導入事例
税理士事務所ニライ 様
2018年9月7日
税理士事務所ニライ(沖縄県北谷町)は、人口約3万人弱の北谷町で活動している会計事務所だ。北谷町の規模は決して大きなものではないが、平成23年に設立した同事務所は順調に成長を続けている。沖縄県では多くの会計事務所が5名程度の規模であるが、税理士事務所ニライの職員は10名を超え、顧問先も150件を誇る。事務所の運営にはクラウドサービスなどテクノロジーを積極的に導入。製販分離も導入し、MAS監査を提供するなど付加価値業務に注力した活動が注目を集めている。本稿では、税理士事務所ニライの所長である當山孝祥氏に、同事務所の取り組みや今後の展望についてお話を伺った。
中小企業の金融を理解するために金融機関へ
―― 税理士事務所ニライは沖縄県北谷町の会計事務所です。同事務所では、税務以外の取り組みにも注力するなど、近年急成長している事務所として知られています。
本日は税理士事務所ニライの所長である當山孝祥先生にお話を伺います。まずは事務所の足跡をご紹介ください。
當山 税理士法人ニライは平成23年の7月に開業しました。このオフィスに移ってきたのは昨年のことで、現在は8年目を迎えています。
―― 當山先生が税理士を目指したきっかけを教えてください。
當山 私は京都の大学に入学したのですが、当時は多くの学生が3年生の後半から就職活動を始める時代でした。しかし、私は「サラリーマンになりたくない」と悩んでいるうちに、そのまま卒業してしまいました。
卒業後も、京都のホテルでバーテンダーのアルバイトを続けていたのですが、ある日、偶然先輩に出会って近況報告をしました。すると、「何をやっているんだ」と先輩から怒られてしまいました。「就職したくない」という気持ちがあったのですが、それをきっかけに真剣に今後を考え始めました。そうして目指したのが税理士でした。
―― なぜ税理士だったのでしょうか。
當山 京都にそのまま残って仕事をすることも考えましたが、私は地元の沖縄がすばらしい場所だと思っています。ですから、地元に戻ってもできる仕事がしたいと考えました。
実は沖縄は、珠算で10段を持っている人の数が全国で一番多いのです。私も10段を持っていますので、数字と接するのは全く苦ではありませんでした。ですから、「税理士っておもしろそうだな」と試験勉強を始めました。23歳のころです。
―― 資格の取得はスムーズにできたのですか。
當山 どうすれば最短で税理士になれるかと考えて、大学院に通うことにしました。当時は大学院での3科目免除の最後の年でした。その大学院に通っていた2年間で簿記論と財務諸表論にも合格し、資格を取得することができました。
―― 資格の取得後はすぐに沖縄へ戻られたのですか。
當山 そうですね。ただ、まずは会計事務所ではなく、地方銀行に就職しました。
―― なぜ金融機関に入られたのですか。
當山 将来的に会計事務所として中小企業のお客様と接するうえで、どうしても金融の仕組みを理解しておくことが不可欠だと思ったからです。
中小企業が必要に迫られて「借りたい」と思ったときに、すぐ資金を調達できるわけではありません。日頃からどのようにすれば金融機関が融資してくれるのかを、金融機関の立場から理解したかったのです。
―― その経験は、税理士として大変説得力があると思います。
當山 沖縄銀行には1年勤め、その後会計事務所に入りました。その事務所では約6年勤めました。
人口3万人弱の町を選んだ理由
―― その会計事務所で働いたあとに独立されたのですね。なぜ、この中頭郡北谷町を選ばれたのですか。
當山 まず地元に近い場所がよかったからです。私は沖縄市の出身なのですが、北谷町はその隣です。また、北谷町は人口3万人程度の小さな町ですが、とても発展しています。地価の伸び率も、那覇市に次ぐ勢いです。海沿いでビーチが3つあるので観光地としての需要もありますし、嘉手納飛行場が近いので米軍の方の住まいとしても、県外から移住される方にも大変人気があります。
ですから町に活気があり、新しい法人がどんどん設立されているような状況です。
―― 実際に北谷町で開業されてどのように感じましたか。
當山 とてもよかったと思っています。今では人のつながりもできました。商工会や観光協会で少し活動させていただいていますが、コンパクトな町なので、参加者が何をやっている方なのかがほとんど分かるようになってきました。それはとても心強いですね。
―― 顧問先はどのように獲得されているのですか。
當山 基本的には紹介がほとんどです。直近1年で2名の元銀行員に事務所に加わってもらいました。どちらも10年以上銀行に勤めていた方なのですが、最近では彼らの人脈から来てくださる方もとても多くなっています。
顧問先と「納得済みの関係」をつくるための「メニュー化」
―― 取材を行っているこのオフィスには昨年引っ越されたとのことですが、スペースも広く、会計事務所というよりは、ITスタートアップ企業のオフィスのようです。天井からつるされた大きなモニターも特徴的ですね。
當山 あのモニターはつい最近設置したものです。私たちは製販分離を取り入れているのですが、記帳代行の状況をあのモニターで全体に見える化して共有しています。以前はホワイトボードで共有していました。
ただ、現在は名南経営コンサルティングさんのクラウドサービス「MyKomon」を導入しています。そして、「MyKomon」に顧問先の情報を入力し終わったので、データで共有してモニターに出力しています。
―― 製販分離を導入しているのはなぜですか。
當山 私たちがやるべき「仕事」と「作業」は別だと思っています。「作業」はテクノロジーを活用して、どんどん効率化させたいという意識があります。
私が前の会計事務所で働いていた10年くらい前でも、既に高い顧問料を頂いていたわけではありませんでした。しかも、その顧問契約は「月数万円で全部やります」という内容でした。
しかし、この「全部やります」では、税理士が具体的に何をしてくれるのか不明瞭で、お客様も納得しにくいと思います。さらに、「全部やります」と契約していますから、会計事務所にとって顧問料と見合わない仕事をお願いされることも多々あるわけです。
―― 「全部やります」がブラックボックス化している事例は多く見られますね。
當山 そこで、私たちは「この金額ならここまでやります」という「メニュー化」を意識して実践しています。「メニュー化」することで、お客様も私たちもお互いが納得できますから、よい関係が築けていると思っています。
顧問先150件、職員14名の体制を支える基幹システム
―― 記帳代行以外の領域ではどのような取り組みをされていますか。
當山 MAS監査に注力しています。MAP経営さんの考え方やソフトを取り入れて、顧問料とは別にフィーを頂いて提供しています。
先ほど申し上げた銀行出身の2人がMAS監査を担当していますが、顧問契約を結んでいるお客様を対象に毎月オフィスでMAS監査導入セミナーを企画しています。
―― 事務所運営の基幹システムには何をお使いですか。
當山 ミロク情報サービス(以下、MJS)さんの「ACELINK NX-Pro」を導入しています。現在は、「ACELINK NX-Pro」を使い始めて6年目になります。
―― 開業時からの利用ではないのですね。当時は別のシステムを利用されていたのですか。
當山 はい。以前のシステムとは監査に対する考えがあまり合いませんでした。私たちは顧問契約を結ぶ際に、「メニュー化」の一環として「月次監査の有無」を選んでいただいています。以前の事務所では毎月巡回監査を実施していましたが、お客様は必ずしもそれを望んでいないのではないかと考えるようになりました。MJSさんのシステムは自由度や拡張性が高いので、私たちにとても合っていると感じています。
―― 現在、どのくらいの顧問先数をお持ちですか。
當山 年に一度の決算だけのお客様を除いて、約150件です。顧問先には「iCompassNX会計Plus」を導入していただき、自計化の支援をしています。
―― 職員の数はどのくらいですか。
當山 私を含めて14名です。私のほかに女性の税理士が1名います。
―― 税理士の採用も當山先生の人脈からなのですか。
當山 そうですね。実は彼女は隣町に開業した税理士事務所の代表でした。5年ほど前に「開業したので、よろしくお願いします」と連絡をもらいました。
そこから、異業種交流にお誘いするなどして親しくなるうちに、その事務所での悩みなどの相談を受けました。そこで、「よかったら、うちで働いてみたら?」とお誘いしたのです。
会社や人の「媒介」としての会計事務所
―― 3年後、5年後の中期的な展望をお聞かせいただけますか。
當山 まずは税理士法人化したいですね。現在働いてくれている女性の税理士とも話はしているのですが、税理士が3人になったタイミングがいいと考えています。まだ漠然としていますが、支店の展開もできたらいいですね。
なぜ法人化したいのかというと、個人事務所のままでは、私に何かあったときに事務所を閉めるしかなくなるからです。ノウハウを引き継げるように、法人化して組織を整えていきたいと思います。
また、職員に働きやすい職場をつくっていきたいですね。沖縄で働いてみたいという県外の方ももちろん大歓迎ですし、今後、もし一緒に働いてくれる税理士さんが独立したければ、できる限りの支援もしたいと考えています。
―― さらに、最終的にはどのような事務所にしていきたいとお考えですか。
當山 静岡のアイクス税理士法人さんのような事務所になっていきたいですね。アイクスさんは製販分離がきちんとできていて、営業部隊がいて、付加価値の高いさまざまな商品をそろえています。こういった体制を目指していきたいと考えています。実は、先ほどお話しした「見える化」のためのモニターは、実はアイクスさんを参考にしたものなのです。
なぜそのような組織を目指したいのかといえば、「会社と会社」「人と人」が緩くたくさんつながって、お互いを補完し合う媒介になりたいからです。例えば、会計事務所が持つ付加価値としてカウンセリングサービスもできると思います。お客様の悩みを聞いて、実際にその悩みを解決するために信頼できるパートナーを紹介するといったイメージですね。ですから、会計事務所として税務を柱にしつつ、提供できる付加価値をどんどん増やしていきたいです。パートナーもどんどん増やして、自分たちだけではなくネットワークで、お客様のあらゆる悩みに応えていきたいと思います。
―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。今後ますますの発展を祈念しています。
導入事務所様のご紹介
當山 孝祥(とうやま・たかよし)
税理士事務所ニライ 所長。税理士。同志社大学卒業。地方銀行での勤務を経て、沖縄県内の会計事務所に6年務める。平成23年、税理士事務所ニライを開業。現在は、沖縄大学の講師も務める。
税理士事務所ニライ
所在地 | 沖縄県中頭郡北谷町浜川8-24 しまぜんビル2F-B |
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代表者 | 當山 孝祥 |
創業 | 平成23年 |
職員数 | 14名 |
得意分野 |
会計業務、決算業務、税務調査対応、相続・事業承継、事業再編、事業再生、経営支配権の確保、 後継者問題の検討、株式承継対策、相続税対策、生前対策コンサルティング、相続コンサルティング、 相続税・贈与税申告業務、税務調査対応、セカンドオピニオン、申告書・決算書等の作成、 不動産の譲渡・交換・買い換え・収用等 |
URL | http://www.toyamazei.co.jp/ |
- 本事例の掲載内容は取材当時のものです。