第20回 改正育児・介護休業法の概要1~男性の育休促進~
2021年9月1日
長年にわたり低迷を続けてきた男性の育休取得率が、2020年度は12.65%(※1)と過去最高となり、初めて1割の壁を越えました。政府目標である「2020年までに13%」には及ばなかったものの、2019年度が7.48%(※1)であったことを考えると、驚異的な伸びといえるでしょう。この流れに勢いをつけるかの如く、来年度から男性向けの実質的な産休制度となる「出生時育児休業」が創設されます。この「出生時育児休業」は、本年の国会で可決・成立した改正育児・介護休業法(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」【2021年6月9日公布】)に盛り込まれています。その他、労働者が男女を問わず育児休業を取得しやすい職場環境の整備を事業主に義務付けるなどの改正がなされました。今回は、この改正育児・介護休業法のポイントと、創設される「出生時育児休業」について説明いたします。
※1 2021年7月30日厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」結果より
改正育児・介護休業法のポイント
今回の改正では主に男性の育児休業取得促進を掲げており、取得を阻害する要因を排除するための内容となっているところが大きなポイントです。大きく分けると次の4つの項目になります。(それぞれの施行時期は表2参照)
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育児休業の周知に関する見直し
・妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知・取得意向確認措置の義務付け
・育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務付け -
育児休業等の見直し
・育児休業の分割取得、撤回ルールの見直し
・1歳到達日後の育児休業の見直し
・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 -
出生時育児休業の創設
・産後8週間以内に4週間の育児休業を取得可能に -
育児休業の取得状況の公表の義務付け
・大企業(従業員1,000人以上)は、男性の育児休業取得率を毎年公表
出生時育児休業の創設
育児休業を取得する時期としては、「妻の出産直後の心身のケアが必要な時期に近くにいたい」「里帰りから戻ってくるタイミングで育児に参加したい」といった男性側のニーズが多いようです。現行の育児・介護休業法にもパパ休暇(妻の出産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合は、特別の事情がなくても再度、育児休業を取得できる制度)がありますが、ほとんど制度利用者はいません。
そこで、パパ休暇を廃止し、より男性が育児休業を取得しやすくするための新しい制度として「出生時育児休業」が創設されることになりました。子が1歳に達するまでの育児休業とは別に、子の出生後8週間以内に最長4週間まで休業を取得できる制度で、より柔軟に利用できるように、休業の申出は現行の育児休業制度(1カ月前)より短縮して原則2週間前を期限としています。また、2回までの分割取得も可能なことから、出生時育児休業を取得した後に、通常の育児休業を取得することもできるので、ニーズに応じて短期間の休業を繰り返し利用できるようになります。
【表1】出生時育児休業の概要
対象期間 | 子の出生後8週間以内 |
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対象者 | 男性(養子縁組の場合は女性も対象) |
申出期限 | 原則2週間前まで(※2) |
取得日数 | 4週間を上限(2回まで分割取得可能) |
期間中の就労 | 休業開始前から予定されていた就労可能(※3) |
※2 例外的に労使協定締結で1カ月前とすることができる
※3 労使協定の締結を前提として一時的・臨時的な就労のみ可
出生時育児休業期間中の収入に関しては、通常の育児休業と同様に育児休業給付金(雇用保険)の対象とするほか、社会保険料免除の対象にもなります。また、休業期間中の就労も認められますが、労働者の意向に反して就労させられることを避けるために、あらかじめ労使協定を締結することが条件となります。
このように、今までの制度と比較して柔軟性を重視した制度となっていますので、より多くの労働者の利用が期待されています。
次回は、その他の改正内容について説明いたします。
【表2】改正育児・介護休業法の施行時期
改正内容 | 施行時期 | |
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(1)育児休業の周知に関する見直し | 個別周知・取得意向確認の措置の義務付け | 2022年4月1日 |
育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務付け | ||
(2)育児休業の見直し | 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和 | |
育児休業の分割取得、育児休業延長の見直し |
2022年10月1日 (予定) |
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(3)出生時育児休業の創設 | ||
(4)育児休業の取得状況の公表の義務付け | 2023年4月1日 |