債務超過を解消する特効薬(その2)! 仕方ない、“あれ”を売ろう! 何を売る?
2021年7月3日
質問
債務超過に陥ってしまった「みろく工業」。債務超過を解消するために、あるものを売却しようとしていますが、何を売却すれば良いのでしょうか?
パターン1
社長の持つ会社の株式
パターン2
業績の良い子会社
パターン3
取引先から受け取った約束手形
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リストラをして、何とか利益が出始めた会社
「みろく工業」は、社長が30年前に創業した小さな会社です。以前に比べて従業員数はだいぶ減りましたが、経費削減策にも成功したことで何とか利益が回復し始めています。
最近でこそ、利益が出るようになってきたみろく工業ですが、1年前は債務超過に陥って大ピンチだったのです。
1年前 ~債務超過になった! とにかく利益だ!
みろく工業には光る技術があることで売上は順調に増えてきましたが、この数年間は得意先の倒産などもあり、受注が減少し、毎年大幅な赤字が続いていました。そして、ついに債務超過に陥ってしまったのです。
期末日を過ぎた最初の経営会議で経理部長が経営幹部に対して説明をしました。
経理部長 | お手元の貸借対照表のとおり、今期はついに債務超過に陥ってしまいました。何とか手立てを打たなければ、銀行からの追加融資も受けられません |
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社長 | 何だって! そりゃ大変だ。どうすれば債務超過を解消できるんだ? |
経理部長 | もちろん。増資に応じてくれるスポンサーがいればいいのですが、そんなスポンサーもすぐには見つかりそうもないですし……。実は、債務超過を一気に解消する特効薬がないわけではないのですが…… |
営業部長 | その特効薬を教えてくれ! 売上で貢献できない分、何かしたいんだ |
総務部長 | そうだ! 我々管理部門でも何かできることはないのか? |
経理部長 | 最後は“あれ”を売るしかないと思っているのです…… |
一同 | “あれ”……? |
と、ちょうどそのとき、経理部長が、銀行から電話がかかってきたということで会議室を出ていきました。
そして、残された経営幹部が、売却すべき“あれ”について議論を始めたのですが……。
社長 | 経理部長の言っていた“あれ”っていうのは、私が持っているこの会社の株のことかな? こうなったら仕方ない。私も首を洗って待つしかないのか…… |
---|---|
総務部長 | いや、社長、さすがに経理部長でも社長の持株について口出しはしないんじゃないでしょうか。むしろ、うちには業績の良い子会社があります。あの子会社を売るってことじゃないでしょうか? |
社長 | それもないとは言えないな。でも、あんな小さな会社を買いたい人がいるのか? |
営業部長 | 社長、実は私は最近、簿記の勉強を始めたのですが、そこで手形売却損というのを習いました。うちには取引先から受け取った約束手形がたくさんあります。それを売って、手形売却益を計上するということではないでしょうか? |
社長 | なるほど、そういう手もあるな |
質問
債務超過に陥ってしまった「みろく工業」。債務超過を解消するために、あるものを売却しようとしていますが、何を売却すれば良いのでしょうか?
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パターン1
社長の持つ会社の株式
パターン2
業績の良い子会社
パターン3
取引先から受け取った約束手形
社長の持つ会社(=みろく工業)の株式を売却しても、会社の株主が変わるだけで、債務超過は解消できません。他に売却できるものを検討した方が良さそうです。
実は経理部長が考えていた、売却できる“あれ”とは業績の良い子会社でした。では、子会社を売却するとなぜ債務超過を解消できるのでしょうか?
手形売却損とは、約束手形(受取手形)を銀行で割引した場合の金利部分を言います。手形を割引すれば資金が入りますから、資金ショートは避けられるかもしれませんが、債務超過は解消できません。また、そもそも手形売却益というものは存在しません。他に売却できるものを検討した方が良さそうです。
若手経理部員に教えてもらった、売却する“あれ”とは
経理部長が席を外した後、経営幹部でしばらく資金調達方法について議論をしていましたが、やがて経理部の若手社員が会議室に入ってきました。
若手経理部員 | 失礼します。経理部長が、すぐに銀行に行かなければならなくなったので、会議を続けてください、とのことです |
---|---|
社長 | そうか、分かった。ありがとう。あぁ、そうだちょうどいい。君に教えてもらいたいんだが、経理部長が、債務超過を解消するために、“あれ”を売却する案があると言っていたのだが、それは私の持っているみろく工業の株式のことだろう? |
若手経理部員 | えっ、社長の持っているみろく工業株を売却しても、会社の株主が変わるだけで会社の貸借対照表には変化がありませんから、債務超過は解消できませんが…… |
社長 | 何だ、私が株を売ってもダメなのか |
営業部長 | それなら、取引先から受け取った、あの大量の約束手形を売るのはどうだろう? |
若手経理部員 | もしかして手形売却のことですか? それは手形を銀行に割引に出して現金化することなので、金利分が損となるだけで、益は出ませんが…… |
総務部長 | もしかして、やっぱり子会社か? |
若手経理部員 | それはあり得ると思います。うちの子会社は、規模は小さいものの、特殊な技術がありますから。もし売却するとなったら、買い手はたくさん出てくると思いますし、高値で売れると思います |
社長 | なるほど、そういうことだったのか |
若手経理部員 | 子会社の売却により、損益計算書の特別利益に子会社株式売却益が多額に計上されるため、貸借対照表の利益剰余金が改善し、純資産がプラスになるかもしれません |
そう言うと、若手経理部員は以下のような例を作って説明してくれました。
(債務超過の状態)
(子会社を売って、当期純利益が3千万円となった場合)
一同 | なるほど~ |
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その後、社長と経理部長はM&Aの仲介会社やコンサルティング会社などに相談し、高値で子会社を買い取ってくれる会社を探すことに成功し、債務超過を解消できました。
こうして、みろく工業は債務超過が解消され、銀行からの融資も継続してもらえることになりましたが、みろく工業のそもそもの収益性が改善されたわけではありませんから、赤字を計上すればまた債務超過になってしまいます。
そこで、社長は経営幹部と相談をしながら、厳しいリストラ策を検討し、現状の売上でも利益が出る体制づくりを始めたのでした。
「子会社の売却」
債務超過などに陥った会社は、通常の営業では利益が計上できないため、業績の良い子会社や事業を売却することで売却益を計上し、債務超過を解消することがあります。ただし、赤字体質から抜け出せていないとその後に赤字決算が続き、やがて債務超過に戻ってしまいます。子会社等の売却と併わせて本業部分のリストラ等による業績改善策を早急に検討する必要があります。セミナー情報
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