新リース会計基準を適用すると決算書(貸借対照表)にどんな影響が現れる?
2025年3月23日
質問
自社でも新リース会計基準を適用すると決算書(貸借対照表)に影響がありそうだと知った社長が、「うちもリース資産を借りているが、新リース会計基準を適用すると貸借対照表にどんな影響が現れるんだ」と言いました。あなたが経理部長なら、どう説明しますか?
パターン1
資産や負債の計上額は減少する。
パターン2
資産や負債の計上額は変わらない。
パターン3
資産や負債の計上額は増加する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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新リース会計基準の基本(決算書に現れる影響)が分かった!
卸売業を営む「MJS物産」は上場企業の子会社であり、今後、新リース会計基準(注1)にしたがった決算書を作成するよう親会社から指示されています。それを聞いた当初、MJS物産の社長は、従来のリース会計基準(注2)から新リース会計基準の適用に変わることで、決算書にどんな影響が現れるのかが分からず混乱しました。
しかし、最近のMJS物産では、新リース会計基準の基本を理解し、決算書(貸借対照表)に現れる影響も理解できています。
(注1)企業会計基準第 34 号 「リースに関する会計基準」(企業会計基準委員会)2024年9月13日公表
(注2)企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準委員会)2007年 3 月 30 日改正
数カ月前 ~新リース会計基準の適用で決算書(貸借対照表)にどんな影響が現れる?
MJS物産は非上場の中小企業ですが、親会社が上場企業であり、親会社の連結財務諸表作成のため、MJS物産も新リース会計基準にしたがった決算書を作成する必要が出てくるようです。
社長
実は、2027年4月1日に開始する事業年度から新リース会計基準にしたがった決算書を作成するよう親会社から指示されたんだ。どうも、新リース会計基準を適用すると決算書(貸借対照表)に影響がありそうだと言うことなんだが、新リース会計基準のことが分かっておらずピンと来ないんだ
すいません。適用時期がまだ先なので私もまだ良く把握できていません……
経理部長
社長
そうだな。でも、うちはリース契約で使っている資産が決して少ないとは言えない。新リース会計基準を適用すると決算書(貸借対照表)に影響がありそうだと言っても、一体どんな影響が現れるのか、早めに試算しておきたい。新リース会計基準について調べて、貸借対照表にどんな影響が現れるか試算してもらえるかな
質問
自社でも新リース会計基準を適用すると決算書(貸借対照表)に影響がありそうだと知った社長が、「うちもリース資産を借りているが、新リース会計基準を適用すると貸借対照表にどんな影響が現れるんだ」と言いました。あなたが経理部長なら、どう説明しますか?
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パターン1
資産や負債の計上額は減少する。
パターン2
資産や負債の計上額は変わらない。
パターン3
資産や負債の計上額は増加する。
従来のリース会計基準では、オペレーティング・リースに関してはリース料を費用として計上していましたが、新リース会計基準では、すべてのリース(解約不能の期間に対応する部分)について使用権資産とリース負債を計上する必要があります。そのため、資産や負債の計上額が増加することが多いでしょう。
従来のリース会計基準では、ファイナンス・リースのみを資産と負債として計上していましたが、新リース会計基準では、オペレーティング・リースも含め、原則としてすべてのリース(解約不能の期間に対応する部分)について使用権資産とリース負債を計上する必要があります。そのため、資産や負債の計上額が増加することが多いでしょう。
新リース会計基準では、借手は原則としてすべてのリース(解約不能の期間に対応する部分)について、使用権資産とリース負債を計上する必要があります。そのため、資産や負債の計上額が増加することが多いでしょう。
オペレーティング・リースの取扱いの変更の影響が大きい!?
新リース会計基準について調べた結果、決算書(貸借対照表)に現れる影響が見えてきたため、経理部長が社長に説明することになりました。
社長
新リース会計基準を適用すると貸借対照表にどんな影響が現れるのか、分かったようだね
はい。オペレーティング・リースの取扱いの変更の影響が大きいようです
経理部長
社長
どういうことだい?
従来のリース会計基準では、リースは大きくファイナンス・リースとオペレーティング・リースに区分され、取扱いが大きく異なっています。ファイナンス・リースについてはあたかも自社で固定資産を取得したかのように貸借対照表上に資産と負債が計上されています
経理部長
社長
うん
一方で、オペレーティング・リースについてはリース料を費用処理すれば良く、貸借対照表に資産や負債は計上されていません。しかし、新リース会計基準では、従来のオペレーティング・リースについても貸借対照表上に資産と負債が計上されることになります
経理部長
社長
それはオペレーティング・リースであっても、あたかも自社で固定資産を取得したかのように貸借対照表上に資産と負債を計上しなければならないということなのかい?
簡単な数値例で説明しますね。例えば、5年間使える資産を5年のリース契約で年間1,000万円のリース料を支払う場合と、2年だけリースする場合を比較してみましょう
経理部長
【設例】
5年間使える資産を5年のリース契約で年間1,000万円のリース料を支払う場合と、
2年だけリースする場合を比較してみる。
① 5年のリース契約の場合(従来のファイナンス・リースに相当するもの)
リース期間:5年
年間リース料:1,000万円
リース開始時の使用権資産とリース負債:4,500万円(現在価値)
5年間のリース契約では、リース開始時にリース期間5年に対応する使用権資産として4,500万円を計上し、同額のリース負債も計上します。使用権資産はリース期間にわたって減価償却されます。また、リース料の一部はリース負債の返済に充てられ、リース負債に対する利息費用が計上されます。
② 2年のリース契約の場合(従来のオペレーティング・リースに相当に相当するもの)
リース期間:2年
年間リース料:1,000万円
リース開始時の使用権資産とリース負債:1,900万円(現在価値)
2年間のリース契約では、リース開始時にリース期間2年に対応する使用権資産として1,900万円を計上し、同額のリース負債も計上します。使用権資産はリース期間にわたって減価償却されます。また、リース料の一部はリース負債の返済に充てられ、リース負債に対する利息費用が計上されます。
新リース会計基準の適用で大きく変わるのは、従来のオペレーティング・リースに相当するものの取扱いです。従来であれば、②についてはリース料を費用計上していくだけで、資産や負債を計上する必要はないのですが、新リース会計基準では、使用権資産とリース負債がそれぞれ1,900万円計上されることになります
経理部長
社長
その分、貸借対照表の資産と負債が増加するということか
そうなんです。①でも②でも使用権資産とリース負債が貸借対照表上に計上されることになります。すべてのリースが貸借対照表の資産と負債に計上されることになるというのがポイントです
経理部長
社長
なるほど
ただし、①と②で資産と負債に計上される金額は異なっています。実は、すべてのリースが貸借対照表の資産と負債に計上されると聞いたとき、従来のオペレーティング・リースに相当するようなものであっても、『あたかも自社で固定資産を取得したかのように貸借対照表上に丸々、資産と負債を計上しなければならない』のだとすると違和感があったのですが、そう言うことではないということですね
経理部長
新リース会計基準適用による「貸借対照表の勘定科目」への影響
社長
ところで、新リース会計基準を適用すると貸借対照表の勘定科目には何か影響があるのかい?
はい。それについては概ね以下のような影響があります
経理部長
【貸借対照表の勘定科目への影響】
① 資産の部
使用権資産:
すべてのリース契約に基づいて使用する権利を表す資産が、「使用権資産」勘定で、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に計上されます。
② 負債の部
リース負債:
リース契約に基づく将来のリース料支払義務が、「リース負債」勘定で、流動負債や固定負債計上されます。
経営指標への影響
貸借対照表に計上する資産と負債が増加すると、自己資本比率(純資産÷負債・純資産合計)や総資産利益率(ROA)(利益÷総資産)といった経営指標が低下する可能性がありますのでご留意ください。
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社長
なるほど、いろいろな影響がありそうだね。新リース会計基準の適用に伴う貸借対照表への影響がだいぶ整理できたよ
はい。これらの影響が生じることを念頭に、新リース会計基準の適用に向けて早めに準備を進めていきます
経理部長
「新リース会計基準の適用に伴う貸借対照表への影響」
新リース会計基準の適用に伴い、従来のオペレーティング・リースに相当するリースであっても、貸借対照表に資産(使用権資産)や負債(リース負債)が計上されることになります。新リース会計基準を適用すると、従来であればリース料を費用処理しておけば良かったものが、オンバランス処理されることになります。
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