コスト削減に貢献! 消費者のコストを意識したサービス作りとは?
2022年11月13日
質問
「ミロクスポーツクラブ」は、せっかく入会した会員が短期間で辞めてしまう上、最近会員数が少しずつ減ってきているため、チラシ等の配布を増やしています。これにかかる人件費を抑制し、無駄な広告宣伝費を削るために、あなたが経営者なら次のうちどの方法をとりますか?
パターン1
会員とのコミュニケーションに力を入れて、会員を囲い込む。
パターン2
チラシやティッシュは用意せず、社長自らが店頭で呼び込みを行う。
パターン3
チラシやティッシュ配りにかける費用1年分で、目立つ看板を作って店舗付近に出す。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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和気あいあいとしたフィットネスクラブ
「ミロクスポーツクラブ」は、駅近くに比較的小規模の店舗を複数経営しているフィットネスクラブです。多くの人が健康や美容を目的としてこのミロクスポーツクラブに入会しています。
今日は、ミロクスポーツクラブ会員限定のハイキングイベントの日です。会員の中で希望者を募って休日に近隣の山に登り、親交を深めるのが目的です。
トレーナーA | みなさん、ようやく頂上に着きました! |
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会員A | 大変だったけど大勢で登ると何とかなるものね。1人だと絶対こんなことしないよ |
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会員B | それを言うなら、我ながらよくこのフィットネスクラブに通い続けているなと思うよ |
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トレーナーB | これからもみんなで励まし合って健康的に生活していきましょう! |
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1年前 ~会員の入れ替わりが激しくて無駄がある状態
定期的にチラシやティッシュを配ったりすることで新規会員を獲得するミロクスポーツクラブ。会員の入れ替わりは激しいですが、会員数は概ね横ばいを保っていました。「運動不足解消のために入会しても、続かずに辞めてしまう人が出てくるのはある程度仕方がない。フィットネスクラブとはそういうものだろう」と社長は考えていました。
ところが、最近その会員数が少しずつ減ってきているため、何とか新規会員を増やそうとチラシやティッシュ配りの回数を増やしています。
そんなある日、社長が某店舗に立ち寄った時、トレーナーたちの会話が耳にとまりました。
トレーナーA | 2カ月前に入会されたSさんもTさんも、辞めちゃったんだね |
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トレーナーB | 職場の近くにあるフィットネスクラブに入会するらしいよ |
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トレーナーA | そっか。あーあ、せっかく顔と名前を覚えたのに |
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トレーナーB | 1年以上続けてくれる人ってやっぱ少ないよね。入れ替わりが激しいと、こっちも新しい会員を覚えていくのが大変だし |
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トレーナーA | どんどん新しい人を呼び込まないと立ち行かないのは分かるけど、無料で配ってるチラシやティッシュだってタダじゃないだろうに。何とかならないかな |
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トレーナーB | でも新しく入会してくれる人たちの中には、長く続けてくれる人も何人か入るわけだから地道に頑張るしかないね |
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会員の多くが短期間で辞めてしまう上、最近会員数が減ってきたために、以前より積極的にチラシやティッシュを配って広告宣伝活動を行うミロクスポーツクラブ。しかし、トレーナーが言うように、会社は広告宣伝費、さらにはトレーナーへの時間外給与を負担しています。その上、業務にあたるトレーナーたちからも不評とあって、流石の社長も広告宣伝の方法を再度検討しようという気持ちになりました。
社長の心の声 | <会員数は横ばいで何とか経営できているけど、仕方がないなんて言っていたらダメだな。もっといい方法がないのかもう一度考えてみよう> |
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質問
「ミロクスポーツクラブ」は、せっかく入会した会員が短期間で辞めてしまう上、最近会員数が少しずつ減ってきているため、チラシ等の配布を増やしています。これにかかる人件費を抑制し、無駄な広告宣伝費を削るために、あなたが経営者なら次のうちどの方法をとりますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
会員とのコミュニケーションに力を入れて、会員を囲い込む。
パターン2
チラシやティッシュは用意せず、社長自らが店頭で呼び込みを行う。
パターン3
チラシやティッシュ配りにかける費用1年分で、目立つ看板を作って店舗付近に出す。
会員とのコミュニケーションに力を入れて、顧客囲い込み作戦をとることにした社長。なぜこのように考えたのかと言うと……
トレーナーではなく社長自身が動くことで人件費は削減できますし、トレーナーたちに本来の業務に専念してもらうこともできます。しかし、トレーナーが複数人で行っていた時間と同じだけの時間を、店頭での呼び込みのために社長が割くことはできません。社長がやるべきことは他にあるはずです。また何らかのノベルティがなければ見向きもされない可能性があります。会員総数の減少が予想されます。
今負担している広告宣伝費と人件費の1年分で、目立つ看板を作って店舗付近にその看板を出せば、駅近くという立地も相まって、多くの人に見てもらえるかもしれません。しかし、駅近くだからこそ他の多くの看板に埋もれてしまう可能性があります。本当に看板を出すことが、効果的な広告宣伝活動なのかを見極める必要があります。
広告宣伝費と居酒屋のアルバイトの意外な共通点
ミロクスポーツクラブの社長が、仕事帰りに馴染みの居酒屋に立ち寄った時のことです。店の壁に『アルバイト募集中(賄い付)』と書かれた紙が貼られているのを見て、社長は居酒屋の店長に話しかけました。
社長 | 前にも新しい人が入ったばかりじゃありませんでした? |
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居酒屋の店長 | そうなんですけどね、私が不愛想だからか彼1カ月で辞めちゃって……。だから今度は一緒に賄いでも食べようかと思ってるんです。求人情報サイトにも掲載してるんですが、なかなか応募が来なくて困ってますよ。掲載料金もバカにならないしねえ |
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社長 | 確かに、広告代ってバカにならないんですよねえ |
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社長は店長の言葉にしみじみと相槌を打ちました。
居酒屋の店長 | やっぱり長く働き続けてもらった方が、採用のお金もかからないし、教える手間も省けるしで、一石二鳥ですね |
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社長 | そうですね、長く働いてもらった方が……ってそっか! 長くいてくれた方がお金がかからないんだ!! |
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居酒屋の店長 | だからさっきからそう言ってるんですって |
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社長 | 店長さんありがとう! ビールおかわりください! |
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これまで会員が辞めていくのはある程度仕方がないと割り切って、新規会員獲得にコストをかけてきましたが、既存の会員を囲い込むことで、新規会員獲得にかけてきたコストを削減できる可能性があることに気が付いた社長。
そこで、長く会員でいてもらうためにどうすればいいのか、顧客目線で考えてみることにしました。まず、退会の理由を考えてみたところ、
・他のフィットネスクラブの方が通いやすい場所にある
・他のフィットネスクラブの方が設備やメニューが充実している
・ミロクスポーツクラブにあえて留まるほどの理由がない
などがありました。場所や設備は簡単に手を付けられる項目ではありません。そこでまず、会員が留まる理由をこちらから作ってみようと考えました。
できるだけ会員とコミュニケーションを取るようにトレーナーに呼びかけたり、会員限定の交流イベントを企画したりと、人間関係を構築することで退会時の心理的な負担を生み出し、会員が辞めにくい状況を作りました。
他のフィットネスクラブに切り替える際に会員が負担に感じるスイッチングコストを高く設定することにしたのです。
チラシやティッシュ配りにかかっていたコストを削減できる一方、今度は会員を囲い込むためのコストがかかるようになりましたが、会員を対象としたサービスを充実させる方が対象が限られているため、入会してくれるとは限らない不特定多数を相手に広告宣伝活動をするよりも、無駄がなく、以前よりコストも抑えられています。
また、入会期間に応じて特典を付けたり、ポイント制を導入したりすることもスイッチングコストを高める効果が期待できるので、今後の会員の動向と採算を見ながら慎重に進めていく予定です。
他方、入会を躊躇する理由には何があるかも考えてみたところ
・入会費や月会費の金銭的な負担
・入会手続きや退会手続きが面倒
などがありました。
そこで会員になるハードルを低くするために、面倒な契約手続きは電子化して、可能な限り簡便にできるようにしました。また、これまでは年に数回期間限定で入会費を無料にしていたところ、思い切って入会費はなくし、初月会費を無料にしました。トレーナーがチラシを配ることよりも、できるだけ多くの人に体験してもらい、気軽に会員になってもらえるような状況を作る方が新規会員を獲得するには効果的だと考えたのです。
こうしてミロクスポーツクラブは、新規会員獲得のための手を打つ一方で、顧客の囲い込み作戦により無駄なコストを削減しました。おまけに会員を囲い込むことで収入の安定性が増し、退会に伴う事務手続きが減る、といった効果をも手にしました。
ワンポイント解説
「スイッチングコスト」
利用している商品やサービスを他社のものに切り替える際に発生する経済的・物理的・心理的な負担のことを言います。スイッチングコストが低ければ他社の商品やサービスに切り替えやすく、高ければ切り替えにくくなります。また、高過ぎると新規参入を減らしてしまうおそれもあります。
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