第14回 マイナンバーカードの健康保険証利用
2021年3月3日
2016年からスタートしたマイナンバー制度ですが、政府の目論見に反してなかなか国民に浸透しません。行政サービスを受ける際に重要な役目を担っているマイナンバーカードの普及率も、思うように上がらない状況が続いています。ところが、過去1年間のマイナンバーカードの交付枚数はおよそ1,185万枚で、前の年の4倍近くに増え、5年前に交付が始まって以来、最も多くなりました。これは、政府の新型コロナ対策のひとつである現金10万円の一律給付(特別定額給付金)をマイナンバーカードを利用することで電子申請が可能だったことや、ポイント還元制度「マイナポイント」のスタートが大幅なカードの増加につながったと考えられています。それでも全国のカード普及率は24.6%(2021年1月現在)にとどまっていて、政府としては、2022年度末(2023年3月末)までにほぼすべての国民にカードが行き渡るようにするという目標を掲げています。
今回の労務管理トピックスは、いよいよ今月(2021年3月)より開始されるマイナンバーカードの健康保険証利用について解説いたします。
健康保険証としての利用方法
この「カードリーダー」にカードを読み込ませ、顔写真で本人確認を行い、ICチップにある電子証明書により医療保険の資格をオンラインで確認できる仕組みになっています。( 2⃣ )
そのため、「カードリーダー」が設置されていない医療機関や薬局では、今まで通り、健康保険証の提示が必要になります。(利用できる医療機関・薬局については厚生労働省のホームページで公表予定)
また、カードを健康保険証として利用するためには、マイナポータルから事前申し込みが必要です。
健康保険証と一体化のメリット
マイナンバーカードを健康保険証として利用すると、医療機関や薬局での窓口業務が簡素化される他に、どのようなメリットがあるのでしょうか?
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就職・転職・引越しにかかわらずそのまま利用可
就職や転職等で健康保険組合等(保険者)が変わる場合、新しい健康保険証が手元に届くま での間に医療機関等を利用した場合は、いったんは医療費の全額を自費で支払い、後で還付の手続を行う必要があります。それがマイナンバーカードとの一体化により、保険者の手続が完了次第、新しい健康保険証の発行を待つことなくマイナンバーカードで健康保険証利用が可能となります。( 1⃣ ) -
限度額適用認定証なしで一時的な支払い不要
急な入院等で高額の医療費を自己負担した場合は、後で高額療養費の払い戻しの手続が必要です。また、そもそも立替が難しい場合は、「限度額適用認定証」の提出が必要です。それが、マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば、諸々の手続は不要となり、自己負担額の支払いで済むようになります。( 3⃣ ) -
特定健診情報、薬剤情報の共有
マイナポータルで特定健診情報(2021年3月~)、薬剤情報(2021年10月~)、自分の医療費情報(2021年10月~)を閲覧できるようになります。さらに、本人が同意すれば、特定健診情報や薬剤情報を医療機関・薬局と共有できるようになります。今後は、閲覧・共有できる情報を、手術・移植・透析・医療機関名等に拡大する予定(2022年夏を目処)になっています。初めて受診する医療機関等でも、必要な情報を正しく共有・連携したうえで、より良い医療サービスを受けられることが期待されています。( 4⃣ ) -
確定申告の医療費控除が簡単に
2021年度分所得税の確定申告から、医療費控除の手続で、マイナポータルを通じて自動入力が可能になります。マイナポータルからe-Taxに情報連携できますので、オンラインで完結するようになります。( 6⃣ )
※各イラストは「政府広報オンライン」より引用
政府は、2022年度末(2023年3月末)にはおおむねすべての医療機関等での導入を目指すとしていますが、病院はともかく、地域の小さなクリニックでも完全に利用可能となるには相当の時間を要するという意見もあります。また、12桁のマイナンバーが流失する不安もささやかれていますが、医療機関や薬局の窓口職員が、マイナンバーを取り扱うことはありませんので、その心配はなさそうです。ただし、マイナンバーカードの管理については各自がしっかりと行う必要があります。
マイナンバーカードの健康保険証利用は、間違いなく利便性が向上しますので、時機を見て申し込みをされてはいかがでしょう。