過剰借入のチェック方法(その2) 創業8年、こんなに利息が増えても払い続けられる?

2022年10月23日

質問

創業から8年、急成長を続ける「ミロ子システム社」のミロ子社長。P/Lの支払利息が増えてきて、会社の収益力に比べて大き過ぎるのではないかと不安になりました。皆さんが経営者なら、支払利息の大きさと比較すべき“会社の収益力”として何を使いますか?

パターン1

支払利息の大きさと、「売上高」を比べる。

パターン2

支払利息の大きさと、「営業利益」を比べる。

パターン3

支払利息の大きさと、「当期純利益」を比べる。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

ミロ子
食事

増収増益を達成した会社

8年連続で増収増益を達成した「ミロ子システム社」のミロ子社長。まだ20代の若手経営者ですが、かなりのやり手です。従業員の平均年齢も20代半ばで、経営幹部も皆20代というとても若い会社です。

今日は、ミロ子社長が経営幹部の前で年度末の挨拶をしています。

ミロ子社長 今期も皆さんの努力のおかげで増収増益を達成できました。本当にありがとうございます
幹部社員たち 社長、おめでとうございます!
ミロ子社長 うちの会社はこれまで投資に投資を重ねて、成長をしてきましたが、来期も借入をして、さらに投資を行って、増収増益を目指しましょう
幹部社員たち おーっ!

来期も積極的な投資を行う決心がついたミロ子社長ですが、数カ月前は、支払利息が増えてきたことから、借入を増やして投資するべきかどうか悩んだのです。

数カ月前 ~気づいたら借入の支払利息がこんな金額に! 今後も払い続けられるの?

第8期が終わろうとしていた時のことです。ミロ子社長が経営会議で今期の損益計算書を見たとき、ついに支払利息が3千万円を超えていることに気づきました。

ミロ子社長 ちょっ、ちょっと待って。このP/Lの支払利息が3千万円って本当なの?
管理担当役員 はい。毎年の投資のために借入を増やした結果、ついに支払利息が年間で3千万円に増えてしまいました
ミロ子社長 大丈夫なの? こんなに支払利息が増えて。うちの会社の収益力でちゃんと払っていけるの?
管理担当役員 銀行の担当者はむしろもっと借りてほしいって感じでしたよ
ミロ子社長 貸す方は気楽かもしれないけど、借りる方はちょっと怖くなってくるわ……。皆はどう思う? うちの収益力に対して支払利息が大き過ぎる気がしない?
営業担当役員 支払利息が大き過ぎるかどうかは、売上高と比較してみたらどうでしょう。売上高が30億円ですから、支払利息の100倍の売上高ですね。それほど支払利息が大きいとも思えませんが……
開発担当役員 いや、売上高ではなく、営業利益と比較した方がいいんじゃないでしょうか。営業利益は3億円ですから、支払利息の10倍の営業利益ですね。これってどうなんだろう? それほど支払利息が大きくない気もしますが……
管理担当役員 むしろ当期純利益で比較した方がいいんじゃないかな? うちの当期純利益は1億5千万円ですから、支払利息の5倍ですね。これって大きいのかな? 大きくないのかな?
ミロ子社長 支払利息の大きさと比べるべき、会社の収益って一体何なのかしら?

質問

創業から8年、急成長を続ける「ミロ子システム社」のミロ子社長。P/Lの支払利息が増えてきて、会社の収益力に比べて大き過ぎるのではないかと不安になりました。皆さんが経営者なら、支払利息の大きさと比較すべき“会社の収益力”として何を使いますか?

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パターン1

支払利息の大きさと、「売上高」を比べる。

パターン2

支払利息の大きさと、「営業利益」を比べる。

パターン3

支払利息の大きさと、「当期純利益」を比べる。

確かに、売上高と支払利息を比較する売上高対支払利息率(支払利息÷売上高×100%)という指標がありますが、赤字の会社でも売上が大きければ売上高対支払利息率は良好ということも起こり得ますから、より適切な他の指標を考えるべきでしょう。

実はミロ子社長が選んだのはパターン2でした。なぜ支払利息と営業利益を比べることにしたのでしょうか……。


当期純利益は企業の最終的な利益を示すP/Lの数値ですから、支払利息と比較するのには良いとも思えますが、利息の支払能力を判断するためには他の指標の方が分かりやすいでしょう。


金融のことは金融のプロに聞くに限る

経営幹部と支払利息について議論をした日の夜。ミロ子社長は銀行に就職した大学の同級生と食事をしていました。

同級生の銀行員 今期もまた増収増益になりそうなんだって? 大したもんだな
ミロ子社長 ありがとう。でも、毎日不安なことばっかりで疲れるわよ
同級生の銀行員 「へ~。いつ株式上場してもおかしくないような会社の社長が不安なんてあるんだね~
ミロ子社長 そうそう。ちょうどいいわ。今日ね、会社で幹部の皆と議論をしたの。支払利息が大き過ぎるんじゃないかって。
同級生の銀行員 借入が増えてくると、支払利息が結構な金額になるからな~
ミロ子社長 それでね、支払利息がうちの会社の収益力に対して大き過ぎないかどうかを知りたいんだけど、売上高と営業利益と当期純利益のどれと比べるべきかしら?
同級生の銀行員 あぁ、それね。それなら、P/Lの並び方を見てみると分かるよ

そう言って、同級生の銀行員が近くの紙ナプキンに以下のようなP/Lを書きました。

図表
同級生の銀行員 P/Lの営業外費用に支払利息があるでしょ。この支払利息って、どの利益から払っている?
ミロ子社長 えーっと。営業利益の下に支払利息があるから、営業利益から払っているってこと?
同級生の銀行員 そういうこと。営業利益から支払利息を払うんだから、営業利益が支払利息の何倍あるかが大事ってこと
ミロ子社長 なーるほど。そう考えればいいのね。意外とシンプルね
同級生の銀行員 営業利益を支払利息で割った数値をインタレスト・カバレッジ・レシオって言うんだ。これが何倍以上あればいいかはいろいろと言われているけど、まぁ、10倍以上あったら安心だね
ミロ子社長の心の声 <なるほどね。支払利息は営業利益から支払うから、支払利息を十分払えるだけの営業利益があればいいってことね。うちの会社は営業利益が3億円、支払利息が3千万円だから、3億円÷3千万円で10倍ね。支払利息が大き過ぎるってことはなさそうだわ>

ワンポイント解説

「インタレスト・カバレッジ・レシオ」

借入の利息の支払能力を示す指標であり、営業利益を支払利息で割って求められます。なお、様々な計算式があり、(営業利益+受取利息+受取配当金)÷(支払利息+割引料)などもあります。
インタレスト・カバレッジ・レシオは10倍以上あれば支払利息の支払能力に問題ないと言われることがあります。

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