法人(企業)の課税所得とは? 税引前利益との違い、計算方法など
2022年10月3日
質問
中華飯店チェーンの「弥勒軒」は、コロナ禍において助成金や給付金等を受領しましたが、これらが課税所得に入ると耳にした社長は経理部長に、「課税所得とは何か」と尋ねました。あなたが経理部長なら何と答えますか?
パターン1
課税所得とは、「売上高」のことである。
パターン2
課税所得とは、「収益-費用」のことである。
パターン3
課税所得とは、「益金-損金」のことである。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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課税所得について理解したことで、納税額を意識するようになった!
中華飯店チェーン「弥勒軒」の社長は、課税所得の基本を理解したことで、最近では納税額についても意識するようになっています。
社長 | 経理部長。例の取引で課税にどんな影響があるのか検討して報告してくれるかな |
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しかし、以前の社長は課税所得のことが全く分からない状態だったのです。
1年前 ~コロナ禍で助成金や給付金を受領
東京下町でチェーン展開する弥勒軒は、5店舗で経営する中華飯店です。開業して20年ほど経過した頃、新型コロナウイルス感染拡大の影響で一気に厳しい経営環境に陥りました。その間、国や東京都からの雇用維持に関わる助成金や事業継続を支える給付金等を受領することができ、何とか事業を継続してきました。
そんなある日、知り合いの経営者仲間と話していたときのことです。
経営者仲間 | うちはコロナ禍で助成金や給付金を受けることができて何とか持ちこたえることができてますよ |
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社長 | うちもですよ。本当にありがいです |
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経営者仲間 | でも、これらの助成金や給付金って税金がかかるでしょ |
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社長 | えっ、税金がかかるんですか? |
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経営者仲間 | 課税所得に入りますからね……。まぁ、今日はそんなことは忘れて、おいしい食事を味わいましょう! |
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このとき、弥勒軒の社長は「課税所得」のことがよく分からず、経営者仲間の言ったことが理解できていなかったのですが、聞くタイミングを逸してしまったのです。
そして後日、社長はこのときのことを経理部長に話してみたのです。
社長 | この間、経営者仲間と話したときに、助成金や給付金の話が出てね。「カゼーショトク」に入るから税金が気がかり……みたいな話があったんだ |
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経理部長 | はい |
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社長 | そもそもカゼーショトクって何のことかよく分からなくて…… |
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質問
中華飯店チェーンの「弥勒軒」は、コロナ禍において助成金や給付金等を受領しましたが、これらが課税所得に入ると耳にした社長は経理部長に、「課税所得とは何か」と尋ねました。あなたが経理部長なら何と答えますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
課税所得とは、「売上高」のことである。
パターン2
課税所得とは、「収益-費用」のことである。
パターン3
課税所得とは、「益金-損金」のことである。
売上高も課税所得の計算に影響することは確かです。しかし、売上高自体が課税所得ではありません。
収益や費用も課税所得の計算に影響することは確かで、課税所得が「収益-費用」と近い金額になることもあります。しかし、「収益-費用」そのものではなく、そこに必要な調整が行われることになります。
課税所得とは「益金-損金」のことを言います。「収益-費用」とは違うのですが、どういうことかと言うと……
課税所得とは? 税引前利益との違いは?
社長から「カゼーショトクって何のことかよく分からなくて……」と言われた経理部長は、課税所得について説明し始めました。
経理部長 | カゼーショトクと言うのは、漢字で書くと「課税所得」です。会社に課税される法人税の場合で言いますと、納付する税金を計算するときには、まず課税所得、つまり課税する元になる所得を計算するんです。その上で課税所得に税率をかけて税額を計算することになります |
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社長 | 課税所得ってのは利益とは違うのか? |
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経理部長 | あぁ、ま、利益みたいなもんですけど、正確に言うと利益ではないんです |
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社長 | へぇ? うちの損益計算書を見ると、税引前利益から税金を引いて純利益を計算しているよね? この利益に対して税額が決まるのだと思ってたが…… |
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経理部長 | 税金の計算では、ちょっとだけ違うんですよ。売上や手数料などは『益金』と言い、材料費や人件費や支払家賃などは『損金』と言います |
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社長 | それって、収益と費用を言い換えただけなんじゃ? |
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費用と損金の違い、収益と益金の違い
社長の疑問に対して、経理部長は答えます。
経理部長 | いえ、益金は必ずしも収益と同額ではなく、損金も費用とは必ずしも同額ではなくて、ズレが発生することがあるんですよ |
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社長 | どういうことだい? |
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経理部長 | 以前税金の計算のときに、交際費を全額費用にできなかったことがありましたよね、覚えてますか? |
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社長 | あ、そうだね。何年前だったっけ? 領収書があって費用なのに、費用ではないって言われて不思議に思ったんだ |
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経理部長 | そうです、そうです。あのときのことがいい例です。領収書があるのに『費用』にならない、ということを、正式には『損金に算入しない、損金不算入』と言います |
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社長 | なんでそうなるんだい? |
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経理部長 | 税金の計算の仕方は、法令などで決まっています。それに基づいて、売上高などの益金と、材料費や人件費や支払家賃などの損金について、計算対象の範囲や上限額が決められています。そのため、損益計算書の収益や費用とは金額が違うときがあるんです |
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社長 | あ、だからズレが発生するんだね? とすると、式で言うと……、メモ用紙、メモ用紙と。『収益≠益金、費用≠損金』と、こう書けそうだね |
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経理部長 | そうです! |
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社長 | それで、損益計算は……『収益-費用=利益または損失』と書ける。税金の計算は『益金-損金=』と、ん? えーっと…… |
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経理部長 | それが『課税所得』です。『益金-損金=課税所得』と書けます。これを税務計算と言います |
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社長 | あ、それで『収益≠益金、費用≠損金』だから、損益計算の利益と税務計算の課税所得の金額は違うことになるわけか! |
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課税所得の計算方法
さらに経理部長は課税所得の計算方法について説明していきます。
経理部長 | ただし、収益と益金、費用と損金は重なるところが大きいので、課税所得を計算するときは「収益-費用」で利益を出し、それに加算・減算の調整を入れて課税所得を計算しているんです。例えば交際費など費用だけれども損金にならないものは加算調整するといった具合です |
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社長 | そういうことだったのか |
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こうして社長は、何とか課税所得のことはザックリと分かったようです。
社長 | で、助成金や給付金は、えーっと、どうなるんだい? まさか課税所得には入らないよな? |
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経理部長 | いいえ、益金になります。「益金-損金」がマイナスならともかく、「益金-損金」がプラスだと、それに対して税金がかかってしまいます。うちは資産売却などで利益を出してますし、助成金や給付金に税金がかかるはずです |
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社長 | そうだったのか。助成金や給付金には税金はかからず、まるまる手許に残るものとばかり思っていたが、違ったのか……。経営者仲間が言っていた「税金が気がかり」とは、このことだったのか! |
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ワンポイント解説
「課税所得の基本」
会計における損益計算は「収益-費用=損益」と計算する一方、税務計算では「益金-損金=課税所得」となるため、損益計算の損益と、税務計算の課税所得にはズレが発生することがあります。
このため、課税所得は「会計上の損益+加算調整-減算調整」といった形で計算されます。
<加算調整項目の具体例>
◆益金算入=会計上は収益ではないが、税務上は益金となるもの
(例)引当金の取崩額、売上高等の計上もれなど
◆損金不算入=会計上は費用だが、税務上は損金とならないもの
(例)税務上の限度額を超える交際費、寄付金、減価償却費など
<減算調整項目の具体例>
◆益金不算入=会計上は収益だが、税務上は益金とならないもの
(例)受取配当金、法人税の還付金など
◆損金算入=会計上は費用ではないが、税務上は損金となるもの
(例)売上原価等の計上もれ、所得の特別控除など
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