第63回 育児休業給付関係の見直し1

2025年4月2日

 昨年(2024年)公布された「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」により、雇用保険法が改正されました。これに伴い、新たに「出生後休業支援給付」と「育児時短就業給付」が創設され、既存の育児休業給付とともに、雇用保険制度の枠組みの中で「育児休業等給付」として整理・統合されることとなりました(図表1参照)。
 そこで、今回は新たに創設された「出生後休業支援給付金」について解説いたします。

(図表1:改正後の育児休業等給付)

出生後休業支援給付金の概要

 出生後休業支援給付金は、男性の育児休業取得を促進する目的で設けられた給付金です。
 受給するためには、子の出生直後の一定期間内に、産後パパ育休または育児休業(以下、「育児休業等」という)を取得することが求められます。具体的には、父親は子の出生後8週間以内、母親は産後休業終了後8週間以内(子の出生後16週間以内)に、少なくとも14日以上の育児休業等を取得する必要があります。さらに、配偶者も子の出生後8週間以内に育児休業等を取得していることが条件となります。ただし、配偶者がいない場合や、配偶者が産後休業を取得する場合など、一部のケースでは配偶者の育児休業等の取得が要件とされません。本給付金は、既存の育児休業給付(出生時育児休業給付金※1または育児休業給付金※2)と併せて、最大28日間支給されます(図表2参照)。

※1 子の出生後8週間以内に取得した産後パパ育休(出生時育児休業)に対して支給される給付金
※2 子が1歳(最大2歳まで延長可)までの期間の育児休業に対して支給される給付金

(図表2:出生後休業支援給付金のイメージ)

(出典:厚生労働省リーフレット『2025年4月から「出生後休業支援給付金」を創設します』より引用)

支給要件

 出生後休業支援給付金は、育児休業給付の受給資格がある方に対して追加支給される給付金です。そのため、被保険者(雇用保険の一般被保険者及び高年齢被保険者)が、以下の①および②の両方の条件を満たすことが支給の要件となります。

  1. 被保険者が、対象期間※3に、同一の子について、出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得したこと
  2. 被保険者の配偶者が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと、または、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合※4」に該当していること

※3 対象期間とは次の期間のことをいいます。

  • 被保険者が産後休業をしていない場合(被保険者が父親または子が養子の場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間
  • 被保険者が産後休業をした場合(被保険者が母親、かつ、子が養子でない場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間

※4 「配偶者の育児休業を要件としない場合」とは、子の出生日の翌日時点で配偶者が次のいずれかに該当する場合をいいます。

  1. 配偶者がいない(行方不明の場合む含む)
  2. 配偶者が被保険者のこと法律上の親子関係がない
  3. 被保険者が配偶者あら暴力を受け別居中
  4. 配偶者が無業者
  5. 配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
  6. 配偶者が産後休業中
  7. 1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない(単に業務の都合等で育児休業を取得しない場合等ではなく、育児休業給付の受給資格がない場合等が該当します)

支給額

 出生時休業支援給付金の支給額は、休業開始時の賃金日額の13%に相当します。これに加え、既存の育児休業給付金(休業開始時の賃金日額の67%相当)が支給されることで、合計すると賃金日額の80%に相当する額が支給される仕組みです。さらに、給付金が非課税であることや、申請により育児休業期間中の社会保険料が免除されることを考慮すると、実質的な手取り額は賃金の100%相当となります。ただし、休業開始時の賃金日額には上限が設定されており、2025年4月1日時点では15,690円(毎年8月1日に改定)となっている点に注意が必要です。

支給額=休業開始時賃金日額※5× 休業期間の日数※6× 13%

※5 同一の子に係る最初の出生時育児休業または育児休業の開始前直近6か月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額。
※6 支給日数は、対象期間における出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給される休業の取得日数であり、28日を上限とする。

 なお、事業主から賃金が支払われた場合、出生時育児休業給付金および育児休業給付金は支給額が減額されることがありますが、出生後休業支援給付金については減額の調整は行われません。ただし、事業主から支給された賃金が「休業開始時賃金日額×休業期間の日数」の80%以上となり、その結果、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給されない場合には、出生後休業支援給付も支給対象外となります(図表3参照)。

(図表3:賃金が支払われた場合の支給額)

 ●休業開始時賃金日額×休業期間の日数=「支給基準額」

支払われた賃金額 出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給額 出生後育児休業支援給付金の支給額
「支給基準額」の13%以下 「支給基準額」×67% 「支給基準額」×13%
「支給基準額」の13%超~80%未満 「支給基準額」×80%-賃金額 「支給基準額」×13%
「支給基準額」の80%以上 支給されない 支給されない

支給申請手続

 出生後休業支援給付金の支給申請は、原則として、出生時育児休業給付金または育児休業給付金の支給申請と併せて、同一の支給申請書を用いて勤務する会社を通じて事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に提出します。
 申請後に別途行うことも可能ですが、その場合は、出生時育児休業給付金または育児休業給付金が支給された後に申請します。
 詳しくは事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)にお尋ねください。

筆者紹介

加藤千博

MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

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