売上急減で資金繰りがひっ迫する卸売会社。受注の際に最優先した判断基準とは?

2022年2月23日

小売業

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2021年06月23日

質問

「Miroku販売」は売上が急減し、追加借入も難しい状況で、資金繰りがひっ迫していますが、得意先S社に調理機器の提案を考えています。在庫として保有している利幅の小さい中級機(商品X)、在庫はないが利幅が大きい高級機(商品Y)のいずれかです。あなたが経営者なら次のうちどれをとりますか?

パターン1

在庫として保有している利幅の小さい中級機(商品X)を提案する。

パターン2

在庫はないが利幅が大きい高級機(商品Y)を提案する。

パターン3

商品X・商品Yの両方を提案する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
包丁
台所

窮地を何とか乗り切った卸売会社

「Miroku販売」は今年で創業8年目を迎えた、飲食店向けの調理機器の卸売会社です。2年前、売上急減で資金繰りがひっ迫して窮地に陥っていましたが、何とか乗り切ることができたお陰で今のMiroku販売があると言えます。

2年前~非常事態発生で資金繰りがひっ迫

Miroku販売は創業6年目で、創業以来順調に売上・利益を安定して計上してきました。
ところが2年前、世界的に感染症が拡大する中、我が国でも政府や都道府県から不要不急の外出は自粛するよう要請が出されました。これに伴いMiroku販売の取扱商品も売れなくなり、売上急減に見舞われてしまったのです。


この非常事態の発生で急速に業績が悪化し、現預金残高が大きく目減りしてしまいました。借入で何とかしのいできたものの、これ以上の借入は難しい状況で資金繰りがひっ迫しています。そんな中で、得意先S社から商品の大口注文の打診が来ています。条件に合致する商品としては、在庫として保有している利幅の小さい中級機(商品X。売価1,000万円)と、在庫はないが利幅が大きい高級機(商品Y。売価1,300万円)があります。なお、商品Yの仕入代金(1,000万円)は仕入時現金払いであり、S社からの販売代金の回収は納入の翌月末の条件となっています。

営業課長 パターン1の商品Xなら、在庫がありますからすぐに対応できます
営業部長 でも、商品Yの方が売上は3割、利益は5割も大きくなるぞ。商品Yを現金払いですぐに仕入れた上で売却した方がいいのでは?
営業課長 商品X・商品Yのどちらも提案してみるって選択もあるでしょうが……

図表1

厳しい経営環境の中での大口注文の打診に営業部内でも結論が出ず、Miroku販売では社長も交えて対応を検討することになりました。


質問

「Miroku販売」は売上が急減し、追加借入も難しい状況で、資金繰りがひっ迫していますが、得意先S社に調理機器の提案を考えています。在庫として保有している利幅の小さい中級機(商品X)、在庫はないが利幅が大きい高級機(商品Y)のいずれかです。あなたが経営者なら次のうちどれをとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

在庫として保有している利幅の小さい中級機(商品X)を提案する。

パターン2

在庫はないが利幅が大きい高級機(商品Y)を提案する。

パターン3

商品X・商品Yの両方を提案する。

Miroku販売の社長が優先したのは在庫として保有している商品Xを提案することでした。商品Xを受注した場合、売上や利益はパターン2より少なくなるにも関わらず、何故この案を優先することにしたのでしょうか?

パターン2を選択した場合、売上や利益はパターン1よりは大きくなります。しかし、今月1,000万円の支払が先行することになり、来月末に代金1,300万円が回収できるまでは、資金繰りを一段とひっ迫させることになります。また、商品Xの在庫保有リスクが残ります。

得意先に幅広い選択肢を提供することは望ましいことです。しかし、今は資金繰りを優先した方が良いでしょう。


この非常事態に優先すべき案は?

Miroku販売では、社長、営業部長、経理部長らで対応を検討することになり、営業部長からは、3つの案による今月の業績への影響が説明されました(上記【表1】参照)。

営業部長 今の当社の厳しい状況ですと、少しでも売上・利益を挽回したいところです。パターン1なら保有在庫で対応はできるのですが、パターン2で対応できればとは思っているのですが……
社長 そうだな……。パターン2なら、売上も利益も増やせるから一番魅力的だな
経理部長 営業部長、もう少し詳しく教えて欲しいんですが

そして、営業部長にいくつか質問し、次のような表を作成したのです。

図表2

社長 経理部長、説明してくれるかい
経理部長 はい。こちらの表は、先程営業部長から提示された【表1】(今月の業績への影響】に、「現預金増減」を追記したものになります。まず、今月の現預金増減ですが、パターン1は増減なしなのに対して、パターン2は1,000万円の現預金減少となります
社長 えっ、パターン2だとそんなに現預金が減ってしまうのか!
経理部長 今、当社では少しでも現預金を確保しておかなければならない状況ですので……
社長 売上や利益のことばかりに頭が行っていて、資金繰りへの影響が抜け落ちていた。今は目先の利益より、資金繰りを最優先に考えないとな!

結局、このときはパターン1を選択し、何とか資金をつないで非常事態を乗り切ることができたのでした。


ワンポイント解説

「資金繰りへの影響」

企業経営では、売上や利益の獲得を目指すのは確かに重要です。しかし、資金繰りがひっ迫している状況では、業績よりも資金繰りを優先する必要があり、資金繰りへの影響を考慮して受注を検討する必要があるでしょう。
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