どっちの製品の受注を優先する? 利益増のための決断を迫られた社長を助けた計数力
2021年1月23日
質問
「Mirok家具製作所」には、S社から学習机の製造、T社からは食卓の製造の打診が来ています。ただし、工場の稼働できる時間には上限があり、両社の打診をそのまま受け入れることができません。粗利額を大きくするには次のうちどれを優先するのが良いでしょうか?
パターン1
最も注文数の多い製品の受注を優先する。
パターン2
製造1時間当たり最も儲かる製品の受注を優先する。
パターン3
1個当たり最も儲かる製品の受注を優先する。
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順調に稼働する工場
「Mirok家具製作所」は、家具を製造するメーカーです。多くの家具製造の打診を受けるなど、工場も順調に稼働しています。とはいえ、製造ライン等の関係から、当面はこれ以上稼働時間を増やすことは考えていません。
今でこそ製造の打診にもスムーズに対応していますが、1年前は複数の企業から製造の打診を受け、悩んだことがあったのです。
1年前 ~企業から注文の打診が来た!
Mirok家具製作所は、開業以来10年、顧客からの製造依頼も増えていました。ただし、第1製造ラインにはまだ製造余力がある状況でした。
1年前のある日のこと、S社から学習机の製造、T社からは食卓の製造の打診が来たのです。第1製造ラインでは学習机でも食卓でも製造でき、製造を切り替えるのもスムーズにできそうです。ただし、工場を稼働できる時間には上限があり、両社の打診をそのまま受け入れることはできません。そうした中、社長はできる限り粗利額を大きくしたいと考えているのですが、どうしたら良いか分からず、悩んでいました。
質問
「Mirok家具製作所」には、S社から学習机の製造、T社からは食卓の製造の打診が来ています。ただし、工場の稼働できる時間には上限があり、両社の打診をそのまま受け入れることができません。粗利額を大きくするには次のうちどれを優先するのが良いでしょうか?
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パターン1
最も注文数の多い製品の受注を優先する。
パターン2
製造1時間当たり最も儲かる製品の受注を優先する。
パターン3
1個当たり最も儲かる製品の受注を優先する。
できるだけ注文数量の多い製品の受注を優先すれば、工場の稼働率は下がりにくくできるかもしれません。しかし、工場の稼働が上限に達するような状況では、他に優先することがありそうです。
Mirok家具製作所の社長がとったのはパターン2でした。なぜ、製造1時間当たり最も儲かる製品を受注することにしたのかというと……
1個当たり最も儲かる製品を受注すれば、できるだけ少ない製造量で粗利額を大きくすることができそうです。しかし、製造ラインの稼働時間に上限がある中では、他に優先することがありそうです。
算数が得意な息子に助けられた!?
ある日の夕方、社長が翌日の仕込みを終えて、いろいろと考えながら帰宅したところ、息子が算数の宿題をやっています。
社長 | お、算数の宿題か? ちょっと見せてごらん。パパは算数得意だったんだぞ |
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息子 | へぇー。じゃ、これ分かる? |
社長 | えー、どれどれ? 『お金を1,000円持っています。ミカンは1個30円、リンゴは1個70円です。ミカンは最低4個・最高12個欲しく、リンゴは最低3個・最高10個欲しいのですが、できるだけミカンを多く買いたいと思っています。ミカンとリンゴはそれぞれ何個買いますか?』か。うーん…… |
どうやら社長は、それ程算数が得意ということでもなさそうです。
息子 | もー、こんなの簡単だよ。少なくともミカンは4個、リンゴは3個買いたいんだから、30円×4個+70円×3個で330円使うでしょ? 残りの670円でできるだけミカンを多く買いたいんだから、あとミカンは8個、240円分買える。これでミカンは上限まで買えた |
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社長 | そうかー |
息子 | で、残りは430円。買えるリンゴは? |
社長 | 430円÷70円で6個だ! あれ? これ、うちの工場の話にも応用できるかな? |
息子 | ん?? |
社長 | 実は、工場の第1製造ラインで学習机と食卓を作りたいんだが、ラインを稼働させられる時間は1カ月で最長300時間なんだ。その中で作れる分だけ作りたい |
息子 | ちなみに製品を1台作るのにかかる時間は? |
社長 | 学習机だと2時間、食卓だと3時間位だ |
息子 | ってことは、1カ月で作れる上限はこんな感じだね |
【1カ月に作れる上限】
学習机のみ作る場合: 300時間 ÷ 2時間 = 150台
食卓のみ作る場合 : 300時間 ÷ 3時間 = 100台
社長 | そうかそうか。学習机は50~120台、食卓は30~50台作りたいんだが、できるだけ利益が多くなるようにしたいんだよ。一体どんな風に計算したらいいんだろう? |
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息子 | それなら、学習机と食卓の1個当たりの利益が分かれば解けるよ |
社長 | そうなのか。えーと、利益は学習机が4万円、食卓が9万円といったところだな |
息子 | じゃあ、こんな感じだね |
【1時間当たりの利益】 (※ここでの利益は粗利を使っている)
1時間当たりの粗利 = 1台当たりの粗利 ÷ 1台当たりの製造時間
学習机: 4万円 ÷ 2時間 = 2万円/時間
食 卓: 9万円 ÷ 3時間 = 3万円/時間
息子 | 利益を大きくしたいんなら食卓を優先して作った方が良さそうだね! あとはさっきの算数の問題とだいたい同じかな。お金1,000円を時間300時間に、食卓を優先するんだから、ミカンを食卓に置き換えて…… |
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そう言うと、息子はスラスラと計算し始め、計算過程のメモを見せてくれました。
社長 | そういうことか! ビジネスっていうのは紙の上の計算どおりにはいかないものだが、限りある経営資源の有効活用を考えながら、きちんとシミュレーションしてみることは大切だな |
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こうしてMirok家具製作所では、受注を検討する際、製品の組み合わせによる利益への影響などをシミュレーションするようになったのでした。
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【参考】息子が見せてくれた、計算過程のメモ
稼働時間上限: 300時間
最低必要数: 学習机が50台、食卓が30台
これを作るのに要する時間: 2時間×50台+3時間×30台=190時間
残りの110時間で食卓を優先して製造
110時間÷3時間=36台 ⇒ あと20台製造(合計で上限の50台製造)
残り時間は、110時間-3時間×20台=50時間
残りの50時間で学習机を製造
50時間÷2時間=25台 ⇒ あと25台製造できる
合計で、食卓を50台、学習机を75台製造すれば、利益が最大になる。
「限りある経営資源の有効活用」
利益を最大化するために、限りある経営資源をいかに有効活用するかを考える必要があります。その際には、制約条件当たり(本記事では工場の稼働時間当たり)の利益が最も大きい製品の製造を優先することが考えられます。なお、複数の制約条件がある場合、線形計画法と言われる方法が使われることがあります。
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