第56回 フリーランス新法の概要

　個人事業主等（以下「フリーランス」という）の方が安心して働ける環境を整備するため、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」（以下、「フリーランス新法」という）が、2023年4月28日に成立、同5月12日に公布され、いよいよ2024年11月1日に施行されます。今までは事業者とフリーランスとの取引に係る法律は、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法、労働関係諸法令等を組み合わせて適用されてきましたが、フリーランス新法が施行されることにより、取引に係る法律が明確化されることになります。
　そこで今回と次回の2回にわたり、フリーランス新法の概要とフリーランスを活用する際の留意点等を解説いたします。

以前、労務管理トピックス17、18で解説しましたが、事業者とフリーランスとの取引については、「フリーランスガイドライン」（フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン）によって、一定のルールは示されていましたが、働き方改革により多様な働き方を推進していくうえで、副業としてフリーランスとなる方も多くなり、事業者とフリーランスとの間でのトラブルを防ぐためにも明確な法規制が望まれていました。
　そこで今回のフリーランス新法は、「この法律は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事することができる環境を整備するため、特定受託事業者に業務委託をする事業者について、特定受託事業者の給付の内容その他の事項の明示を義務付ける等の措置を講ずることにより、特定受託事業者に係る取引の適正化及び特定受託業務従事者の就業環境の整備を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」（フリーランス新法第1条）という目的を掲げています。

　適用範囲は、フリーランスと、発注事業者の企業等となります（例として図表１参照）。

　取引する発注事業者が満たす要件に応じてフリーランスに対しての義務となる措置の内容が異なります（図表２参照）。