客の財布のひもが緩むと売上が減る弁当屋。売上安定のヒントはおせち料理にあった!?

2022年12月23日

質問

オフィス街でビジネスパーソン向けのランチ弁当を販売している「弁当ミロク」。現在は、どの弁当も500円なのですが、給料日に向けて売上が増えていく一方、それを過ぎると売上が減少してしまっています。月間を通して毎日安定した売上が上がるようにするため、あなたが社長なら次のうちどの方法をとりますか?

パターン1

800円と650円の弁当を追加する。

パターン2

500円の弁当を800円に値上げする。

パターン3

毎日弁当の価格を変動させる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

キッチンカー
おせち

毎日行列ができる弁当屋

「弁当ミロク」は都心のオフィス街で働くビジネスパーソンを対象に移動販売車でランチ弁当を販売しているお弁当屋さんです。今では、月間を通して毎日安定した売上が上がるようになっていますが、2年前までは違っていました。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。

2年前 ~給料日前後で売上が激変!

現在の弁当ミロクの弁当はどれも500円。コストパフォーマンスが良いと、近隣で働くビジネスパーソンに好評で、お小遣いが減っていく給料日に向けてお客様が増えていくのですが、給料日を過ぎるとパッタリお客様が来なくなります。

給料日直後のある日のことです。

社長 みんなお疲れ様でした。今日の弁当の売れ行きはどうだった?
販売員 昨日までがウソのように売上が減ってしまいました……
社長 うーん、今月もか。給料日を過ぎるとみんなちょっと高めのランチを食べに行っちゃうから、うちは売上が一気に減ってしまうんだな……

社長は頭を悩ませていました。

社長の心の声 <給料日を迎えて財布に余裕があるときの客単価を高めれば、給料日後の売上を増やせるんじゃないだろうか。650円くらいの価格帯の弁当が売れるといいんだけど……>

質問

オフィス街でビジネスパーソン向けのランチ弁当を販売している「弁当ミロク」。現在は、どの弁当も500円なのですが、給料日に向けて売上が増えていく一方、それを過ぎると売上が減少してしまっています。月間を通して毎日安定した売上が上がるようにするため、あなたが社長なら次のうちどの方法をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

800円と650円の弁当を追加する。

パターン2

500円の弁当を800円に値上げする。

パターン3

毎日弁当の価格を変動させる。

実は、弁当ミロクの社長が選択したのはパターン1でした。650円の価格帯の売上が上がるように、650円の弁当だけでなく、より単価の高い800円弁当を投入する理由とは……

確かに500円の商品を800円に値上げすると収益率が上がりますので、値上げ以前と同様の数量が売れれば利益が増えることになります。しかし、単なる値上げの場合、お客様に受け入れてもらえず客数の減少につながる可能性があるので、注意が必要です。

毎日弁当の価格を変動させれば、財布のひもが堅くなる頃と緩くなる頃で価格を変えたり、天気によって価格を変えたりして、売りたい価格に誘導できるかもしれません。しかし、毎日価格が変動するとお客様は混乱してしまい、買いにくくなってしまうかもしれません。

客単価を上げるヒントはおせち料理にあった!

弁当ミロクの社長が客単価を上げる良い方法がないものかと考えながら帰宅すると、妻が話しかけてきました。

お正月が近づいてきたから、おせち料理を選ぼうと思って。おせち料理のチラシ見てたところなの
社長 おー、おいしそうなのが並んでいるじゃないか
松・竹・梅ってあるんだけど、どれにする?
社長 こうやって並んでると、やっぱりこれかな

そう言って指をさしたのは“竹”のおせちでした。

社長 “梅”だとちょっと物足りないし、“松”だとちょっとぜいたく過ぎるからね
そうよね! 真ん中取って“竹”で決まり!

このとき社長は思いました。

社長の心の声 <松竹梅と並んでいたら“竹”を選びやすくなる……。でも、うちは今は500円弁当の“梅”だけということか……>

早速、社長は価格設定について、さらに調べてみることにしました。すると、三段階の選択肢があった場合、真ん中を選ぶ人が多いという人間の心理的な傾向を意識したものとして、まさに松竹梅理論というものがあるということが分かりました。

例えば、“竹”の弁当と“梅”の弁当だけだと“竹”の弁当が割高にも見えますが、“松”の弁当も並んでいると、真ん中の“竹”の弁当も選びやすくなるということです。

そこで弁当ミロクでは、給料日を迎えて財布に余裕があるときにより高めの弁当が売れるようにすべく、今より高めの弁当を開発することにしました。その際、この店の良さであるコストパフォーマンスをどのお客様にも感じて頂けるように、新しい弁当についてもできる限り食材の共通化を図りつつ調理をアレンジすることを心掛けました。それによって、既存の仕入先からまとめ買いをするなどして仕入コストを抑えられるように検討したのです。

価格設定は650円と500円の2つでも良いのですが、あえて800円、650円、500円と松竹梅を用意することで、650円が選ばれやすくなり、客単価の増加につながりやすくなるのではないかと考えました。

もちろん、月の間でも財布に余裕がある時期に、「健康志向の○○弁当」など、500円弁当との違いを売りにした650円弁当のプロモーションをかけることもセットで行うことを検討しています。

当然、心理的な傾向を利用するだけでは、お客様からの信頼を得ることはできません。よって、どの弁当を選んでも満足して頂けるよう、650円や800円の弁当を開発する際には、お客様に値段以上の価値を感じてもらえるように力を入れて取り組みました。

また、弁当ミロクの常連のお客様は既に500円という金額が根付いている可能性があるため、650円や800円の新しい弁当のアピールにも力を入れました。

その結果、500円弁当だけ販売していた頃と比べ、販売量の落ち込む日が減り、月間を通じて毎日安定した売上が上がるようになったのです。

ワンポイント解説

「松竹梅理論」

三段階の価格の選択肢があった場合、真ん中を選ぶ人が多いという人間の心理的な傾向があるとする理論。ただし、単に三段階の価格設定をすればいいわけではないので、価格に見合う(あるいはそれ以上の)価値を提供する必要があります。

お知らせ

2023年1月3日号は、年末年始休暇中のため休載とさせて頂きます。次号は2023年1月13日号となりますので、引き続きご愛顧くださいますようお願い申し上げます。

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