新米社長の失敗事件簿(4)! なぜ、会社の土地は減価償却しないんだ?

2023年11月13日

質問

親会社のシステム部長の新米さんが、子会社に社長として出向してきました。その新米社長が経理主任に、「土地の減価償却を忘れてるぞ」と言っています。あなたが経理主任なら社長に何と説明しますか?

パターン1

あっ、忘れてました。土地も減価償却しなければいけません。

パターン2

土地の相場価格は下がることがないから、減価償却しないんです。

パターン3

土地は永久に使えるから減価償却しないんです。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

会社
決算

自宅を売って儲かった新米社長

「みろ子工業」は従業員30人程度の小さな会社であり、上場企業である「みろ親商事」の子会社です。そのみろ親商事のシステム部長だった強面の新米さんが、みろ子工業に社長として出向してきました。新米さんが人事担当役員からみろ子工業への出向を打診されたとき、新米さんは経営も会計も全く知識がないからと断ったのですが、人事担当役員から「将来の経営幹部として経営や経理・財務の勉強をしてもらうためだ」と説得され、しぶしぶ出向を承諾したのです。

その日、経理部のメンバーは決算作業に追われて大忙しでした。ところが、新米社長だけは朝から上機嫌で、いつもなら低血圧だからと不機嫌そうな顔をしているのに、今日は鼻歌交じりで出社してきたのです。

社長、この決算仕訳を確認しておいてください。ところで、何かいいことでもあったんですか?


経理主任


新米社長

えっ、俺のこと? 何? 分かるか? そう、ちょっといいことがあってね。聞きたいか?

決算作業で大忙しの経理主任は社長の自慢話など聞いている暇はなかったのですが、そうも言えません。


新米社長

実はな。最近、土地の値段が上がってるだろう。それで、我が家もいよいよ今の家を売って、引っ越しすることにしたんだ

あ~、昨日おっしゃってましたね。例の雨漏りする家ですね


経理主任


新米社長

そうそう、そうしたら、昨日、びっくりするような値段で売れたんだ。それで、今夜は家族で焼肉に行くことになったんだ♪

じゃあ、この決算が終わったら、経理部メンバーにも焼肉をおごってくださいね!


経理主任

やったー!


経理部メンバー


新米社長

えっ……

経理部メンバーの大歓声に戸惑う新米社長ですが、実は昨日、ちょっとした事件があったのです。

土地を忘れてるじゃないか!

新米社長が上機嫌だった、その前日のこと。新米社長が決算仕訳の一覧表を見ながら、経理主任を呼びつけました。


新米社長

うちの固定資産には、本社の土地と建物と、それから工場の土地と建物、それに機械があるだろう

はい。主な固定資産はそれぐらいです


経理主任


新米社長

それでね、私は見つけたよ。君のミスを!

えっ、何か間違っていましたか?


経理主任


新米社長

聞きたいか? この減価償却費の一覧表を見たまえ。土地を忘れてるじゃないか

えっ??


経理主任

質問

親会社のシステム部長の新米さんが、子会社に社長として出向してきました。その新米社長が経理主任に、「土地の減価償却を忘れてるぞ」と言っています。あなたが経理主任なら社長に何と説明しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

あっ、忘れてました。土地も減価償却しなければいけません。

パターン2

土地の相場価格は下がることがないから、減価償却しないんです。

パターン3

土地は永久に使えるから減価償却しないんです。

土地は、建物や機械などの固定資産と違って減価償却費を計上しません。建物や機械などは減価償却するのに、土地は減価償却しない理由は何でしょうか。

土地を減価償却しないのは、土地の相場価格が下がらないからではないのです。実際に土地は値下がりすることもよくあります。では、土地を減価償却しない理由とは何なのでしょうか。

実は、土地を減価償却しない理由は、土地は永久に使えるからなのです。さて、新米社長はちゃんと理解できたでしょうか……。

ポイントは、相場価格ではなく、耐用年数!

新米社長が経理主任に土地の減価償却を忘れていると“したり顔”で指摘したとき、経理主任も、これまた“したり顔”で、新米社長に説明を始めました。

社長、土地は減価償却費を計上しないんです


経理主任


新米社長

えっ、そうなのか? じゃあ、君は間違っていないってことか?

そうです。では、なぜ、土地は減価償却しないか分かりますか?


経理主任

新米社長はしばらく腕を組んで考えてから言いました。


新米社長

分かった。土地は値段が下がらないからだな!

う~ん、ちょっと違うんですが……


経理主任


新米社長

良かった。安心した。実は、今の家を売りに出していてな。今日あたり不動産屋さんから価格が出てくるんだ。やっぱり期待していいってことだよな

経理主任は社長の話をさえぎるように続けました。

建物や機械は、耐用年数、つまり使用できる年数が経てば、使えなくなりますよね。つまり価値がなくなります


経理主任


新米社長

だから、毎年、価値が減った分を減価償却費として費用にするんだろう。ちゃんと私だって勉強したんだよ。100万円で買った建物を、10年で減価償却したら、100万円÷10年=10万円、毎年10万円の減価償却費だ

そうです。残存価額がゼロの場合ですね。では、土地の耐用年数は何年だと思いますか?


経理主任


新米社長

土地は……、永久に使えるぞ

つまり、耐用年数が無限大ってことです。だから100万円の土地を無限大で割って、毎年の減価償却費はゼロなのです。要するに、土地はいくら使っても価値が下がらないから減価償却しないってことです。


経理主任


新米社長

なるほど、そういうことだったのか。土地の相場とは関係ないのか~。そんなことより、うちの家の値段はどうなると思う? 建ててからもう30年も経っていて、雨漏りもするんだ

私に分かるわけないじゃないですか!


経理主任

「減価償却費」

建物や機械などの固定資産は毎年、その使用により価値が減少するため、その減少分を減価償却費として費用に計上します。ただし、土地については使用しても価値が下がらないため、減価償却費は計上しません。

固定資産の物件管理業務や減価償却・償却資産の計算業務、法人税申告書関係の作成業務等の効率化に興味のある方はコチラもご覧ください。

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