ボトルネックを意識せよ! 生産性が向上しない工場が見落としていたポイントとは?
2024年6月23日
質問
「MJS製作所」では、3つの連続した工程である製品を生産しています。各工程で1時間あたりに作業できる能力を調べたところ、工程Aで製品20個相当の作業、工程Bで製品10個相当の作業、工程Cで製品30個相当の作業をこなしていることが分かりました。工場全体の生産性を向上させるために、あなたが現場の管理者ならどのような指示をしますか?
パターン1
まずは工程Aの作業能力に注目した改善策をとるように指示する。
パターン2
まずは工程Bの作業能力に注目した改善策をとるように指示する。
パターン3
まずは工程Cの作業能力に注目した改善策をとるように指示する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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工場全体の生産性が向上した!
「MJS製作所」では、工程ごとの生産性改善に努めているものの、工場全体の生産性が思ったほど上がらないのが悩みでした。しかし、ある見直しを図った結果、最近では工場全体で見た生産性が向上し始めたようです。
以前 ~現場は努力していても生産性の向上につながらないのはなぜ?
MJS製作所は、量販店向けの製品を生産しています。最近、業務改善プロジェクトの一環として、工場内で工程ごとに目標を設定して、進捗度の報告会を定期的に行うようになりました。報告会を行うようになってから、もともと想定していた以上に工場の生産性が低いことが分かりました。
報告会を始めた時点で、現場の管理者であるXさんは工場での生産性を高めるため工程ごとに改善策を考えるように指示しました。それ以後、作業員を中心に工程内でどのように改善を行っていくかが話し合われてきました。しかし、現場の努力にもかかわらず、工場全体で見た生産性は思うように向上していません。努力に見合った成果が出ていないこともあって、作業員のモチベーションも下がっています。
その後、ある程度まとまった業務データが得られた時点で改めて部下に分析してもらったところ、実は、工程によって作業能力にだいぶ違いがあることが見えてきました。各工程で1時間あたりに作業できる能力が、工程Aで製品20個相当の作業、工程Bで製品10個相当の作業、工程Cで製品30個相当の作業をこなしていることが分かったのです。Xさんは、工場全体の生産性を向上させるための方針を何か打ち出せないか考えています。
質問
「MJS製作所」では、3つの連続した工程である製品を生産しています。各工程で1時間あたりに作業できる能力を調べたところ、工程Aで製品20個相当の作業、工程Bで製品10個相当の作業、工程Cで製品30個相当の作業をこなしていることが分かりました。工場全体の生産性を向上させるために、あなたが現場の管理者ならどのような指示をしますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
まずは工程Aの作業能力に注目した改善策をとるように指示する。
パターン2
まずは工程Bの作業能力に注目した改善策をとるように指示する。
パターン3
まずは工程Cの作業能力に注目した改善策をとるように指示する。
工程Aより作業能力が劣る他の工程がある時、まずは工程Aに注目した改善策をとっても工場全体の生産性向上にはなかなかつながりません。
管理者が選んだのはパターン2でした。まずは作業能力が最も低い工程Bに注目した改善策をとることで、工場全体の生産性を高めることもできます。
工程Cより作業能力が劣る他の工程がある時、まずは工程Cに注目した改善策をとっても工場全体の生産性向上にはなかなかつながりません。
ボトルネックの工程を特定せよ! ~セミナーでつかんだヒント
MJS製作所の現場の管理者Xさんが部下と一緒に参加した社外セミナーでのこと。製造企業Y社の事例報告でXさんたちは気になる話を聞いたのです。Y社では、複数ある工程のうち最も作業能力が低かった工程が業務全体の停滞を招いていることに注目しました。このような部分をボトルネックと言い、ボトルネックの工程を特定し、それを改善するための施策をとったそうです。自社工場の状況に似ていると思ったXさんたちは、プレゼン後に担当者へ質問してみました。
Xさん
業務全体の流れを良くするためにボトルネックに注目するという点に私も共感しました。でも、作業能力が低い工程に他の作業を合わせるというのは何だか非効率的なようにも思うのです
おっしゃる通り、効率が悪そうに見えるかもしれません。ですが、業務全体で見ると、ボトルネックの工程は他の工程よりも作業能力で劣るので、いくら他の工程で改善を頑張っていても、工場全体で見ると、ボトルネックの工程で製造できる数以上の製品を作ることはできないのです
Y社担当者
Xさん
結果として、他の工程での生産性向上が工場全体での生産性向上につながらず、無駄になってしまうということですね
そうなんです。ですから、まずはボトルネック工程に注目すべきでしょう。もし、ボトルネックとなっている工程で生産能力をフルに活用できていないとしたら、まずはそこを何とかしなければいけません
Y社担当者
Xさん
例えば、どんな……
例えば、ボトルネック工程の作業員がいろいろな業務を抱えていた場合には自分たちの業務だけに専念させて、その他の業務からは解放させてあげることなどが考えられます。それが第一ステップです
Y社担当者
Xさん
ということは、次のステップもあるんですか?
ボトルネックの工程をフル活用できるようになったら、その工程の能力自体を高める施策を考えてみると良いです
Y社担当者
Xさん
でも、リソースが限られる企業にとってなかなか大がかりなことはできないとも思います
確かに、現実的にできることは限られていますね。ですから、ボトルネックに対処する時には、まずは現在保有しているリソースで何ができるかを考えてみてください
Y社担当者
Xさん
なるほど、うちだと新たにスタッフを雇ったりするのは難しいけれど、既存の業務フローを見直すことからなら始められそうだ
Y社担当者と意見交換をする中で、Xさんと部下は、自社でも改善の余地はあることに気付いたのでした。
ボトルネックの工程の特定と改善施策 ~自社工場での実行へ
Xさんは、工場の業務全体の流れを見てボトルネックになっている部分に注目することにしました。具体的には、以前に部下へ依頼していた分析レポートを参考に、まずは自社工場の中で最も作業能力が低かった工程Bをボトルネックの工程として、この作業能力をフルに活用するための施策を現場で考えてもらいました。
詳しくやり取りしたところ、工程Bでは、特定の熟練作業員に複数の業務が集中していて、他の作業員では業務の状況が確認できていなかったことが把握できました。そこで、Xさんは、作業員と話し合いながら、特定の人だけに業務が集中しないように配置や手順の見直しを行うなど、その都度状況を共有できる環境を作りました。工程Bを中心とした業務内容の変更や可視化を行うことで、作業員のモチベーションや作業能力も改善しました。こうした取り組みのおかげで、工場の生産性は次第に高まっていきました。工程Bの生産能力をフルに活用できるようになってきたことから、今後は工程Bの生産能力自体を高めることも検討していく予定です。
「ボトルネック」
連続する工程で作業が行われる時に、最も作業能力が低い工程のことをボトルネックの工程と言います。ボトルネックの工程は他の工程よりも作業能力が劣っており、在庫の滞留等を引き起こすことが多いです。業務の効率化を進めるためには、業務全体で見た時にどの部分がボトルネックであるかを特定して、改善のための施策を考えることが重要です。なお、今回は製造業の例を考えていますが、小売店などの業務改善においても活用可能です。
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