総資産回転率（総資本回転率）は低い方が良い？高い方が良い？　回転率の分析と対策

現在は経営指標を使いこなすMJエンジニアリングですが、数年前の経理部は、日々の記帳をこなすだけで手いっぱいでした。

経理部長は、会計データを経営に役立てようと、自社の決算書をもとに経営指標を求めることにしました。

総資産回転率（総資本回転率）は、次の式で算定できます。

「総資産」は会社の持つすべての資産を指し、貸借対照表の「資産の部」の合計を用います。正確に算定したい場合は、総資産の期首の額と期末の額をもとに期中平均値を求め、これを用いると良いでしょう。

なお、負債と純資産をあわせて「総資本」と言います。「総資産」と「総資本」は同じ額となるので、「総資産回転率」を「総資本回転率」と呼ぶこともあります。

MJエンジニアリングの当期の総資産回転率（総資本回転率）
＝売上高9億円 ÷ 総資産10億円
＝0.9（回転）

総資産回転率（総資本回転率）は、総資産を活用してどれだけ効率的に売上を生み出せたかを表す指標です。総資産回転率（総資本回転率）を算定すると、１年間に総資産が売上として何回転しているかがわかります。総資産回転率（総資本回転率）が高いほど、資産を有効活用して売上を生み出している状態と言えます。

MJエンジニアリングと売上高が同じ架空のＡ社を想定し、比較してみましょう。

事業の性質上、多くの資産を持たなければ成り立たない業種があります。たとえば、製造業では、製品を製造するために多額の設備が欠かせません。これに対し、卸売業では大規模な生産設備などは不要であり、保有する資産が少なくて済む傾向にあります。

したがって、総資産回転率（総資本回転率）の水準は、業種によってバラつきがあります。たとえば、製造業の総資産回転率（総資本回転率）の平均値は約0.96回であるのに対し、卸売業の平均値は約1.70回です^（※）。自社の総資産回転率（総資本回転率）の良否は、同業種の平均値を目安として判断すると良いでしょう。
　　（※）中小企業実態調査（令和5年（令和4年度決算実績））より概算

「売上高÷総資産」という算定式から、総資産回転率（総資本回転率）を高めるには次の２つのアプローチがあることがわかります。

　・売上高を増やす
　・総資産を減らす
　
まず、資産を大きく増加させずに売上高を増加させることができるか、検討してみましょう。たとえば、市場環境の変化に応じて営業方法や販路を見直すことなどが考えられます。

また、資産の中に、売上の獲得に貢献しない資産が紛れていないか見直すことが重要です。現在は使用していない資産を処分するなどの方策が挙げられます。