倒産注意の会社を見破る方法(3)! 資産、負債、純資産、大きいほど安全なのはどれ?
2022年7月23日
質問
営業部長が営業部の「みろく主任」に質問しています。B/Sの資産、負債、純資産の中で、金額が大きいほど会社が安全だと言えるのはどれでしょうか?
パターン1
資産が大きいほど安全だと言える。
パターン2
負債が大きいほど安全だと言える。
パターン3
純資産が大きいほど安全だと言える。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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営業部の若手に、決算書の読み方を指導する営業主任
ミロク商事の営業部の「みろく主任」が、若手の営業部員を前に与信管理のレクチャーをしています。
みろく主任 | 取引先のB/SとP/Lから安全性を分析するときは、まずは流動比率と当座比率だ |
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若手営業部員 | はい、分かりました。で、次は何を分析すれば良いのでしょうか? |
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みろく主任 | 次は、B/Sの資産、負債、純資産に注目する |
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若手営業部員 | 注目して、どうすれば良いのでしょうか? |
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みろく主任 | この中で一つだけ、金額が大きいほど安全だと言えるものがあるんだ。どれだと思う? |
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みろく主任の指導ぶりを見ながら、営業部長が微笑んでいます。今でこそ、部下に財務的な安全性の分析を指導できるようになったみろく主任ですが、ほんの1年前は全くB/SとP/Lが読めなかったのです。
会社が倒産するのはいつか?
1年前のある日のこと。みろく主任が、取引先のB/SとP/Lを見ながら、営業部長に説明していました。
みろく主任 | 部長。この取引先は流動比率も当座比率も高い水準にありますから、安全性に問題はなさそうに思います |
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営業部長 | 確かに、流動比率と当座比率はいいな。だが、実は、この会社はちょっと危ないぞ |
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みろく主任 | えっ、どこが危ないんですか? |
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営業部長 | このB/Sの資産、負債、純資産の金額を見てみろ。分かるか? |
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みろく主任 | えっ? 何が分かるんですか? |
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営業部長 | 分からんか。では、ちょっとヒントを出そう。会社が倒産するのはいつだ? |
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みろく主任 | えっ、倒産するのは……、赤字になったときでしょうか? |
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営業部長 | う~ん……。まぁ、1日じっくり考えたまえ |
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質問
営業部長が営業部の「みろく主任」に質問しています。B/Sの資産、負債、純資産の中で、金額が大きいほど会社が安全だと言えるのはどれでしょうか?
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パターン1
資産が大きいほど安全だと言える。
パターン2
負債が大きいほど安全だと言える。
パターン3
純資産が大きいほど安全だと言える。
確かに資産が大きいほど、会社の規模が大きいわけですから安全なように思えます。しかし、資産が大きくても、それに併せて負債も大きかったら危険です。負債が払えなかったら倒産ですから。
確かに負債、特に借入金が大きすぎる場合、銀行は損失が大きくなるため、大きすぎてつぶせないなどと言われることがありますが、それをもって安全だとは言えないでしょう。
実は営業部長の答えはパターン3でした。純資産が大きいほど安全なのはなぜでしょうか……。
何でも知っている妻には、秘密があった!
部長から質問された日の夜。みろく主任が自宅で妻と食事をしているとき聞いてみました。妻はみろく主任とは会社の同期の女性で、新卒研修で知り合って結婚したのです。
みろく主任 | ところで、君は会社が倒産するのはどういうときか知ってるかい? |
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妻 | どうしたの? まさかうちの会社やばいんじゃないでしょうね! |
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みろく主任 | いやいや、一般的な話だよ。うちの会社は問題ないよ。今のところはね |
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妻 | 良かったわ。会社が倒産するのは、銀行の借入が返済できなかったときよ。つまり、負債を支払期日に払えなかったときね |
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みろく主任 | えっ、赤字になったときじゃないのか? |
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妻 | 何言ってるのよ。赤字になったら倒産だったら、日本中のほとんどの会社が一度は倒産してるわよ |
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みろく主任 | 確かにそうだ |
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妻 | だから、B/Sの負債が大きい会社は危ないわよ |
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みろく主任 | じゃあ、資産が大きければ大きいほど安全ってことかい? |
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妻 | 資産が大きくても、負債が大きかったら危ないわ |
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そう言いながら、妻は紙にB/Sの絵を描いて説明し始めました。
妻 | この会社は資産が100、負債が70、純資産が30でしょ。左側の資産と右側の負債と純資産の合計は必ず一致するのよ |
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みろく主任 | なるほど。確かに100で一致しているね |
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妻 | この借入金、つまり負債が払えなかったら倒産よ |
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みろく主任 | 純資産を払えなかったらどうなるんだ? |
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妻 | 純資産は負債と違って支払期日がないのよ。資本金は株主に払い戻さないでしょ |
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みろく主任の心の声 | <そうか。資産は、負債と純資産の合計と一致していて、負債を払えなかったら倒産。だから負債が大きいほど危ないということか> |
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翌日。みろく主任が営業部長に話しかけました。
みろく主任 | 部長。昨日の答えが分かりました。会社が倒産するのは負債を払えなかったときです。ですから、負債が大きいほど危ない。逆に言えば、純資産が大きいほど安全ということですね! |
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営業部長 | その通りだ! よく分かったな。資産合計に対して、純資産が大きいほど安全というわけだ。これが、「純資産÷資産合計」で算出される、自己資本比率だ |
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みろく主任 | なるほど。自己資本比率は何%ぐらいあれば安全なのですか? |
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営業部長 | 業界や利益の水準によっても違うから一概には言えないが、30%以上は欲しいと言われることもあるな |
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みろく主任 | 早速、取引先の安全性の分析をするとき、流動比率と当座比率だけでなく、自己資本比率も分析するようにします! |
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営業部長 | それにしても、よく1日で答えが分かったな。本当に、君は財務のセンスがある良い女性と結婚したな! |
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みろく主任 | えっ、妻に教えてもらっていたって知ってたんですか? |
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営業部長 | それぐらい想像つくよ。なぜなら、彼女は以前、私の部下だったんだから |
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みろく主任 | 知らなかった…… |
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ワンポイント解説
「自己資本比率」
「自己資本(純資産または株主資本)÷資産合計」より算出される財務的な安全性の指標であり、返済義務のない自己資本が負債に対して大きいほど倒産のリスクが少ないと考えられます。一般に自己資本比率は30%以上が望ましいと言われます。
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