導入事例
株式会社大分綜合会計 様
2018年10月22日
株式会社大分綜合会計(大分県大分市)は、33歳で国税職員から税理士へ転身を図った衞藤氏が、12年前に地元大分で開業した会計事務所である。「日本一相談しやすい事務所」をモットーに、顧客との信頼関係醸成に全力を注ぎ、信頼から紹介へとつなぐプロセスを一つひとつ積み上げながら、顧問先、スタッフとも、毎年コンスタントに増客・増員を実現してきた。その信頼醸成の要となるのが情報だ。地元の中小企業に関する情報はもちろん、常に東京をはじめとする大都市圏にもアンテナを張り、登録しているメルマガの数は100件以上と、情報の収集・分析には余念がない。情報こそが顧客拡大戦略の最大の武器であるとする同社代表取締役の衞藤 勉氏に、地方会計事務所事業戦略の極意についてお話を伺った。
国税を退職し、働きながら資格を取得して開業
―― 本日は、国税を退職後、税理士の資格を取られ、地元大分県で会計事務所を開業された衞藤先生に、事務所の成長戦略などについてお話を伺います。まずは、開業までの経緯についてお話しいただけますか。
衞藤 私が国税を退職したのは平成11年、33歳のときでした。税理士事務所を開業した国税時代の先輩から、一緒にやらないかというお声がけを頂いたのがきっかけです。
もちろん躊躇はしましたが、まだ若く、自分の力を試してみたいという気持ちが強かったのでしょう。もともと、このままでいいのかという思いを抱いていましたから、結局、イチかバチかの勝負に出て、国税を飛び出しました。税理士になって独り立ちしようと決意したわけです。
それから先輩の事務所で働きながら、6年ほどかけて資格を取り、18年に独立開業しました。
―― 働きながら6年で資格を取るのはかなり大変ではありませんでしたか。
衞藤 覚悟はしていましたが、思った以上に大変でした。しかし、働かなければ食べていけません。平日は先輩の事務所に通勤し、週末の2日間で40時間くらい勉強するという日々を、6年間続けました。家族の支えがなければ、資格取得など到底かなわなかったのではないかと思います。
―― 独立開業は、顧問先ゼロからのスタートだったのでしょうか。
衞藤 いえ、前職で私が担当していたお客様をそのまま譲っていただけたので、ゼロからではありません。これに関しては、本当に先輩には感謝しています。
また、私が在職中に先輩の事務所を退職していたパートさんがいたので、その人たちに声をかけてなんとか2人を口説き落とし、3人体制でスタートしました。
―― 現在の事務所の規模はどれくらいになりますか。
衞藤 所員数は12名で、顧問先数は法人、個人合わせて300件ほどになります。
―― 経営理念についてお聞かせください。
衞藤 「顧客ファースト。多様なニーズに対応し、企業の成長・発展に貢献する。そして従業員の幸せ」を経営理念とし、「3S」を標語に掲げています。「3S」は「Speed・Special・Smile」の略です。
経営の原点は行動ですから、「クライアントの要望にはスピーディに対応する」「中小企業のお客様に対して常に専門家であり続ける」「この仕事を究極のサービスと位置づけ、常にスマイルを忘れない」ということです。
開業当初は「決算事務所」のスタンスを堅持
―― 開業後はどのようにして顧問先を増やしていかれたのですか。
衞藤 開業当初は、前職からお付き合いのあったお客様しか伝手がありませんでしたので、とにかくお客様の信頼を得ることで新しいお客様をご紹介いただく、それだけです。ですから収益は二の次でした。「日本一相談しやすい事務所」をモットーに、何でも相談してくださいという姿勢を貫きました。相談されるということは、信頼されている証しですからね。
―― 紹介だけで現在の規模にまで成長されたのですか。
衞藤 ほぼそうです。積極的に紹介してくださる顧問先様が少しずつ増えていき、広がれば広がるほど分母が大きくなりますから、加速度的にお客様が増えていきました。増客は年に20~30件、それに伴い、職員も年にひとりずつ採用してきました。
―― 順風満帆に成長されてきたという印象を受けます。
衞藤 7年ほど前から統計を取り始めて以降、毎月、顧問先が増え続けています。あわや記録が途切れるかという月もありましたが、神風が吹くかのごとく幸運に恵まれまして、これまで増えなかった月は一度もありません。
―― 成長の要因は何だと思われますか。
衞藤 当初、「当事務所は決算事務所です」というスタンスを堅持したことが奏功したのではないかと思っています。ですから、最初の10年は相続案件などのスポット案件は手掛けませんでした。月次の顧問料をいただけるお客様を増やし、事務所経営を安定させることが先決だと考えたのです。ですから、とにかく決算事務所を自任しつつ、自分自身の価値を上げることに注力しました。
―― 自分自身の価値を上げるとはどういうことでしょうか。
衞藤 私は、自分の市場価値が上がれば、それに伴ってお客様も増えていくはずだと考えています。
例えば、戦略として業種特化、業務特化をされる事務所さんは少なくありませんが、開業当初は、特化したところで所員が3人ですから、対応しきれません。それよりは、既存のお客様に対するサービスの質を上げ、信頼を得て、そのルートを生かして広げていったほうがいいだろうと考え、お客様から相談を受けたら「できません」「分かりません」とは言わないようにしました。
―― 今では、医療法人もかなりいらっしゃるようですが、どのようにして市場を掘り起こしていかれたのですか。
衞藤 初めは苦労しました。医療法人が設立予定だという情報が入ったとしても、予定の段階で既に顧問先事務所が決まっているわけです。最初はそれがなぜなのか分かりませんでした。しかし、やがてそこにはコンサルティング会社が絡んでいて、その段階で決まってしまうということが分かりました。
それからは、コンサルティング会社とのコネクションづくりに注力しました。その結果、なんとかコンサルティング業界に入り込むことができ、今では、医療法人新設に関する情報をいち早く取得できるようになりました。
顧客の信頼を得るための情報収集に注力
―― どのようにしてご自身の価値を上げていかれたのでしょうか。
衞藤 私が自身の市場価値を上げるために重視しているのは情報です。常に新しい情報を仕入れることが、お客様サービスの質向上につながるからです。地方の企業でも最新の情報を知ることができるとなれば、信頼もより深くなるでしょう。
ですので、私は会計業界の動きについてアンテナを張り、東京の先端事務所が今どのようなことをやっているのかといったことを、常に頭に入れておくようにしています。東京の情報から地域の訃報まで、情報収集には力を入れています。
―― 情報収集はどのようにされているのですか。
衞藤 出張で外部のセミナーや研修会などに参加することもありますが、なんといっても多いのはメルマガです。とにかくたくさん取っています。手軽に業界のトレンドを知ることができますからね。メルマガから得た情報をお客様への情報提供に活用しています。
やはり、クライアントが何を求めているかは、私たちが一番よく知っているはずですから、経営者の意思決定に役立つ情報を、私たちなりに提供していくことが大事だと思っています。
ですから、当社のお客様は、東京の中小企業が受けているようなサービスと同じサービスを受けられているという自負があります。
―― 情報収集にはかなり重点を置かれているようですが、所内での情報共有についてはいかがでしょうか。
衞藤 事務所内においては特に、お客様に関する情報の共有を徹底するようにしています。
例えば、最新の情報を仕入れたからといって、それを全てのお客様にお伝えするわけではありません。お客様によって求めているレベルが違いますから、担当者と相談しながら、何をどこまでお伝えするかを考えなければなりません。そのためにも、クライアントに関する情報は個々で持つのではなく、スタッフ全員が共有していなければならないのです。
情報が共有されていれば、例えば私が不在のときにお客様が来所されても、スタッフの誰かがお茶をお出しして、小一時間でもお相手することができるでしょう。その1時間が信頼関係にとって大変重要だと思います。
事務所基幹システムから顧問先自計化まで、MJSソフトをフル活用
―― 貴事務所は、顧問先の自計化にも力を入れていると伺っています。自計化にはどのようなソフトを導入されていますか。
當山 当事務所では主に、ミロク情報サービス(以下MJS)さんのシステムを導入しています。自計化用としては、「かんたんクラウド」や「iCompassNX」を主要ソフトとして使っています。自計化用ソフトは現在、約30社に導入いただいていますが、その95%はMJSさんのソフトです。
―― MJSのクラウドシステムについては、どのように評価されますか。
衞藤 「かんたんクラウド」を数件の顧問先が導入していますが、シンプルでとても使いやすいと、評判は上々です。
―― MJSとのお付き合いはどれくらいになるのでしょうか。
衞藤 前の事務所でMJSさんのシステムを使っていましたので、その流れで開業当初から導入しています。今、事務所の主軸システムは「ACELINK NX-Pro」になります。業種別オプションでは、建設、医療、公益法人など、会計オプションでは、キャッシュ・フロー計算書、他社データ取り込み、経営分析など、ラインアップが豊富ですから、大変重宝しています。
また、実務のほかに、先の所内における情報共有においても、「ACELINK NX-Pro」の事務所管理システムを導入しており、個々の日報や請求などの情報は全てシステム上でデータ管理しています。
今後の最大の課題は人集め いかに優秀な人材を掘り起こすか
―― 顧問先が約300件ともなると、戦略もまた変わってくると思いますが、今後はどのようにお考えですか。
衞藤 これからの一番の課題は、事務所の組織づくりだと思っています。つまり、人材の採用・育成です。今年(平成30年)の3月に、国税時代の後輩がひとり、東京から帰ってきまして、所属税理士として一緒に仕事をしています。現在税理士2名体制となり、将来の法人化を見据えています。
日本は少子高齢化社会ですから、今後も人材不足の解消は望めないでしょう。であるなら、人材集めにはそれなりの投資が必要だということです。会計事務所にとって人は財産ですからね。優秀な人がいないか、常にアンテナを張っています。特に東京から大分に戻ってくる人がいたら、真っ先にアプローチしたいと考えています。そのためにも、人材派遣会社などに登録して、いち早くそういった情報を入手できるようにしています。どれほどMJSさんのシステムが優れていても、動かすのは人ですから。
―― 戦略的には何を重視されていますか。
衞藤 情報の収集・分析なくして、戦略は立てられませんから、やはり情報を重視しています。人材にしてもツールにしても、常に最新の情報を集めることを心がけています。業界全体が人材不足の時代ですから、テクノロジーをうまく活用して、効率化を図っていくしかありません。それができなければ淘汰されてしまいます。これからはますますそのような時代になっていくのではないでしょうか。
―― 時代の変化を先取りして、一歩先を行くということですね。
衞藤 そうですね。一歩先くらいがちょうどいいと思います。あまり先に行き過ぎると、お客様もついてこられないし、私自身も方向性を見失う可能性があります。ですから、他事務所さんよりも一歩先に情報を手に入れて、新しいシステムが出てきたら真っ先に導入していきたいですね。
とにかく、今は情報を手軽に集めることができる時代です。それを放っておく手はありません。私のパソコンには1日100件くらいのメールが入ってきます。全てを読めるわけではありませんので、それらの要不要を仕分けるのが大変なくらいです。
―― 最後に、今後のビジョンについて、中期的な展望をお聞かせください。
衞藤 まずは人材への先行投資です。スタッフを増やしていこうと思っています。といっても急激に増やすのではなく、これまで通り年に1~2人、優秀な人材を採用していきたいと考えています。
といいますのも、現状、マンパワーが足りていないからです。お客様から呼ばれてもすぐには飛んでいけず、お待たせしてしまっている状況にあります。伸び代はあるのですから、人が増えればまだまだ大きくなれると思っています。
しかし、人員をそろえるだけではダメだと思います。いかに付加価値のある商品を生み出すか、お客様に提供できるかが重要ですので、人材ばかり集めても意味がありません。そのためにも、新しい技術を駆使して業務の効率化を図り、生産性のアップと付加価値の創造に取り組んでいきたいと思います。
また、相続案件も開業から10年経って、2年前に解禁しました。既に数件受注しています。税務調査の実績も徐々に積み上がってきています。相続事業の体制も整ってきましたので、今後はこちらにも力を入れていきたいと思っています。そして、最終的には、社名のとおり、中小企業の綜合経営パートナー事務所に成長していきたいと考えています。
ナンバーワンでななく、地域オンリーワンでいいのです。なぜなら、私たちは「日本一お客様に頼られる事務所」を目指しているわけですから。
―― 本日は大変貴重なお話をありがとうございました。大分綜合会計のますますの発展を祈念しています。
導入事務所様のご紹介
衞藤 勉(えとう・つとむ)
衞藤勉税務会計事務所 所長。株式会社大分綜合会計 代表取締役。税理士。昭和41年生まれ。33歳で国税を退職し、大分県内の会計事務所に入所。その後、税理士資格を取得し、平成18年に独立し、衞藤勉税務会計事務所設立。
衞藤勉税務会計事務所/株式会社大分綜合会計
所在地 | 大分県大分市大字畑中739番地1 |
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創業 | 平成18年6月 |
職員数 | 12名 |
得意分野 |
IT特化した経理指導・アウトソーシング事業の提案 医業特化事務所としての医業開業支援/決算対策による節税の提案、納得の納税 |
URL | http://www.oita-kaikei.com/ |
- 本事例の掲載内容は取材当時のものです。