コロナ禍で1年先なんて読めない! 予算の弱点を補う方法とは??
2021年1月13日
質問
新型コロナ禍で、来期の予算の作成を始めた「みろく商事」。とりあえず来期の予算は完成しましたが、コロナの感染状態が刻一刻と変化する中、社長はこの予算で1年間走って良いか悩んでいます。あなたが経営者なら次のうちどの方法を選びますか?
パターン1
従業員のコミットメントがあるので、予算は一切修正しない。
パターン2
毎月毎月、コロナの状況を見ながら予算を修正する。
パターン3
1年先は読めないので、予算をやめる。
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コロナ禍でも利益を確保している会社
「みろく商事」は、企業向けに事務機器等を販売する卸売企業です。2020年のコロナ禍では取引先企業のリモートワーク化などにより営業活動が思うようにできず、利益は相当減少してしまいました。
しかし、新しい年度では、コロナの状況に合わせて臨機応変に営業活動を変えながら、経費を削減し、何とか利益を確保しています。
今でこそ、コロナ禍に負けず、会社は利益を維持できていますが、今期の年度予算を作成したときには、刻一刻とコロナの状況が変わる中、予算をどうするか悩んだのです。
刻一刻と状況が変化する中、年度予算はどうしたらいい?
みろく商事では、コロナ禍でひどい目にあった2020年、その終わりに、来年度の年度予算を作成しました。各事業部長が、現状のコロナ禍の状況を踏まえて、1年間の状況を想定し、予算を作ったのです。
そして、その年度予算を取締役会で決議した日の夕方。経理部長が社長室に飛び込んできました。
経理部長 | 社長、大変です! |
---|---|
社長 | どうした、経理部長。予算の計算式に間違いでもあったのか? もう取締役会で決議したから、今さら修正はできないぞ~ |
経理部長 | そんなのんきなことを言ってる場合じゃないですよ。さっきテレビで東京の感染者数が爆発的に増えたって、ニュースで言っていたんです |
社長 | 何だって? また緊急事態宣言か? |
経理部長 | そうなってもおかしくはありません。さっき決議した予算はどうしましょう…… |
社長 | まいったな~。決議を受けた予算は、緊急事態宣言が出るような状況は想定していないぞ。すぐに予算を修正した方がいいかもしれないぞ |
経理部長 | それでは、事業部長のコミットメントにかかわります。コミットした予算を何としてもやり抜いていただいた方がいいんじゃないでしょうか |
社長 | 確かにそうだが……。そもそも、コロナの状況に一喜一憂しているときに予算なんか作って意味があるのかな……。コロナ禍で1年先なんて読めないよ |
質問
新型コロナ禍で、来期の予算の作成を始めた「みろく商事」。とりあえず来期の予算は完成しましたが、コロナの感染状態が刻一刻と変化する中、社長はこの予算で1年間走って良いか悩んでいます。あなたが経営者なら次のうちどの方法を選びますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
従業員のコミットメントがあるので、予算は一切修正しない。
パターン2
毎月毎月、コロナの状況を見ながら予算を修正する。
パターン3
1年先は読めないので、予算をやめる。
従業員が年度予算にコミットすることは、予算を達成するうえでは大切なことです。しかし、コロナの状況が変われば、そもそもの前提が変わったわけですから、そのままの予算というわけにもいきません。何か工夫が必要そうです。
実は社長が選択したのはパターン2でした。毎月毎月、予算を修正するとはどういうことでしょうか?
経営環境が激しく変化する中では予算を作ることに意味がないようにも思われます。しかし、予算がなければ、従業員が日々何を目標に、どの程度の経費を使って活動すれば良いかが分からず、混乱が生じる可能性があります。
公認会計士の姉に教わった、予算の欠点を補う方法
取締役会が終わり、社長が自宅に戻ると、妻がパソコンの画面に向かって、妻の姉と何やら楽しそうに話していました。妻の姉は、公認会計士です。
社長 | こんばんは。お姉さん。コロナで仕事が大変じゃないですか? |
---|---|
姉 | そうね~。緊急事態宣言の頃は大変だったけど、今は結構普通にクライアントを訪問して監査してるわよ |
社長 | そうそう、教えて欲しいんですが、今日、来年度の予算を取締役会で決議したんです。ところが感染者数がこんなに増えちゃったでしょ。予算は修正して決議し直した方がいいんでしょうかね~ |
姉 | この時期の予算は大変ね~。そもそも、予算には柔軟性に欠けるっていう欠点があるから |
社長 | そうそう。コロナの環境がこれだけ変わる中で、予算作っても意味がない気がするんですよ。何かいいアイデアはありませんか? |
姉 | それなら、ローリング予算がいいかもしれないわ |
社長 | ローリング予算? |
姉 | 例えば、最近の状況を踏まえて、今後3カ月間だけの予算を作るの。そして、1カ月経ったら、予算と実績の差を分析して、さらにそのときのコロナの状況を見て、またそこから3カ月間の予算を作るのよ |
社長 | なるほど。常に3カ月間の予算を修正し続けるわけですね |
姉 | 1年間の予算を作ってローリングしてもいいけど、こんな状況では1年先なんて読めないから、3カ月でもいいと思うわ |
社長 | ありがとうございます。早速試してみます |
その翌日、社長は事業部長に、今のコロナの状況を踏まえて3カ月間の修正予算を作るよう指示を出しました。
「ローリング予算(転がし予算)」
例えば、1年間の予算を設定し、1カ月が経過するごとに、そこから1年間の予算を作る方法を言います。なお、6カ月や3カ月の予算とすることも考えられます。こうすることにより、常に予算を修正することになるため、環境変化に対する柔軟な対応が期待できます。なお、事業計画を作る際も、3年間の事業計画を作り、1年経過するごとに3年間の事業計画を修正していく方法をローリング方式と言います。
セミナー情報
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