苦難のオホーツク水産加工業者が挑戦した新たな一手とは?

2021年11月3日

製造業

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2021/11/03

質問

「ミロク水産」は、長年、北海道オホーツク海に面する地方で水産加工業を営んできました。しかし、コロナ禍で売上高の急減にさらされています。あなたが経営者なら売上高の回復のためにどのような手を打ちますか?

パターン1

コロナ禍による苦境を乗り越えるために、従業員の一時解雇を決断する。

パターン2

鮮魚類の取扱高の減少に伴い、他の業種への転換を図る。

パターン3

インターネットを通じて個人消費者向けに会員を募集する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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厳しい環境にも負けず、自社の業績回復と地域経済活性化のために奮闘しています!

「ミロク水産」は、北海道オホーツク海に面する地方で、長年、水産加工業を営んでいます。地域の環境が厳しいにもかかわらず、会社全体が活気にあふれています。今年の北海道は、100年に一度の少雨、高温に見舞われ、漁業だけでなく、酪農や農作物の生育にも深刻な影響が出ています。ミロク水産は、漁業関係者だけでなく、酪農家や農業関係者とも積極的に協力し、地域経済の活性化のために奮闘しています。

数カ月前 ~北海道で水産加工業を営むミロク水産はコロナ禍で苦戦していました…

ミロク水産は、コロナ禍で海産物の需要が急激に落ち込み、苦戦しています。最近では、地球温暖化の影響や海水温度の上昇に伴い魚の種類や漁獲高にも大きな変化があります。同時にコロナ禍による外出活動自粛の影響で海産物の売上高も急激に低下しています。さらに困ったことに、今年の北海道では2カ月間も本格的な雨が降らず、異常な高温が続き酪農や農作物の生育にも深刻な影響が生じていました。

社長 地球温暖化の影響か、海流の変化により魚の種類や漁獲高が大きく減少している。さらに、このコロナ禍で鮮魚関係の売上高も急激に低下している。何か売上高を回復し、地域経済の活性化のためにもなる、良いアイデアはないだろうか
専務 コロナ禍での緊急事態宣言により、主要な取引先である東京など首都圏の大口消費が大幅に減少しています
社長 このままでは長年にわたり築いてきたわが社の信用も、ガラガラと崩れてしまうリスクがあるな
専務 我々が水揚げし、加工している海産物の品質には自信があります。その良さをもっと認識してもらい、海産物の付加価値を高めて販売できるといいですね
社長 今年の少雨、高温の異常気象で、当地の酪農業者や農作物業者にも深刻な影響が生じている。彼らと協力して、地域経済の立て直しと活性化のために頑張っていこう!
 

質問

「ミロク水産」は、長年、北海道オホーツク海に面する地方で水産加工業を営んできました。しかし、コロナ禍で売上高の急減にさらされています。あなたが経営者なら売上高の回復のためにどのような手を打ちますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

コロナ禍による苦境を乗り越えるために、従業員の一時解雇を決断する。

パターン2

鮮魚類の取扱高の減少に伴い、他の業種への転換を図る。

パターン3

インターネットを通じて個人消費者向けに会員を募集する。

売上高の急減に対処するために、従業員の一時解雇を決断することもやむを得ないかもしれません。しかし、それだけで抜本的な解決策になるとは言えません。
 

水産加工業の将来に見切りをつけて、他の業種への転換を図る道は、一つの選択肢になるかもしれません。しかし、他に有望な産業がない地域経済の実状を考えると、そう簡単なことではありません。
 

ミロク水産の社長が決断したのはパターン3でした。それはどのような戦略で展開されたのでしょうか。

 

香水の定期お届けサービスからヒントを得た!!

社長が家族とテレビ番組を観ながら食事を囲んでいると、香水を定期的に届けてくれるユニークなビジネスが紹介されていました。
 
このサービスは会員制で、高級なブランドの香水を、毎月一定の金額で消費者に届けるというものでした。高級なブランド香水は、自分で買うにはかなり高いので勇気のいることです。しかし、毎月一定の金額を支払うと、簡単にあこがれの高級ブランドの香水が利用できるというサービスです。
 
最低、月額2,000円程で毎月4ml(40プッシュ)の香水が送られます。500種類以上のブランド香水のリストから選び注文ができます。どのような香水が自分に合うか迷う場合には、プロのコンシェルジュにLINEで相談できます。香水の変更は可能で、2回目以降は最新のAI(人工知能)を用いた「レコメンド機能」でお薦めの香水を選んでくれます。
 
コロナ禍で会社に出社せず、在宅によるリモート勤務が続くビジネス社会で、個人の気分転換やリフレッシュのため、SNSなどを通じて女性の間で人気化しています。さらに男性の中にもこのサービスに興味を持ち、利用する人が増加している模様です。このサービスの会員数は、1年前に比較し10倍以上の伸びを示しているとのことです。

これを観たミロク水産の社長は思いました。

社長の心の声 <このビジネスモデルは、当社にも応用できるのでは……。わが社の場合は、北海道オホーツクの幸(さち)をふんだんに盛り込んだ「オホーツクからの定期便」といった会員制サービスができるのではないか?!>

早速、専務を中心に本格的な検討をするよう指示を出しました。そして、社内で何回も活発な議論をした結果、次のような方針が打ち出されました。

① 会員制で、月払いの定額利用サービスとする。
② 中間流通業者向けでなく、産直方式で直接消費者の家庭に届けるものとする。
③ オホーツク海の旬の新鮮な魚を、現地の漁業者や料理研究家ともタイアップし、毎月、魅力的なセットメニューを提供する。
④ 素材のまま提供すると調理の手間がかかるので、湯せんや電子レンジで簡単に食べられるようにセットを工夫する。
⑤ 鮮魚料理に加えて、地域の酪農家や農作物生産農家と緊密なネットワークを組み、北海道オホーツク地方の郷土料理もセットに加える。
⑥ 具体的には、4種類の魚料理+野菜料理8食セット:月5,000円強、8種類の魚料理+野菜料理16食セット:月10,000円弱などとする。

このビジネスモデルは、いわゆるサブスクリプション(会員制定額サービス)であり、ミロク水産の新ビジネス「オホーツク定期便」は、コロナ禍で種々の制約を受けている全国の人々の日常生活に、新鮮な楽しみとサプライズを生み、SNSで評判となり、会員数も順調に拡大しています。ミロク水産自体の業績回復にプラスになるだけでなく、現地の酪農家や農作物生産農家にも効果が波及し、地域経済の活性化にも一役買っています。

ワンポイント解説

「サブスクリプション」(会員制定額サービス)

サブスクリプション(会員制定額サービス)というビジネスモデルは、さまざまな業種の企業に応用ができそうです。本記事では、もし水産加工業者が会員制の定額サービスを導入するとしたらという想定で、考え得る一つの方法を挙げてみました。もし自社で「○○定期便」を導入するとしたらどうするか、いろいろとアイデアを出してみると、新たなビジネスチャンスにつながるかもしれません。

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