第51回 労働条件明示ルールの改正

2024年4月3日

 2024年4月1日以降に新たに雇用契約を締結する場合、または雇用契約を更新する場合、労働条件の明示ルール(労働基準法施行規則等)が改正されましたので、今回はその改正について人事労務担当者が押さえておくべきポイントについて解説いたします。

労働条件の明示ルール

 雇用契約を締結(更新の場合も含む)する際には、使用者は労働者に対して、契約期間、就業場所、従事する業務、労働時間や休日、賃金、退職に関する事項等の労働条件を明示しなければなりません。なお、労働条件のうち特定の事項については、書面による交付(労働者が希望した場合は電子メール等の送信による明示を含む)が必要です(労働基準法第15条1項:図表1参照)。

(図表1)

(出典:厚生労働省リーフレット「2024年からの労働条件明示のルール変更」)

 また、パート・アルバイトなどの短時間契約者や期間の定めのある有期雇用労働者を雇用する場合は、労働基準法およびパートタイム労働法の定めにより、次の項目も明示しなければなりません。

  • 期間の定めのある労働契約の更新の有無、判断基準に関する事項
  • 昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無に関する事項
  • 雇用管理の改善などの相談窓口に関する事項

追加される明示事項

 今回の改正により、前述の明示事項に加えて、「就業場所・および業務の変更の範囲」の明示が必要となります。また、有期雇用労働者に対しては、「更新上限の有無とその内容の明示」および「更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ説明」することが必要となります。さらに、有期雇用契約が5年を超えて更新された場合は、「無期転換を申し込むことができる旨」および「無期転換後の労働条件」の明示が必要になります。

(図表2:追加された労働条件明示事項)

(出典:厚生労働省リーフレット「2024年からの労働条件明示のルール変更」)

就業場所・業務の変更の範囲

 「就業場所と業務」とは、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所と、労働者が通常従事することが想定されている業務のことを指します。配置転換や在籍型出向が命じられた際の配置転換先や在籍型出向先の場所や業務は含まれますが、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が一時的に変更される際の、一時的な変更先の場所や業務は含まれません。
 「変更の範囲」とは、今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の変更の範囲のことをいいます(具体的な記載例は図表3を参照)。

(図表3:労働条件通知書または雇用契約書の記載例)

更新上限に関する事項

 労働者と有期雇用契約を締結する場合、または更新する際に、更新の上限(通算契約期間または更新回数)を設ける場合は、その内容の明示が必要になります。また、更新上限を新たに設けようとする場合、または更新上限を短縮しようとする場合は、その理由を労働者に説明することが必要となります。説明は、文書等を交付して個々の有期契約労働者ごとに面談により行うことが望ましいですが、労働者が容易に理解できる内容の資料を交付したり、説明会等を開催して複数の有期雇用労働者に同時に行う等でも問題ありません。

無期転換に関する事項

 有期雇用契約が5年を超えて更新された場合、有期雇用労働者からの申し込みにより、無期雇用契約に転換されるルール(労働契約法第18条)があります。この無期雇用への申し込みができる権利のことを「無期転換申込権」と呼びます(図表4)。

 今回の改正により、「無期転換申込権」が発生する更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)を明示しなければならなくなりました。

 無期転換申込権の発生後、無期転換を申し込まず有期労働契約を更新した場合は、その後の更新のたびに「無期転換申込機会」の明示が必要となります。また、無期転換後の労働条件の明示も必要となり、書面等により別段の定めをしない限り、無期転換後の労働条件は、無期転換前と同一の労働条件が適用されることになります。

(図表4)

(出典:厚生労働省リーフレット「2024年からの労働条件明示のルール変更」)

適用時期・対象者についての留意事項

 新たな明示ルールは、2024年4月1日以降に締結される雇用契約について適用されるため、すでに雇用されている労働者に対して、改めて労働条件を明示する必要はありません。
 雇用契約の始期が4月1日以降であったとしても、その契約を2024年3月以前に締結する場合においては、改正前のルールが適用されるため、新たな明示ルールに基づく明示は不要です。

筆者紹介

加藤千博

MJS税経システム研究所 客員研究員
社会保険労務士法人加藤マネジメントオフィス 代表社員
社会保険労務士 加藤 千博
http://www.kmo-sr.jp/

Edge Trackerシリーズ

企業向け
Edge Tracker 経費精算

クラウド経費精算システム

エッジトラッカー ケイヒセイサン

電子帳簿保存法対応

インボイス制度対応

「リアルタイム精算」で仕事の効率化を図る
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して「いつでも」、「どこでも」、経費(交通費・交際費など)の入力や申請が可能です。ICカードやクレジットカードのデータ取込機能や交通費の自動計算機能を使えば入力もラクラク。承認もスムーズに進められます。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 経費精算
  • SaaS
企業向け
Edge Tracker 勤怠管理

クラウド勤怠管理システム

エッジトラッカー キンタイカンリ

日々の入力により働くの見える化を推進
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して勤怠の打刻や残業などの申請が可能です。勤怠データは自動集計されるので、管理者はいつでも従業員の勤怠状況を確認することができます。異常な勤怠データがあればアラートも出るので、労務コンプライアンスの強化にも役立ちます。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 勤怠管理
  • SaaS
企業向け
Edge Tracker 給与明細参照

クラウド給与明細参照システム

エッジトラッカー キュウヨメイサイサンショウ

社員の利便性向上とコストダウンを実現
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して「いつでも」、「どこでも」、給与明細など各種明細書を閲覧することができます。紙で出力する場合に比べて、印刷・封入・配付にかかる手間やコストを大幅に軽減できます。必要に応じて紙での発行にも対応可能です。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 給与明細
  • SaaS
企業向け
Edge Tracker 年末調整申告

クラウド年末調整申告システム

エッジトラッカー ネンマツチョウセイシンコク

あわただしい年末調整業務の改善とコストダウンを実現
従業員と管理部門の業務効率化を実現するクラウドサービス

PCやスマートフォンを利用して年末調整における各種申告書を作成することができます。手書きに比べて、各種申告書の配付・記入・回収にかかる手間やコストを大幅に削減できます。PCから用紙の出力が可能です。

  • 財務・会計
  • 給与・人事
  • 年末調整申告
  • SaaS
企業向け
Edge Tracker ワークフロー

クラウドワークフローシステム

エッジトラッカー ワークフロー

フレキシブルなドキュメントワークフローを実現

申請書は自由に作成可能。外出先でも各種申請書の申請・承認ができます。

  • ワークフロー
  • SaaS
中堅・中小企業向け
Edge Tracker 電子請求書

電子インボイス送受信・インボイス電子化対応サービス

エッジトラッカー デンシセイキュウショ

電子帳簿保存法対応

インボイス制度対応

デジタルインボイスで経理DXは新たな次元へ

MJSの販売管理、請求管理、財務・会計の各システムとシームレスに連携し、受領した電子インボイスのデータをもとにMJSの財務・会計システムで仕訳の自動作成も可能です。

  • インボイス
  • SaaS

課題や導入に関するご相談など承っております。

まずはお気軽にお問い合わせください。

資料請求はこちら