顧客激減の旅行会社がとった、生き残りのための逆転の発想とは?

2021年8月23日

サービス業

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2021/08/23

質問

訪日観光対応に力を入れてきたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で、以前のような訪日観光客が期待しにくい状況が予想されるなど、これまでの事業を見直すことが求められている「ミロク旅行社」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

訪日観光客の減少に合わせた事業規模に縮小する。

パターン2

窓口業務を廃止し、ネットを活用したリモートでのきめ細かな旅行相談、予約等の受付とする。

パターン3

他の業種との連携を図り、訪日観光以外のサービス提供を図る。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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順調に拡大していた事業への急ブレーキ

「ミロク旅行社」は、観光拠点として関西に数店舗の他、東南アジアの国に数カ所の営業拠点を展開している旅行会社です。ここ数年間、東南アジアの国々からの訪日観光需要に対応するために、日本の文化や衣食住を体験できる多様な企画を用意してきました。それは、多くの隠れた日本の魅力の再発見を伴う企画でもありました。これからますます発展していくと思われていたのです。

ところが、新型コロナウイルス感染症のために、ほとんどの国で外国との行き来が大きく制限され、日本に訪れる観光客がほとんどいなくなってしまい、一気に火が消えたような状態になってしまいました。ミロク旅行社の収益は大きく落ち込み、重い人件費負担などで大幅赤字を余儀なくされており、このまま感染症の終息を待っていても先は見えません。

一方で、現地の営業拠点からは、コロナの影響で日本を訪れることはできない状況下でも、日本の文化に触れてみたい、体験してみたいといった顧客のニーズは衰えていないことが度々報告されています。

こうした環境の中にあって、ミロク旅行社では、人件費負担は重いものの、現在の雇用は継続しつつ、最低限の採算は確保したいと考えています。また、訪日観光客の減少の影響を受けにくくしたいとも考えています。

どうしたものかと、ミロク旅行社の社長は頭を悩ませています。

質問

訪日観光対応に力を入れてきたものの、新型コロナウイルス感染症の影響で、以前のような訪日観光客が期待しにくい状況が予想されるなど、これまでの事業を見直すことが求められている「ミロク旅行社」。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

訪日観光客の減少に合わせた事業規模に縮小する。

パターン2

窓口業務を廃止し、ネットを活用したリモートでのきめ細かな旅行相談、予約等の受付とする。

パターン3

他の業種との連携を図り、訪日観光以外のサービス提供を図る。

これは、旅行に対する需要を把握し直して、適正な事業規模に縮小する方法です。事業規模を縮小することで、減少した売上に応じるように、費用も減少させ、利益獲得を目指すものです。しかし、雇用の維持を考えているミロク旅行社の場合、この方法では、店舗の閉鎖による賃借料の減少は見込めますが、従業員の給料については簡単に減らすことができず、これだけでは採算の確保は難しいでしょう。また、コロナ後の再成長のネックとなるおそれがあります。

窓口業務を廃止する一方、リモートでリアルタイムに顔を見ながら旅行相談を受け、旅行の予約等も行えるようにすることで、従業員を有効活用しながら、インバウンド観光客以外の顧客層の開拓につながるかもしれません。しかし、観光客自体が減少している状況下で、観光の収益で回復を図っていくパターン2の方法は、観光客の減少の影響を受けにくくしたいというミロク旅行社の考えには合致していないかもしれません。また、コロナ後の再成長のネックとなるおそれがあります。

ミロク旅行社が選択したのはパターン3でした。他の業種と連携することで、訪日観光客の減少の影響を受けにくくし、収益の幅を拡げてリスク分散を図ることを考えたのです。
 

きっかけは、逆転の発想だった?!

なかなか解決策が浮かばない社長は、ある日、気分転換にと自宅の書斎の模様替えでもしてみようと思い立ちました。そして、書棚の整理をしていたところ、ふとある本に目が留まりました。「逆転の発想」という言葉が気にかかったのです。そして、本をパラパラとめくっていきました。

社長 随分前に買ったきりだったが、大事なことが書いてあったんだな。そうだ、こんな今だからこそ「逆転の発想」が必要だ!


翌日出社した社長は、社員たちと「逆転の発想」で何かできないか、アイデア出しをしてみることにしました。

ある社員 お客さんが来られないのなら、こちらからお客さんのところに行けばいいんじゃないでしょうか?
社長 今は、こちらからも行けないのは一緒だが?
ある社員 確かにお客さんのところに、“人”は行けないかもしれませんが、“体験”は持っていけるんじゃないでしょうか?


さらにアイデア出しを進めていく中で、新たなサービス提供の形が少し見えてきました。

通常であれば、ミロク旅行社が訪日観光客に提供している日本の文化や衣食住の体験サービスを、その一部ではあるものの、現地国のホテル、日本の和菓子屋、書道教室、みやげ物屋などと連携することで、現地国で提供してみようというものです。今まで構築してきたさまざまな企業との連携が威力を発揮できるかもしれません。

こうした取り組みによって、すぐに従来の収益水準まで挽回できるわけではありませんが、既存の訪日ニーズを維持するだけでなく、コロナ後の訪日ニーズの増大につながったり、潜在的な訪日ニーズを開拓したりといった効果も期待できそうです。

その後ミロク旅行社では、従来取引のあった企業に限らずさまざまな企業との連携を始めるなど、新たなサービス提供の可能性を探り、業績好調な業種に属する企業との新たな連携も模索していきました。訪日での旅行業務そのものが減少したことにより生じた従業員の余裕勤務時間を活用する等、既存の経営資源を活用するように努力するとともに、多角化によるリスク分散を図りながら、新たな収益機会を探っています。

ワンポイント解説

「多角化によるリスク分散」

特定の事業分野や顧客層への依存度が高い場合などには、その需要動向により収益が大きな影響を受けることになります。収益の幅を拡げることでリスク分散を図ることを検討しておくことも必要になるでしょう。自社の強みを活かせるような他業種と連携を図るのもその一つです。

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