第49回 2024年問題(建設業の労働時間規制)
2024年1月31日
前回は自動車運転業務(物流・運輸)の2024年問題について、「時間外労働の上限規制」の他、トラック運転者の「改正改善基準告示」についても解説いたしました。
今回は、自動車運転業務と同様に「時間外労働の上限規制」が5年間猶予された建設業の2024年問題について解説いたします。
建設業の現状と課題
国土交通省が2021年に発表した「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、現在の建設業における主な課題は、少子高齢化による人材不足と長時間労働です。
一般的な企業に「時間外労働の上限規制」が適用されてから5年間という猶予があったにもかかわらず、実は大手のゼネコンから中小企業に至るまで、多くの建設業において「時間外労働の上限規制」に対応ができていないのが現状です。以前から長時間労働の問題を抱えていない企業は別ですが、恒常的な長時間労働に悩まされている企業のほとんどは、5年前と比べて、あまり改善されていません。
将来的には団塊世代の大量離職も予想され、日本の総人口および生産年齢人口の減少に伴う人材確保と次世代の技術継承も大きな課題となっています。
若年層からは、「きつい労働に対して賃金が低い」「週休2日が確保されず休みが取りづらい」といった不満が多く、これらのことが高い離職率に繋がっていることは企業側も認識しています。従業員の週休2日の確保と長時間労働の防止のためには、「適正な工期設定・施工時期の平準化」が重要です。そのために受注側の企業だけではなく、発注者と協力して工期を適切に管理することが求められます。
建設業の時間外労働の上限規制
2024年4月からは、建設業においても「時間外労働の上限規制」が適用されることから、36協定についても従来の様式ではなく、他の業種と同様の様式にて届け出る必要があります。
時間外労働時間の上限は、その他の業種と同様に、原則として月45時間以内、年360時間以内となります。やむを得ない事情で事業所と労働者が合意した場合には例外的に年720時間の時間外労働が可能(特別条項)となります(その他の事項、及び災害時における復旧及び復興の事業の適用除外については、図表1を参照)。
違反した場合は、6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられる場合がありますので、事前の対策が急務となります。
(図表1)建設業の時間外労働の上限規制
(出典:厚生労働省「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」)