第55回 熱中症予防対策と安全配慮義務

2024年7月31日

 地球温暖化の影響と言われている夏季の気温上昇により、年々熱中症予防の必要性が高まっています。厚生労働省の「職場における熱中症による死傷者数の推移」によると、2023年度の職場での熱中症による死傷者数は1,106人に及んでいます。(図1参照)
 全ての企業には、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」という安全配慮義務(労働契約法第5条)が課せられています。また、熱中症は労働基準法施行規則別表第1の2第2号8に「暑熱な場所における業務による熱中症」と規定されているように、労災の基準となる「業務に起因する疾病」として認められています。
 以上のことからも、熱中症はもはや個人が気を付ければ良いレベルのものではなく、職場においても予防対策として適切な措置が求められているのです。

(図表1:職場における熱中症による死傷者数の推移)

(出典:厚生労働省ホームページ「職場でおこる熱中症」)

安全配慮義務違反の判断基準

 前述の通り、企業は安全配慮義務を順守する必要があります。熱中症に限らず、実際に労働災害が生じた場合に安全配慮義務違反となるかどうかは、以下の基準により判断されます。

  1. 予見可能性および結果回避性の有無
    企業側が適切に対策を講じていれば防止できることであったか。
  2. 因果関係の有無
    企業側が安全配慮義務を怠ったことが怪我や病気の原因であったか。
  3. 労働者側の過失の有無
    労働者側に過失があったかどうか。あったとすればその度合いはどの程度であったか。

 熱中症に対する安全配慮義務違反とならないためには、職場の内外問わず、どのような環境下で発症しやすいのか、どのような症状(図表2参照)が現れるのか等を理解して、必要な措置を講じておく必要があります。

(図表2:熱中症の症状と分類)

(出典:「日本救急医学会熱中症分類2015」)

職場における熱中症予防対策

 熱中症のリスクは業種やその職場によって違いますので(図表3参照)、企業単位、職場単位で必要な対策を講じなければなりません。また、企業側だけでなく、労働者側にも理解してもらうために、熱中症に関する教育を実施すべきでしょう。

企業側としては、

  • WBGT値を測定し、適切な作業時間や休憩回数等を検討
  • 作業前に必ず労働者ごとの体調チェックを実施する
  • エアコンが効いた休憩場所を用意する
  • 水分のみならず塩分も摂取できるようにする
  • 室内も高温多湿にならないようにエアコンをこまめに調節する

など、できる限りの対策を講じることが必要です。

  • WBGT(湿球黒球温度):熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された暑さ指数

(図表3)熱中症による業種別死傷者数(2019~2023年計)

熱中症が疑われる際の応急措置

 必要な対策を講じていたとしても、暑熱環境に居る、あるいは居た後に体調不良を訴えた労働者がいる場合は、全て熱中症の可能性があるので、以下の手順で応急措置を行います。

  1. 意識を確認し、意識がはっきりしていなければただちに救急隊を要請する。
  2. 意識がはっきりしている場合で発症してしまった場合には
  • 涼しい場所(エアコンが聞いた室内、風通しの良い日陰など)へ避難させる
  • 衣服をゆるめ、身体を冷やす(特に首の回り、脇の下、足の付け根など
  • 水分・塩分、経口補水液(水に食塩とブドウ糖を溶かしたもの)などを補給する
  • 自力で水分等をとれなければただちに救急隊を要請

 いずれの場合も、企業としては体調不良を訴えている労働者の生命を最優先に考えて行動することが肝要です。

筆者紹介

加藤千博

MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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