大幅なコスト削減のために経営者が行ったモノ作り改革とは?

2020年12月23日

製造業

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2020/12/23

質問

これまで資材の変更や作業の効率化によって原価低減努力を続けてきた「ミロク音響機器」ですが、これ以上の原価低減は難しいと行き詰まりを感じています。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか?

パターン1

企画・設計プロセスでのコスト削減を厳しく指示する。

パターン2

製造プロセスでのコスト削減を厳しく指示する。

パターン3

営業プロセスでのコスト削減を厳しく指示する。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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コスト削減が進んだメーカー

「ミロク音響機器」は、高品質のオーディオを作り続ける老舗音響機器メーカーです。規模はそれほど大きくありませんが、製品の企画・設計から製造・販売まで一貫して自社で行っており、大手メーカーにも引けをとらない低価格で高品質なオーディオ機器を作り続けています。オーディオ機器の低価格化が進む中で、厳しいコスト競争にも負けずに新製品を生み出し続け、自社製品をひいきにしてくれる多くのファンを獲得しています。

ある日のランチタイム。同期入社の3人が社員食堂でランチをしながら楽しそうに会話をしています。3人はそれぞれ、営業部門・製造部門・開発部門に所属しています。

営業部員 いやぁ、うちの製品、お客さんから本当に評判いいよ。お客さんの声がモノ作りに活かされているし、それでいて他社製品よりも安いんだからね
製造部員 以前よりだいぶ安く作れるようになったから、この価格で売ってもしっかり利益が出せるんだよ
開発部員 知恵を出し合って皆で一緒にモノ作りをしてる感じがして、本当にやりがいがあるよ

いったい、ミロク音響機器のモノ作りはどのように変化したのでしょう。低価格で高品質な製品を生み出すことができる秘訣とは? ちょっと、数カ月前の様子を見てみましょう。

数カ月前 ~資材の高騰とコスト競争の激化

ある日の経営会議、社長と製造部長の言い争う声が聞こえてきます。音響機器の低価格化が進んでいる中、ミロク音響機器の製品もある程度価格を下げざるを得ない状況です。

社長 この状況で利益を出すには、さらに低コストでモノ作りをせざるを得ない。製造部長、最近コスト削減が思わしくないようだが、努力が足りないのではないか?
製造部長 社長、お言葉ですが、製造部門の社員はコストを1円でも安くするため日々弛まぬ努力をしております。資材の調達先も見直し、製造プロセスもこれ以上ないほどに効率化を図ってきました。これ以上コストを下げろというのでは、品質を下げるほか道はありません!
社長 す、すまない。品質を下げてしまっては元も子もない。しかし、コストをさらに引き下げられなければ、利益を生み出すことはできない。いったい、コストを削減するためにはどうしたら良いのか……

ミロク音響機器はさらなるコスト削減の必要性に迫られています。しかし、製造部長が強調するように、製造部門は既にかなりのコスト削減努力をしているようです。品質を下げずにさらなるコスト削減を進めるためには、どうしたら良いのでしょうか。

質問

これまで資材の変更や作業の効率化によって原価低減努力を続けてきた「ミロク音響機器」ですが、これ以上の原価低減は難しいと行き詰まりを感じています。あなたが経営者なら次のうちどの行動をとりますか? 

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

企画・設計プロセスでのコスト削減を厳しく指示する。

パターン2

製造プロセスでのコスト削減を厳しく指示する。

パターン3

営業プロセスでのコスト削減を厳しく指示する。

ミロク音響機器の社長が選択したのはパターン1でした。製造部長と議論する中で、社長は製造プロセスだけではこれ以上のコスト削減は厳しいと考え、コスト削減の制約になっているものは何かを考え始めました。どういうことかと言うと……

製造プロセスや資材調達の方法を見直すことはコスト削減の上で重要ですが、ミロク音響機器ではいずれについても十分に取り組んでいるようで、これ以上のコスト削減を行うには限界がありそうです。それどころか、限界を超えた厳しいコスト削減目標が設定されると、社員のモチベーションの低下を引き起こし、目標達成につながらないかもしれません。

製造プロセスでのコスト削減が難しいのであれば、より下流の営業プロセスを見直すことでコスト削減ができるかもしれません。しかし、営業プロセスに至るまでに既に多くのコスト発生が決まってしまっており、削減効果は限定的かもしれません。

コスト大幅削減のために注目すべきことは、もっと前にあった!?

社長は、コスト削減の方法を検討するために、他の部門の担当部長にも参加してもらい、経営会議を行うことにしました。

社長 音響機器の低価格化が進んでいることは皆も承知しているだろう。販売価格が下がっている中で利益を生み出すためには、大幅にコストを下げる方法を考えなければならない
一同 ……
社長 製造部門は本当によく頑張ってくれているが、製造部門だけでのコスト削減は限界のようだ。何か良い方法はないだろうか?
製造部長 私たちは、品質を落とさずに設計どおりの製品をいかに効率的に作るかに努力してきましたが、これ以上のコスト削減は、品質を落としてしまうことにもなりかねません
開発部長 製造部門から設計どおりに作りにくいなどの声をいただくこともありますが、すでに製品の仕様が確定しているので、なかなか変更が難しいことも多いのです
営業部長 使用時の感想やクレームをお客様からお聞きした場合も多いです。こんな機能はいらない何てこともあるんですが……
開発部長 そうです。設計が済んでしまうと、大幅な仕様変更は難しくなってしまいます
社長 なるほど。確かに設計が済んでしまったあとは、改善できる余地がほとんどなくなってしまうのかもしれないな
経理部長 そういえば、先日参加したコストマネジメントセミナーでも似たような話を聞きました
社長 ちょっと説明してくれるかい
経理部長 実際にコストが発生するのは製造段階なんですが、コストの発生が確定するのは製造よりも上流の企画・設計段階だと言うんことなんです

経理部長はセミナーの資料を取ってくると、それを見返しながら、説明をしました。そのポイントは次のとおりです。

・コストが実際に発生するのは製造段階以降ではあるものの、コストの発生が決定してしまうのは、製造より前段階の商品企画・設計の段階であること

・製造の前段階でコストの発生は80%ほど確定してしまうため、製造段階以降のコスト削減の余地は、実はあまり大きくはないこと

・大幅なコスト削減を行うためには、設計が固まる前段階で、社内外の知識を結集してコスト削減の方法を検討する必要があること

社長 コストを大幅に削減するためには、製造よりも上流段階でコストの作り込みを行う必要があるのかもしれないな


そこで社長は、思い切ってその後の製品開発については体制を改めることにしました。これまでは開発部門が自社の技術ベースで設計し、その後、その設計に沿って製造が行われるという開発体制をとっていましたが、製造部門・経理部門・営業部門・開発部門が製品開発プロジェクトチームを構成し、それぞれの部門が持つ知識を結集して、設計を完成させるという体制に変更したのです。

その結果、各部門から出たアイデアによって、顧客があまり使用していないという不要な機能が取り除かれたり、他の製品との部品の共通化が行われたりと、原価企画により、製造部門だけでは成しえなかったコスト削減が次々と実現されていくこととなりました。低価格・高品質なモノ作りを実現するためには、上流段階から、部門の壁を越えたコスト削減と製品開発が行われる必要がありそうです。

ワンポイント解説

「原価企画」

原価企画とは、製品の企画・開発・設計の段階から目標利益の達成に向けて原価の作り込みを行う統合的なコストマネジメントです。製品開発の源流段階から、開発、設計、製造、営業、経理、さらにはサプライヤーをも巻き込みながらプロジェクトチームを形成し、各職能部門が知識を結集して目標利益の実現を目指します。

お知らせ

2021年1月3日号は、年末年始休暇中のため休載とさせて頂きます。次号は2021年1月13日号となりますので、引き続きご愛顧くださいますようお願い申し上げます。

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