導入事例

税理士法人TAパートナーズ

2019年3月19日

イメージ写真1

税理士法人TAパートナーズ(福岡県北九州市)は、「超伴走型の経営支援」という標語のもと、創業支援やソーシャルビジネス支援を中心に事業展開している。「超伴走型」とは名ばかりではない。1棟借り切った3階建てビルの2階には、起業を目指す人や創業間もない経営者などのために、セミナーやプレオープン、相談などが自由にできる広いコワーキングスペースを設けている。その他、相続を円満解決するためのサポート「幸せ相続計画」など、ユニークな事業を手掛けている。3年前に本村健一郎税理士事務所(北九州市)が合流し、相浦氏、本村氏のツートップ体制が築かれた。外を飛び回る右脳型の相浦圭太代表と、中を固める左脳型の本村健一郎氏のコンビによる柔軟かつ独創的な事務所経営についてお話を伺った。(写真撮影:市川法子)

障害者福祉を目指して税理士に

―― 本日は中小企業の経営支援、特に創業支援に力を入れている税理士法人TAパートナーズの本社にお邪魔しています。会計事務所とは思えない斬新なスペースや明るいデザインのオフィスからも事務所の理念が垣間見えますが、本日は、その足跡から経営理念、事業戦略などについて、相浦代表と本村代表に伺っていきます。まずは、相浦先生が税理士を目指された経緯からお聞きします。

相浦 もともと学校の先生になりたかったこと、そして、父が税理士事務所の職員だったこともあり、馴染みやすいだろうと考え、高校生のときに何となく税理士を目指し始めました。
しかも、試験勉強が苦手という理由で、大学院からのダブルマスターという道を選んでいます。さらに、大学時代、障害者のスポーツボランティアを経験してから障害者福祉にはまり、一時は福祉職員の道も考えました。
それでも税理士の道を選んだのは、阪神大震災をきっかけとして制定されたNPO法が理由のひとつになりました。私がボランティア活動をするNPOの組織運営や経営のやり方が、大学でマーケティングを学んでいた私の目に、あまりに非効率に映ったからです。そこで、知識面でのボランティアの必要性を感じ、税理士の立場から障害者福祉に貢献しようと考えました。

―― ダブルマスターで資格を取られたそうですが、そのメリット・デメリットはどうお感じになっていますか。

相浦 ダブルマスターは当時税理士業界では試験組より軽く扱われていて、はじめは少なからずショックを受けました。ただ、日本の税制の成り立ちなどを大学院で学んだおかげで、「これを認めるとあれもダメだ」といったバランス感覚を身に付けることができたと思います。そのため、お客様の質問に対し、正解に近い回答を導くことが比較的素早くできる気がします。ですから、気後れしていたのは最初だけです。当初は隠していましたが。

―― TAパートナーズはどのような経緯で設立に至ったのでしょうか。

相浦 大学院を出た後、父が勤務していた事務所に入り、数年間、修業させていただいた後、資格を取得して独立開業しました。その後、もといた事務所に跡取りがいないということで、私が出戻りで事務所を承継しました。平成19年、事務所を経営されていた40歳以上も年上の大御所先生2人と、あらためてスタートしたのが税理士法人TAパートナーズです。

―― 年の離れた先生との共同経営には、かなりご苦労もあったのではないかと思いますが、いかがですか。

相浦 年の差というより、私の性格上の理由で、初めは多少の軋轢もありました。もちろん、若輩ですから、先輩の言うことには従うのですが、私は、とにかく業界の暗い体質が嫌だったものですから、新しいものを事務所にどんどん取り入れていきました。それが古参の職員さんには受け入れ難かったようです。
例えば、当時からいろいろなお客様の悩みを解決していくことが仕事だと強く思っていました。よって、数字は現場にあると言って、率先してフットワーク軽く関与先にお話を聞くために赴いていました。
そのことを職員に押し付け反発が起きます。若者に言われるので当然です。しかし、あるときから他人に干渉することを徐々にやめていきました。時代が違えば、やり方・考え方も違って当然です。古いやり方を全て否定することは間違っていると気づいたのです。それからは、直轄の部隊のみ、私の方針でやっていきました。やがて、私の部隊の人員や売上が増えるにしたがって、私のやり方も受け入れられていきました。

イメージ写真2

「外の相浦、内の本村」というツートップ体制

―― 本村先生はどのような経緯でTAパートナーズに入られたのですか。

本村 私は資格を取ってすぐに門司支部で開業しました。相浦とは税理士会で知り合い、一緒に税理士会の仕事に携わるなかで、親交を深めていきました。税理士同士というのは、なぜかお互い仕事の話をしないものですが、馬が合ったのか、彼とはすぐに胸襟を開いて話すことができました。税理士としての未来を語ったりするなかで、一緒にやろうという話になったのです。

―― それでも、パートナーを組むとなると大きな決断になりますね。

相浦 実は、深くは考えていないのです。税理士法人と個人事務所で規模の違いはありましたが、一緒にやるなら、一緒に代表をしようということになりました。私は代表へのこだわりは全くありませんから、勢いでパートナーを組みました。
ただ、当時私が抱えていた問題が、一緒になった理由といえば理由です。私が事務所にじっとしているタイプではないため、事務所内部のことにほとんど目が行き届いていませんでした。何でも思いつきでひとり突っ走ってしまう私に、皆がついてきてくれているのか、組織としてしっかり機能しているのか、それがとても不安でした。
そんな私とは対照的に、本村はじっくりと腰を落ち着けて、仕事や組織を管理・調整することに長けていました。それなら、外の相浦、内の本村、なかには、「営業の相浦、税理士の本村」と言う人もいますが、右脳と左脳のような関係でうまく回るのではないかと考えたのです。

―― 現在の事務所の様子や人員構成はどのような感じですか。

相浦 スタッフは現在30名です。大先生の一人は80代でまだ健在ですし、スタッフは新卒から70代まで、男女比は半々と幅広い人材がそろっています。ベテランの職員さんたちは、TAパートナーズにとって貴重な人材ですので、特に定年制も敷いておりません。
実は、当社のオフィスはフリーアドレスで席は自由です。フリーにした当初こそ、世代ごとに固まっていましたが、今は不思議とその塊が崩れていっています。

イメージ写真3

「超伴走型の経営支援」実践の場としてのコワーキングスペース

―― ホームページには「超伴走型の経営支援」とありますが、これにはどのような意味、思いがあるのですか。

相浦 一口にお客様といっても三者三様です。看板だけつくっておけばいいという人もいれば、店舗展開で事業規模を拡大していきたいという人もいます。前者に「もっと人を入れて融資を受けて展開しましょう」なんていうアドバイスはナンセンスですし、後者に対して過度な節税のアドバイスをしても、かえって利益を圧縮することになるので、金融機関などからの信用を失う可能性があります。それぞれのステージでわれわれがすべきアドバイスは全く違ってきます。
ですから、実績は実績として把握する必要はありますが、数値化するだけでは経営支援にはなりません。経営者の会社への思い、将来展望を知らずして、適格なアドバイスはできません。そのためには「伴走」しなければ分からないのです。そういった意味を込めて「超伴走型の経営支援」と表現しました。

―― 今、インタビューをしているこのコワーキングスペースも、「伴走型」の一環になるのでしょうか。

相浦 そうです。「超伴走型の経営支援」を実践する場として、この施設をつくりました。「雑多に集めて実践をする場」という意味で、「ZATTA ZISSE」といいます。私はその館長です。
「ZATTA ZISSE」をつくるのに、サンフランシスコのベイエリアやシリコンバレー、そして日本の各地域のコワーキングスペースを見て回りました。総じて、どのスペースも格好よすぎました。例えば、子連れで行ける雰囲気ではありません。新しいものというのはいろいろとごちゃまぜにしたなかから面白いものが生まれると考えているので、小学生でも高齢者でもママさんでも、もっといろいろな人たちが利用できるスペースにしたほうが成功するのではないかと考えて、あまりつくり込みすぎないようにしました。

―― この施設は、具体的にどのように活用されているのでしょうか。

相浦 実践する場を提供することを目的とした施設ですから、セミナーをしたり、相談を受け付けたりします。また、トライアルカフェといって、日替わりの飲食店オーナーを募集しています。毎日、違う店が出るのですが、実は、それが当社スタッフのまかないにもなっていて、オーナーはスタッフから味などの感想を聞くことができます。そのような仕組みになっています。
このように、当社スタッフとお客様が一緒に悩み、考え、実際に実務面でのお手伝いもしていくことで、実践している人たちが常にここに緩やかに集まれる場に育てていきたいと思っています。

イメージ写真4

独特の視点から生まれるTAパートナーズの事業展開

―― TAパートナーズは、沖縄にもオフィスを持っていますが、どういった経緯で出されたのですか。

相浦 沖縄にオフィスを構えたのは2年前です。私も本村も全国展開するつもりは毛頭ないのですが、3年前に沖縄での相続税の申告の依頼があり、その申告がきっかけとなりました。
私が相続アドバイザーとして活動している兼ね合いで、沖縄の別のアドバイザーの方からお声掛けいただきました。沖縄は戦争が原因で無道路地が多く、それを正確に評価したところ、予想以上に税金が下がったため喜ばれたのを今でも覚えてます。そこから紹介がつながっていったのです。不動産を所有する方が多いことから、管理・保有会社の設立などにも関わるようになり、最後は、お客様に頼まれて事務所を出したというのが経緯です。
といっても、沖縄に事務所を出す大義名分がないわけではありません。沖縄特有の課題があり、創業率は福岡と並んで1位2位を争う沖縄県ですが、かたや廃業率も1位という状況が続いています。私の感覚では融資が下りやすいため、われわれが介在せずとも創業ができることから、安易な考え方で事業をスタートさせているケースが多いと思われます。そのような土壌をわれわれ会計人が変えていかなければなりません。このような使命感もありました。

―― 貴社は相続にも力を入れていますね。ホームページに「幸せ相続計画」というキャッチーな言葉がありますが、その理念をお聞かせください。

相浦 税理士ですから、相続もやはり節税対策がメインになりがちですが、意外に手練手管の対策よりも、10カ月以内という申告期限を守ることのほうが節税になるのです。当社は、今の相続ブームが起こるずっと以前から相続税にも取り組んできましたが、長年やってきたなかで、申告期限を守れず特例適用を逃したり、争いが理由で弁護士費用や時間を費やしたりといったケースを数多く見てきました。それを考えると、いかに幸せに遺産分割協議書に署名捺印できるかのほうが大事で、節税対策はその次だと思います。ですから、当社は「いかに幸せに相続してもらうか」を重視して相続に取り組んでいます。

イメージ写真5

「超伴走型」のサポートにMJSシステムを活用

―― 現在、基幹システムには、どういったソフトをお使いですか。

本村 基幹システムにはミロク情報サービス(以下、MJS)さんの会計事務所向けの統合業務パッケージ「ACELINK NX-Pro」を使っています。また、顧問先には「iCompassNXシリーズ」を展開しており、「かんたんクラウド」もかなり活用させていただいています。「かんたんクラウド」は、リアルタイムで顧問先と同じ画面を見られるので、素早い対応が可能になりますし、「ACELINK NX-Pro」とシームレスに連動していますから、入力データをそのまま監査や申告に利用できるなど、大変便利です。

―― MJSとはどういったきっかけで付き合いが始まったのですか。

相浦 私が入所したてのころに、MJSの営業の方がWindows版システムを持ってこられて、試しに入れたという感じでした。
その当時はまだ、MJSさんの3枚複写の元帳を使っているお客様がたくさんいらっしゃいました。そのような時代ですから、その画期的な機能に驚きました。当時使っていたオフコンとは比較にならないほど、高機能で便利でした。

―― 「iCompassNXシリーズ」は、どれくらいのお客様に導入されているのですか。

相浦 「iCompassNXシリーズ」は、70~80社に導入していただいています。あれは自計化のためのソフトとしてとても便利ですね。「iCompassNX」の会計、給与、販売とバリエーションも豊富ですし、「ACELINK NX記帳くん」など、規模やレベルに応じて提案できる点も重宝しています。
ですから、試しに導入してみたものが、気が付いたら基幹ソフトになっていたというところです。

本村 それだけ、利便性、有効性の点で、スタッフの人たちからも支持されてきたのでしょう。うまく使いこなせば、確実に業務の効率化、生産性の向上につながっていきます。「超伴走型」のサポートにもうってつけのシステムです。

イメージ写真6

AIにはできない 人間味あるサポートを目指す

―― 税理士法人TAパートナーズの中期ビジョンについてお伺いします。

本村 ビジョンは、AIがどこまで私たちの仕事に入り込んでくるかで変わってくると思いますが、その前に、当社には解決しなければならない課題があります。現在、記帳仕訳の作業は、銀行データ取り込みから試算表まで自動化されています。そのため、会計取引を試算表に起こしていくプロセスを理解していないスタッフが増えているのです。
自動化によって作業的な業務の負荷は減りましたが、自動化に慣れてしまったスタッフは、領収書がどのように試算表になるのかを説明することができません。一番大事なところがすっぽりと抜けているのです。その穴を埋めるために、会計の根幹を勉強しなければならなくなっています。

―― むしろ、帳票を速く正確に打つルーティン作業が減ったぶん、会計、さらには経営についてももっと勉強する必要が出てくるでしょう。

本村 そうですね。ですから、今後は社員全員で切磋琢磨していく組織にしていかなければなりません。しかし、トップダウンで押し付けてうまく動いていく規模ではもはやありません。ですから今は、どうすればボトムアップのエネルギーが働くかを考えているところです。3年後にはその成果を出せるようにしたいと思っています。
当社は、これまである程度順調にきて、今は踊り場的な状態にあると思います。ここからさらにその先を目指すには、基礎体力をつける必要もありますが、一人ひとりが税金や会計の専門知識だけでなく、高い専門性を身に付けていかなければなりません。そういう向上心も養えるような環境づくりもしていきたいと考えています。

―― 相浦先生はいかがですか。

相浦 「超伴走型」といっても、AIならそれを数値化することもできるでしょう。未来の数字もかなり正確に予測できると思います。しかし、お客様の夢を実現するために寄り添うことはできないでしょう。しかし、それこそが大事な部分だと思いますし、私自身、人間味のある泥くさいことが好きなので、人と深く関わっていくためのスキル、人間力を高めていきたいと思います。パンチのスキルはもう必要ないのです。

―― 人間味のあるものを追求した、そのひとつの答えが「ZATTA ZISSE」だということですね。

相浦 仰るとおりです。また、3階には、創業ステージの人などがステップアップするための場所として、テナントスペースも3つ用意しています。このように、TAパートナーズでは、さまざまなステージに応じた実践の場を用意しています。
当社スタッフも、ここでお客様との交流を深め、気軽に相談されるようになれば、もっと人間味のあるお付き合いができるようになるでしょう。そのような交流を通して多くの刺激を受け、自分からも発信するスキルを身に付けていきたいと思います。ですから、偉そうに「場を提供する」などと言っていますが、私たち自身の勉強の場、実験の場でもあるということです。
ここから、会計ではない、もっと違った視点でいろいろなことを考え、トータル的にサポートできる人材が生まれてほしいと期待しています。私たち2人のテーマの根幹は「教育」にありますので、今後は、できるだけそこに投資していきたいと思っています。

―― 本日は大変貴重なお話をありがとうございました。TAパートナーズのますますの発展を祈念しています。

導入事務所様のご紹介

相浦 圭太(あいうら・けいた)

相浦 圭太(あいうら・けいた)

税理士法人TAパートナーズ代表/DEO。税理士、準認定ファンドレイザー、NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員上級アドバイザー。昭和51年生まれ。大学在学中に障害者スポーツボランティアに参加。税理士事務所就職後も、NPO法人を立ち上げるなどスポーツボランティアに傾倒するも、途中から税理士業に専念。平成16年、独立開業。平成19年、税理士法人TAパートナーズ設立。

本村 健一郎(もとむら・けんいちろう)

本村 健一郎(もとむら・けんいちろう)

税理士法人TAパートナーズ代表/CEO。税理士、CFP(1級FP技能士)、決算書すっきりアドバイザー、NPO法人相続アドバイザー協議会認定会員上級アドバイザー。昭和48年生まれ。関西学院大学経済学部卒業。平成23年、もとむら税理士事務所を設立。平成28年、税理士法人TAパートナーズ代表に就任。

税理士法人TAパートナーズ

所在地 福岡県北九州市門司区東港町4番68号
創業 平成19年10月
職員数 30名
得意分野 経営支援/創業支援/相続対策/ソーシャルビジネス支援
URL http://www.tapartners.or.jp/
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら