売上は順調なのに粗利率(売上総利益率)が低い! 読み取れる経営課題と対策とは?
2024年11月13日
質問
小売店を営む「ミロク商会」では、商品の売れ行きは順調なのですが、粗利(売上総利益)を生み出せていません。粗利率(売上総利益率)向上を図りたい場合、その対策となるのは次のうちどれでしょうか?
パターン1
商品の仕入先や仕入方法などを見直す。
パターン2
商品を値引き販売する。
パターン3
広告宣伝のための支出を減らす。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
|
|
粗利率(売上総利益率)が向上 ~新規事業を軌道に乗せることに成功!
「ミロク商会」は、都市近郊で日用雑貨の販売店を複数運営しています。低価格を重視した新事業を中心に、現在は粗利率(売上総利益率)が向上しています。しかし、数年前にこの事業を始めた頃は思うような粗利(売上総利益)を獲得できずにいたのです。
数年前 ~売上は順調なのに粗利(売上総利益)が増えないのはなぜ?
ミロク商会は、地域で長年営業を続けてきた老舗企業であり、お客さんからも「良質の商品が手軽に手に入るお店」として慕われてきました。そして近年では、商品の質を維持しつつ、低価格を強みとした新事業に着手しました。
これまでミロク商会に対するお客さんからの評判が良かったこともあって、新事業でも商品の売上そのものは好調でした。しかし、なかなか粗利(売上総利益)を伸ばせていませんでした。この状況に危機感を持った経営陣は、ある日の経営会議で新規事業の状況について話し合いました。
このところ粗利率が低下してしまっています
財務部長
商品の売れ行きは順調なので、今よりも広告宣伝費を抑えてもそこまで売上は落ち込まないかもしれません
企画部長
商品自体はお客さんからも好評なので、値引きキャンペーンを増やせば、販売数はもっと増えるはずです
営業部長
商品の仕入先や仕入方法を見直すことも検討の余地があると思います
購買部長
社長
粗利率を向上させるには、まずどこから取り組むべきか……
う~ん……
一同
経営陣からはいろいろな案が出ていますが、粗利率(売上総利益率)向上を図りたい場合、その対策となるのはどれなのでしょうか。
質問
小売店を営む「ミロク商会」では、商品の売れ行きは順調なのですが、粗利(売上総利益)を生み出せていません。粗利率(売上総利益率)向上を図りたい場合、その対策となるのは次のうちどれでしょうか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
商品の仕入先や仕入方法などを見直す。
パターン2
商品を値引き販売する。
パターン3
広告宣伝のための支出を減らす。
経営陣が選んだのはパターン1でした。仕入先や仕入方法などを見直し、コストを抑えながら効率良く商品を仕入れることで、現状の価格であっても粗利率(売上総利益率)を向上させることができたのです。
商品を値引き販売すれば、販売数量の増加につながるかもしれません。しかし、より低い単価で販売するわけですから、粗利率(売上総利益率)は低下することになります。
広告宣伝のための支出を減らせば、費用(販管費)の削減にはなるでしょう。しかし、販管費は売上原価ではありませんので、広告宣伝費を減らしても粗利率(売上総利益率)が向上するわけではありません。
粗利率(売上総利益率)が低い意味 ~学生時代の友人からアドバイスをもらった社長
ある日、社長が高校の同窓会に出席した時のこと。地元で飲食店を経営している友人と話をしました。
社長
君の会社は業績が順調なようだね。店の評判も良いみたいだし、凄いなあ
ありがとう。地元のお得意さんを大切にして、当たり前のことを続けてきただけなんだがね
友人
社長
“当たり前のこと”がなかなかできないんだよ!
まぁ、うちもなかなか利益が伸びない時期があったんだ
友人
社長
お、それで君の会社はどうしたんだ?
会計に詳しい知り合いに相談したところ、売上総利益率、いわゆる粗利率で店舗の業績を見るようにと言われたんだ
友人
社長
売上総利益率って、経営指標だね。たしか、売上高と売上総利益の比率を求めたものだったかな?
計算はそのようになるけど、求めた数字が意味する内容に注意すべきなんだ。どういうことかというと……
友人
友人によると、粗利率(売上総利益率)が低いということは、販売している商品に見合った価格をつけられていなかったり、仕入や販売の方法に無駄な部分があったりするとのことでした。また、時系列の推移を追ったり、店舗別の比較や、ライバル店との比較を行うことで、事業活動のどこに問題があるかを突き止めやすくなることも知りました。友人との会話をきっかけに、社長は、粗利率(売上総利益率)を使ってミロク商会の経営状況をチェックしてみてはどうかと思ったのです。
粗利率(売上総利益率)を使った自社の経営課題の検討と対策
早速、社長は部下に協力してもらい、自社の収益性を分析してみました。友人のアドバイスを参考に、粗利率(売上総利益率)で見た数か月の推移の比較や店舗別の比較などを行ったところ、売上高に比べて売上原価の割合がだいぶ高くなっていることがつかめました。
粗利率(売上総利益率)が高いほど、商品・サービスに大きな価値をつけて顧客へ販売できていることが分かりますが、粗利率(売上総利益率)が低い時には、例えば以下のような課題があると考えられます。
・商品の魅力が低い。
・商品の販売価格が適切でない。
・仕入コストや在庫保管のコストなどが高い。
この場合、自社が提供する商品・サービスの競争力や販売価格の妥当性を検討して必要な見直しを図ることや、仕入先や仕入方法などを見直して不要なコストを削減すること等が必要になります。例えば、今の仕入先が最もコスト効率が良いかどうかを、他のサプライヤーとの比較を実施してみることが考えられます。また、大量購入による仕入単価の引き下げ交渉をしたり、長期契約を結ぶことで仕入コストを引き下げることも考えられます。さらに、在庫管理を改善し、過剰在庫によるコスト(保管料、陳腐化や品質劣化による損失など)を削減することも考えられます。
「粗利率(売上総利益率)を使った経営課題の検討」
粗利率(売上総利益率)は、商品・サービスの販売を通じて顧客から受け取った対価を表す売上高に対して、売上高から売上原価を差し引いて求めた粗利(売上総利益)がどの程度生み出せているのかを見る指標であり、次のように計算できます。
計算式: 粗利率(売上総利益率)=粗利(売上総利益)÷売上高×100
=(売上高-売上原価)÷売上高×100
この指標を分析することで、経営課題の検討に役立てることができます。
セミナー情報
経理実務の「3大困りごと」 仕訳入力・経費精算・給与計算の業務効率化の考え方
【LIVE配信】10月24日(木)13:30~15:30
【アーカイブ配信】10月29日(火)~11月29日(金)
「中小企業の経理担当者の働き方&実務の困りごと実態調査」から362件の経理担当者のリアルな声が聞けました!
その中でも実務において経理担当者が困っている「仕訳入力」「経費精算」「給与計算」の「3大困りごと」を改善するためのセミナーを開催します。
本セミナーでは、数々の経理業務の代行や業務改善コンサルティングを行っている講師が、それぞれの業務から見た改善ポイントを考察します!
【講師】MJS税経システム研究所 客員講師
外波 達也 氏
経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!
X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています
Tweets by mjs_zeikei