が一番必要としているのは決算対策だという結論に至りました。
ですから、当事務所では決算前にさまざまな打ち合わせを入れるようにしました。必ず決算前に私自身がお客様に会ってお話をして、決算が終わった後は、予測と決算の誤差がどれくらい出たかを明らかにし、次に向けての反省材料にするといったことに注力しました。

―― 事前にお客様の状況を把握して、決算対策をしっかりと組んでいくということですね。

そうです。こうした取り組みの結果、お客様から信頼を得られるようになりました。紹介を受けることも多く、特に医業関係での紹介をたくさんいただきました。
医業に関しては、母校の同級生に医者になった人が多かったことも紹介につながっています。優秀な同級生が多かったのですね。

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時代の一歩先の機能を持つ業務システム

―― 人材育成の取り組みについても伺います。

職員を対象とした内部研修を行っていますし、税理士会の研修会など、外部の研修にも参加させています。例えば、業務システムベンダーのミロク情報サービスは、税理士事務所の職員が参加できるようなセミナーを開催しています。そのようなセミナーがあるときには、積極的に参加してもらっています。

―― 東先生の事務所では、業務システムとしてミロク情報サービスの製品を導入しているそうですね。

もともとは、あるベンダーの会計専用機を使っていました。その会社が設立された頃から使っており、私自身もシステム委員を務めていました。
しかし、平成元年頃からパソコンが普及し始めて、これからはパソコンの時代だと確信しました。そこで、「これからは独自規格では駄目だから、会計ソフトをマイクロソフトのOSで動くようにしたらどうか」とその会社に提案したのですが、却下されました。
そのようなとき、ミロク情報サービスがパソコン向けの会計ソフトウエアをつくっていたので、一気に転換しました。

―― 現在ではパソコンで会計ソフトを使うのは当たり前ですが、当時は会計専用機が主流でしたから、先見の明がありましたね。

「めざとい」のかもしれません。熊本弁でいうと「わさもん」というやつです。
パソコンは絶対に世の中を変えると思いました。特にエクセルには本当に驚きました。あまりに感心したので、私の別法人にはエクセルバランスと名付けたほどです。実際、今では誰もがエクセルを使っていますよね。

―― 東先生は常に新しいものを取り入れてきたわけですが、ミロク情報サービスに切り替えていかがでしたか。

顧問先の自計化が進められるようによく考えられており、とても使いやすいと感じました。特に感心したのが、インターネット経由の会計データの同期ですね。
以前は顧問先との間で会計データを手作業でやりとりしていて、時間もかかり、時には間違って古いデータを使ってしまったりしていました。
しかし、ミロク情報サービスのシステムはインターネット経由で税理士事務所と顧問先を結び、差分を組み合わせて常に最新のデータに同期してくれます。事務所に居ながらにして顧問先の最新のデータを得られるという仕組みには驚きました。
ミロク情報サービスの製品は、これに限らず、いつも時代の一歩先の新しい機能が採用されるので気に入っています。

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熊本県連の会長として他業界とのネットワークを築く

―― 東先生は、南九州税理士会の会務にも力を入れているそうですね。

熊本県連の会長を3期6年間務めました。これはとても貴重な経験でした。県連を活性化させたという自負もあります。
県連に特化して、金融機関や商工会とタイアップし、新年賀詞交換会や総会を開いたり、他の士業界との交流を深めたりしました。特に後者では弁護士や公認会計士、司法書士とのネットワークをつくれたのが大きかったと思います。
他の士業とのネットワークは意外につくりにくいわけですが、こちらの会長が出ていかないと、向こうの会長も出てきません。ですら、私は他の士業の催しに積極的に出るようにするなど、ネットワークのきっかけづくりに力を入れました。熊本県連は、今では他の士業との連携がとてもよく機能しています。

――トップが動くことは重要ですね。

会長は外に出ていったほうが会のためになると私は思っています。異論もあったかもしれませんが、自分自身が広告塔になるつもりで頑張りました。銀行などもこちらが出ていくと、それなりの方が出てきてくれます。そういったところでできたつながりは、お客様のためにもなります。銀行とのつながりがあればお客様も助かりますから。そう思って、日本政策金融公庫とのつながりなども密にしてきました。税理士会が動けば、所属する税理士や、お客様にも役立ちます。

税理士業界の今後

―― 事務所経営の展望についてお聞かせください。

まだ下っ端ですが、息子も娘も事務所のスタッフなので、徐々に育てていこうと思っています。娘はもう税理士の資格を取っており、今年か来年には登録をさせるつもりです。ですから、後継者は何とかなると思っています。
とはいえ、なかなか難しいところもあります。これまで組織化に力を入れてきたものの、お客様のなかには、事務所というより私個人に任せていると思っているところもあるからです。
そこをどう説得するか。「社長が息子さんに代替わりするように、うちも変わっていきますから、よろしくお願いします」と言っていますが、それでよいのかどうか。税理士事務所というのは、一身専属で終わるのが本来の姿であるような気もしています。難しいところですね。

―― 事務所の体制に関してはいかがですか。

事務所の運営は、基本的には人と人の関係ですから、それを大事にしていこうと思っています。職員が満足できるような事務所づくりに力を入れていきたいですね。
一時期、私は「3」という数字を目標に掲げていました。それは、「顧客300件、職員30人、所得3000万円」という意味です。
それを念頭に置いて頑張ってきたのですが、数年前、全部達成できてしまいました。それで目標を失ってしまったのです。そうすると、事務所にも停滞感が生まれてしまいました。
何も目標がない事務所にいても、職員は面白くなかったのでしょうね。それではいけないと再度目標を掲げるようにしました。自分のやる気がなくては、職員に申し訳ないので、とにかく止まってはいけないのです。常に成長していかなければならないと思っています。
また、地域とのつながりも、もっと大事にしていきたいですね。これからはグローバル化が正しい流れなのかもしれませんが、私たちは地域を大事にしたい。地域の企業を伸ばしていきたいという気持ちがあります。
実際、私たちの顧問先には、地域からスタートして世界に名だたる企業になったところもあります。本当に素晴らしい会社に育っています。そのようなことがあると、この仕事を選んでよかったと心から思えます。世界に通用する企業が熊本からどんどん出るようにしたいというのが目標です。

―― 先の読めない時代ですが、これから日本はどのように変わっていくと思いますか。

会計業界と関係が深いものでいえば、電子証券は私たちの生活を一変する可能性があると考えています。電子証券は実現できないだろうと思っていましたが、国はあっさりと成し遂げてしまった。これには驚きました。証券が電子的に管理されれば、税務署の目も細かいところまで届くようになります。

―― 証券に限らず、近年ではさまざまなものが電子化されていますね。

これから先、もっと大きなものが変わる可能性があります。最後の大物、電子マネーです。今はSuicaなどがその名で呼ばれていますが、あれは実際にはお金ではありません。クレジットカードもそうですが、現金を借りておくというシステムにすぎません。
本当の電子マネーは、国が全て管理するものです。例えば、お金を誰かに支払おうと思ったら、何かしらのシステムにカードをかざせばよいだけ。後の処理は全て日本銀行が行ってくれます。加えて、カードを見たら、残高が分かります。そうすると、何が変わるか。まず、銀行がいらなくなりますよね。その入り口が、今回のマイナンバー制というわけです。
これが実現したら、私たちの業界も大打撃を受けるでしょう。全ての記録を日本銀行が持っているわけです。そのとき次なる一手をどう打つか。
ずっと先の話だとは思います。しかし、そのような時代の流れには、常に敏感でいたいと思います。

―― 今日は貴重なお話をありがとうございました。東秀優税理士事務所のさらなる発展を祈念しています。

東先生寄稿 米国製電気自動車が鳴らす警鐘

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3年間待ち続けた電気自動車(EV)が昨年9月に納車され、感無量である。これはアメリカのベンチャー企業テスラモーターズ社が開発した革命的なEVで、モデルSといい、フル充電なら500km走行可能で実用性は高い。九州圏内の出張にも支障はなく、充電は自宅で深夜電力を利用し、翌朝満タンはうれしい。内外装ともに上品なつくりで、ハンドルを握ると、胸のすく滑らかな走り。コントロール系も中央のタッチパネルに集約されており、いかにも家電製品という感じだ。ボンネットを開けるとそこにエンジン、ラジエーター等はなくトランクルーム。九州に1台しかなく、今のところ珍しい車であるが、先進諸国では既に多く出回っている。

聞いたところによると、このEVの開発に関する特許等は、全て無償で開示されるらしい。この会社のイーロン・マスク代表は、宇宙ロケットの打ち上げを成功させた会社の代表でもあり、地球環境を守るために環境に優しいEVの普及を狙っているらしい。ということは、中国をはじめ、東南アジアなどの人口増加地区が導入することは、大いに考えられる。日本でも既にEVは開発済みで、経済のバランスに配慮して見合わせている感があるが、未来を見据えると、もう本格的にスタートせざるを得なくなるだろう。

このEVを見て、過去に馬車が自動車に変わったように産業革命の始まりと驚嘆する人と、ただの目新しい自動車で、さして興味を示さない人とに分かれる。私は全ての人に前者であってほしいと願う。というのは、購入目的が自己満足ではなく、時代の変革を実感するためだったからだ。

過去にテレビ、電話、音響、計算機等がアナログからデジタルに変わり、産業に繁栄と衰退をもたらした。そして自動車もやっとデジタル化したのである。このEVは、よきにつけ、あしきにつけ、かなりの変化をもたらすに違いない。大げさではあるが、うかうかしてはおれないぞ、という日本経済、ひいては税理士界に対する警鐘であるかもしれない。

東 秀優

導入事務所様のご紹介

東 秀優(ひがし・ひでまさ)

東 秀優(ひがし・ひでまさ)

東秀優税理士事務所所長。税理士。南九州税理士会副会長。南九州税理士会熊本県連合会顧問。南九州納税貯蓄組合連合会理事。熊本家庭裁判所調停委員参与員。

東秀優税理士事務所

東秀優税理士事務所
所在地

熊本県熊本市中央区水前寺1丁目21番47号

代表者 東 秀優
設立 昭和59年
構成人数 43名(税理士4名、税理士有資格者4名)
得意分野 起業・開業支援、医療経営コンサルティング、建設業コンサルティング、
FPコンサルティング、相続・事業承継対策
URL http://higashi-kaikei.tkcnf.com/
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

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