導入事例

成和税理士法人 様

2019年6月26日

成和税理士法人 様

成和税理士法人は、広島県内に3拠点を構え、行政書士や社会保険労務士、中小企業診断士、司法書士といった複数の士業を展開する県内最大級の会計事務所である。創業者で代表の上中田成二氏は、顧客のニーズへの対応を追求することでサービスのラインアップを増やし、顧問先と組織を拡大し続けている。上中田氏に、その具体的な取り組みと、さらなる成長に向けた戦略について伺った。(写真撮影:市川法子)

広島県最大級の会計事務所グループ

―― 本日は、成和税理士法人の代表である上中田成二先生にお話を伺います。
成和税理士法人は、広島県呉市に広事務所と呉事務所、広島市に広島事務所の合計3拠点を構える、広島県最大級の会計事務所です。税理士法人のほかに、グループとして成和行政書士法人、成和中小企業診断士事務所、成和司法書士事務所、上中田社会保険労務士事務所があり、多角的かつワンストップ型の事業を展開しています。
まずは上中田先生のこれまでの足跡を振り返っていただけるでしょうか。

上中田 私が税理士試験に合格したのは27歳のときで、昭和57年1月に、ここ呉市の広地区で上中田税理士事務所を開業しました。
顧問先ゼロからのスタートでしたが、ご紹介でお客様を増やしていきました。

―― 27歳で開業というのは早いですね。

上中田 当時は重鎮の先生方がたくさんいましたから、金融機関と対等にお付き合いできるようになったのは、30代半ばくらいでしょうか。

―― それに合わせて規模も拡大していったのですか。

上中田 当時、都市銀行のひとつと仕事ができたことも大きかったと思います。
平成10年5月に、事務所を現在の場所(呉市広古新開)に移転しました。同年12月、上中田社会保険労務士事務所を開業しています。
税理士法人の設立と、呉事務所(呉市中央)の開設は平成16年5月です。
ここ広地区と、呉事務所のある呉市中央地区は、今はトンネルが開通していますが、当時は峠を越えて行き来していて、商圏が異なりました。街は中央地区のほうが大きく、あちらに進出したいと考えていたところ、知り合いの不動産鑑定士から売り物件の情報を得て購入しました。税理士も3人いたので、税理士法人にして呉事務所に行ってもらいました。
その2年後の平成18年5月に、広島事務所(広島市中区)を開設しています。平成20年12月には、成和中小企業診断士事務所を開業しました。広島事務所には税務署のOBの方を配置しています。広島事務所は拡張する予定で、そのときは呉事務所にいる税理士をひとり異動させます。

―― 現在のスタッフ数とクライアント数を教えていただけますか。

上中田 スタッフは60人、クライアントは、法人申告が約700件、他の業務も含めるとトータルで1000件くらいです。

―― 広島県内だけでなく、全国的に見ても他を圧倒する規模ですね。3拠点のなかで、マーケットとして一番大きいのはどこでしょうか。

上中田 以前は広事務所と呉事務所が6対4でしたが、現在は広島事務所です。
広島事務所の開設以降、ホームページからの集客も増えています。新規のお客様の数は、ここ数年で年間平均50件を超えています。既存のお客様で廃業される方もありますから、純増でいえば35件くらいでしょうか。
広島県全体で、年間2000~3000の新設法人があるとして、その2%でも数十件になります。特に広島市は人口が多いぶん、美容室や飲食店がたくさんあります。
さらに、クライアントの母数が増えたことで、ご紹介による新規のお客様も増えました。

顧問先のニーズに合わせてサービス体制を構築

―― 行政書士や中小企業診断士、社会保険労務士など、複数の士業が在籍する形になったのはいつごろですか。

上中田 私が40歳のときに、社会保険労務士の資格を取ってからです。

―― 上中田先生ご自身が、そのほかに行政書士、中小企業診断士の資格をお持ちです。顧客のニーズに応えるために必要だから取得され、それに合わせて資格者を採用していかれたのですか。

上中田 そうですね。例えば、行政書士は現在6人ほどいますが、主な業務は建設業の許可申請で、経営事項審査(経審)や産業廃棄物収集運搬の許可取得になります。

―― 経審では、どのように評点を上げるかがポイントになりますね。

上中田 はい。しかしこの地区には、それを提案できるところがありませんでした。
中小企業診断士も同様です。県や産業振興公社、保証協会の委託事業が数多くあります。報酬は低くても、その後のお客様獲得につながります。

―― 司法書士事務所もありますから、資産税・相続税の相談にも対応できますね。相続税の基礎控除が低減されたことで、広島ではどのくらい課税対象者が増えたのでしょうか。

上中田 倍になりました。それに伴い相続に関するご相談も増えたことから、「相続手続き相談室」を開設しました。広島・呉エリアで2000件以上の相談実績があります。

―― まさにワンストップサービスといえます。

上中田 それを意図したわけではなく、自然にそのようになりました。

―― 大都市圏には、外部と連携せず全て引き受ける事務所もありますが、地方では珍しいと思います。

上中田 少なくとも、この地区にはありませんね。

―― 顧問先の中小企業の事業承継支援についてはいかがですか。

上中田 M&Aは当初から手掛けています。今注目しているのは、特例事業承継税制です。長期間にわたってどう管理するかが問題だと思います。

―― リスクマネジメントとして保険代理店もしていますね。

上中田 はい。提携先のデータによれば、全国50以上の会計事務所のなかで5位でした。

―― 貴社のホームページを拝見すると、生命保険の営業職を対象にした確定申告サービスというのが興味深いですね。

上中田 あれは時間がかかるし、報酬も安いのですが、相続などのお客様のご紹介につながる面もあります。

―― 上中田先生は意図的ではないと仰いますが、中小企業の経営支援に軸足を置き、きちんと戦略を立ててそれを着実に実践しているという印象です。
それを一言で表現しているのが、ホームページに掲げられた「コンサルティング会計」という言葉でしょうか。

上中田 そういうことです。

イメージ写真2

地域に的を絞った ブランディング戦略

―― 上中田先生は、『―パラダイムシフト― 中小企業会計制度論』というご著書をこの地域でのみ販売されていますね。

上中田 はい。もともとは、販促用として銀行に配るためのものです。

―― これは、地域での知名度を高めるブランディング戦略の一環でしょうか。

上中田 戦略というわけではなく、結果的にそうなったということです。

―― 集客につながるホームページにも力を入れていらっしゃいますね。

上中田 はい。SEO対策などにもコストをかけています。近日中に、もっとお客様を呼び込めるようなものに入れ替える予定です。

―― これらの取り組みは、この地域に成和ブランドを浸透させるという意味で大きいですね。

上中田 はい。

今後の成長のカギとなる自動化とBPO受託

―― 事務所のさらなる発展に向けて、解決すべき課題があればお聞かせください。

上中田 人手不足で採用が難しい昨今、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、すなわち自動化に取り組む必要があります。
また、製販分離などにより業務効率を上げる必要もあるでしょう。
例えば、社会保険労務士の業務はほとんどRPAで自動化できます。

―― 給与計算や総務などの業務を受託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)ですね。

上中田 はい。このニーズは中小企業にも絶対にあります。今は500人規模の会社が多いのですが、50人クラスの会社からの発注もどんどん増えるはずです。
そうすれば、例えば何人かいる総務担当、給与計算担当をひとりに減らし、他は営業部門に回すといったことができます。

―― BPO業務を受託する場合、税務に比べて高額な報酬も見込めます。顧問料と区別するために、別会社を立ち上げる必要もありますね。

上中田 仰るとおり、そこがポイントです。

創業時から合理化と生産性向上にITを活用

―― 上中田先生は、開業のころから事務所の合理化、生産性の向上に着目し、積極的にITを活用されているとお聞きしています。

上中田 はい。当事務所では、開業当初からミロク情報サービス(以下、MJSと表記)のシステムを導入し、利用し続けています。
きっかけは、独立前に勤めていた事務所でMJSの製品を使っていたことです。

―― 現在はどのような製品を導入・利用されているのですか。

上中田 最新版の「ACELINK NX-Pro」をフル装備で入れています。
自計化ソフトとしては、「iCompassNX」や「記帳くん」がトータルで100社以上のお客様に導入されています。
「ACELINK NX-Pro」は、クラウド環境でも稼働することができるそうなので、そちらに切り替える予定です。
また、当事務所は「mmap(MJS M&Aパートナーズ)」に加盟していますから、事業承継支援で積極的に活用したいと考えています。
先ほど申し上げたように、仕事が増えても人を増やせないとなると、今の人数で倍の仕事をこなすためにテクノロジーの活用は必須となります。
ですから、MJSさんには業務の自動化を実現する製品をはじめ、さまざまな新商品をこれからもどんどん開発してほしいとリクエストしています。

地域で圧倒的なナンバーワンを目指す

―― 最後に、3年後、5年後の中長期的な成長戦略をお聞かせください。

上中田 繰り返しになりますが、RPAによる自動化、製販分離による効率化を進めていきます。
そのうえで、給与計算や助成金申請、働き方改革支援などの業務をどんどん受注していきたいと考えています。これらは宝の山といえます。

―― 拠点拡大についてはいかがですか。

上中田 私は自分の行動範囲を1時間圏内と決めているので、これから進出するとしたら、隣接する東広島市でしょうか。東広島市には大きい会計事務所もありませんし、東広島呉自動車道の整備が完了すれば、30分で行けるようになります。

―― 呉市を中心とした近隣地域に集中して出店していき、地域内でナンバーワンを目指すという戦略でしょうか。

上中田 そのとおりです。
しかし、私自身は正直に言うと引退したいところです。各事務所は在籍する資格者に任せて、私の代わりにバリバリ稼いでほしいですね(笑)。

―― 上中田先生は大変ユニークなキャラクターだと思います。

上中田 そうでしょうか。自分では分かりませんが。私は税理士会にも他の事務所にも行かないので、よそのことを知らないのです。

―― 今日伺ったお話は、会計事務所の今後の方向性を示唆しています。成長戦略を立てて、きちんと結果を出しているところに説得力があります。

上中田 ありがとうございます。

―― 本日は貴重なお話をありがとうございました。貴社のますますの発展を祈念しています。

導入事務所様のご紹介

上中田 成二(うえなかだ・せいじ)

成和税理士法人代表税理士。税理士。中小企業診断士。社会保険労務士。行政書士。昭和30年生まれ。広島県呉市出身。立命館大学大学院経営管理研究科修了。昭和57年、上中田税理士事務所開業。平成10年、本店事務所を呉市に移転。平成16年、税理士法人設立。著書に『―パラダイムシフト― 中小企業会計制度論』がある。

成和税理士法人

成和税理士法人
所在地

〈広事務所〉
広島県呉市広古新開1-2-40

〈呉事務所〉
広島県呉市中央6丁目1-15 成和ビル4F

〈広島事務所〉
広島県広島市中区中町2-24 KUBビル3F

代表者 上中田 成二
設立 昭和57年1月
構成人数 職員数60名
主な業務 会計、税金、経営計画、給与計算、社会保険、経営、相続・贈与、保険
URL http://www.seiwa-tax.com/
  • 本事例の掲載内容は取材当時のものです。

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