決算書の読み方 ~貸借対照表を使った「短期的な債務返済能力」の見方
2026年8月23日
質問
会社が短期的な支払能力を見るには、貸借対照表のどこに注目するのが最も適切でしょうか?
パターン1
現金の金額が流動負債の合計額を上回っているかどうかを見る。
パターン2
流動資産の合計額が流動負債の合計額を上回っているかどうかを見る。
パターン3
資産の合計額が流動負債の合計額を上回っているかどうかを見る。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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「短期的に債務を返済できなくなるリスクが高い」という意味は?
「スーパー・ミロク」の二代目社長である弥勒松太郎氏は、大学在学中の3人の息子のうち1人を将来の三代目社長にしようと考えています。自分の後継者を決めるにあたっては、経営センスを最も重要視する方針です。そこで松太郎社長は折に触れて息子たちに試験を課すことにしました。
これまで、貸借対照表の資産は流動資産と固定資産に区分されること、なぜそのように区分するのかという理由、流動資産と固定資産を区分する基準、について学んできましたが、今回は、貸借対照表を使った短期的な債務返済能力の見方に焦点を当てます。

社長
貸借対照表で、資産を流動資産と固定資産に、負債を流動負債と固定負債に、それぞれ区分することについては理解したな?
うん

一同

社長
では、応用の話だ。会社が短期的に債務を返済できなくなるリスクが高いかどうかを見極めるためには、貸借対照表のどこのデータを見たらいいと思う?
短期的に債務を返済できなくなるリスクが高いかどうかということは、流動負債を返済できるかどうかを見ればいいんだよね?

次男

社長
そうすると、負債を返済するときにはどうする?
お金を支払うよね?

三男

社長
そうだな。では、貸借対照表のどこのデータを見れば、短期的に債務を返済できなくなるリスクが高いかどうかを見極められると思う?
現金の金額が流動負債の合計額より多ければいいんじゃないの?

長男
現金だけじゃなく、1年以内に現金化できる債権を見たほうがいいから、流動資産の合計額が流動負債の合計額よりも多ければいいんじゃないのかな?

三男
流動負債を返済できればいいんだから、資産の合計額が流動負債の合計額よりも多ければいいんじゃない?

次男
質問
会社が短期的な支払能力を見るには、貸借対照表のどこに注目するのが最も適切でしょうか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
現金の金額が流動負債の合計額を上回っているかどうかを見る。
パターン2
流動資産の合計額が流動負債の合計額を上回っているかどうかを見る。
パターン3
資産の合計額が流動負債の合計額を上回っているかどうかを見る。
貸借対照表で、現金の金額が流動負債の合計額を上回っているのであれば、流動負債を返済するためのお金のやりくりがかなり楽なはずです。しかし、売掛金や棚卸資産など現金化するまでの期間が比較的短い資産もあり、それらも支払いに使えるため、現金だけで判定するのは厳しすぎるかもしれません。
貸借対照表で、1年以内に現金化できる債権を含む流動資産の合計額が、1年以内に返済期限が到来する流動負債の合計額を下回っているのであれば、短期的に債務を返済できなくなるリスクが高く注意が必要と考えられます。
「総資産が大きい=短期の返済に強い」とは限りません。総資産の中には“すぐにはお金に換えられない資産、あるいはなくなると事業ができなくなってしまう資産”(固定資産など)が含まれているからです。
ターニングポイントは、短期的な債務返済能力の意味を正しく理解したことだった
まず、短期的に債務を返済できなくなるリスクが高いかどうかを見極めるために、貸借対照表のどこを見たらいいでしょうか?

社長
わかったか?
短期的に債務を返済できなくなるリスクが高いかどうかだから、流動負債を返済できればいいはずだけど……

長男

社長
そうだ。流動負債を返済できるかどうかを判断するのには、貸借対照表のどこを見ればいい?
流動資産だよね?

三男

社長
そのとおりだ
1年以内に支払期限が来る流動負債よりも、現金、1年以内に現金化できる債権、商品などの棚卸資産を含む流動資産が多ければ、1年以内、つまり、短期の債務の支払能力を見ることができます。
流動負債よりも資産の合計額が多ければ、債務は返済できるんじゃないの?

次男

社長
そうとは限らない。資産の合計額のうち、固定資産の割合が多かったらどうだ?
固定資産って、土地や建物、車両や備品だよね?

長男

社長
そうだ。だが、固定資産は長い間使用する資産で、それらには多額のお金をつぎ込んでいることが多いが、現金化するのが難しい
売却すればお金に換えられるんじゃないの?

次男

社長
店舗やトラック、備品なんかを売ってしまったら商売ができなくなるだろう?
あぁ、そうかぁ

次男
現金、1年以内に現金化できる債権、棚卸資産を含む流動資産を換金して、流動負債の返済ができるかどうかを見ることになります。それによって、短期の支払能力を判断することができるのです。
短期的支払能力を判断する差額と比率 ~流動比率
なるほど。で、流動資産の金額から流動負債の金額を引いて、差額がプラスだったらいいの?

長男

社長
そういう見方もあるが、金額だと会社の規模などで大きく変わるので比較もしづらい。そこで、流動資産の金額を流動負債の金額で割り算をして、その比率を見る方法もある
比率?

次男

社長
そうだ。この比率を『流動比率』というんだ
流動比率が100%を超えていれば流動資産の金額が流動負債の金額を上回っているということになります。もちろん、100%に近い数値だと心もとないので、それなりに大きい比率であることが必要になります。
流動比率の限界とそれを補う当座比率
流動比率は短期的な支払能力を見る重要な指標ですが、流動資産にはいろいろな資産が含まれるため、流動比率での判定には注意が必要です。

社長
だが、流動資産のなかには、お客様に販売する商品などの棚卸資産が含まれている。これに気をつけなくてはいけない
え、何で?

長男

社長
売れ筋商品ならいいが、売れ残りの商品を抱え込んだ場合、その在庫は販売しにくく、換金するのが難しい場合があるからだ
そうかぁ

次男

社長
そこで、別の比率があるんだ
流動資産のうち、現金、売上債権、売買目的の有価証券など換金性の高い資産を『当座資産』といいます。棚卸資産は含めません。この当座資産の金額を流動負債の金額で割り算をした比率を『当座比率』といいます。流動比率よりも厳しい条件で短期的な支払能力を見極める比率になります。
長期的な支払能力を見極める方法もあるの?

三男

社長
あるぞ。じゃあ、その点については別の機会に質問することにしよう
今回の試験によって、短期的に債務を返済できなくなるリスクが高いかどうかを見極めるために、貸借対照表のどこを検討したらよいかを理解しました。松太郎社長は引続き試験を課すことにしました。
・流動比率
流動資産の合計額を流動負債の合計額で割って計算した比率を流動比率といいます。
| 流動比率=流動資産/流動負債 |
流動比率は、短期的な支払能力を判断する第一義的な指標です。よく、「2対1の法則」とか、「200%」といって、「流動資産が流動負債の2倍あれば安全である」という説明を見ます。必ずしも、流動比率が200%に達していなければならない、というわけではなく、流動資産と流動負債の中身のバランスを検討すればよいと思います。
・当座比率
流動資産のなかには、商品などの棚卸資産が含まれます。売れない在庫を多く抱えているときには、棚卸資産を換金することができませんから、短期的な支払能力を判断する際にはこの点を考慮しなくてはなりません。そこで、流動資産のうち、現金、売上債権、売買目的の有価証券など換金性の高い資産である、当座資産の合計額を流動負債の合計額で割って計算した当座比率を検討します。
| 当座比率=当座資産/流動負債 |
当座比率は、短期的な支払能力を判断するにあたり流動比率よりも厳しい条件で検討する指標です。
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