ROEを高める資金調達方法 ~設備買換えの資金不足のケースで考えるROEへの影響

2026年2月3日

質問

「ミロク機械工業」はROE(自己資本利益率)を高めることを重視している企業です。機械部品を製造する機械の老朽化が目立つようになり、より効率性の高い機械に買換えて売上や利益を増やそうと考えていますが、自己資金だけでは新しい設備を導入するのが難しい状況です。ROEを高める観点から、あなたが経営者なら次のうちどの資金調達方法を選びますか?

パターン1

自己資金が貯まるまで新しい設備は導入しない。

パターン2

銀行から借入れを行う。

パターン3

増資を行う。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

工場部品
業績

製造機械の老朽化問題

「ミロク機械部品工業」は、先代の社長が創業した機械部品を製造する中堅企業です。高度成長期に会社は発展し、納品先も増え、事業を拡大してきました。しかし、先代の時代に購入した製造機械も老朽化し、買い換えなければならなくなっています。社長は、どうせ買い換えるなら、人手不足の緩和にも貢献するような、より効率的な機械に取り替えたいと考えています。より効率的な機械を導入した場合、現在、キャパシティを超えているとしてお断りしている注文にも対応でき、売上や利益の増加が期待できます。

ROE(自己資本利益率)とは

ROEは経営効率や資本の活用度を示す指標で、金融機関や投資家からの評価にもつながります。そのため、ミロク機械部品工業ではROEを高めることを重視しています。
ROEは、会社が株主から預かった資本をどれだけ効率よく利益に変えているかを示すもので、次のように計算します。

図1

①:売上高当期純利益率、②:総資本回転率(総資産回転率)、③:財務レバレッジ

ROEは①から③の3つの指標に分解して考えることができます。

新しい設備を導入するためには資金が必要ですが、自己資金だけでは足りません。そこで、ROEを高める観点から、どの資金調達方法を選ぶべきか、社長は悩んでいます。

質問

「ミロク機械工業」はROE(自己資本利益率)を高めることを重視している企業です。機械部品を製造する機械の老朽化が目立つようになり、より効率性の高い機械に買換えて売上や利益を増やそうと考えていますが、自己資金だけでは新しい設備を導入するのが難しい状況です。ROEを高める観点から、あなたが経営者なら次のうちどの資金調達方法を選びますか?

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パターン1

自己資金が貯まるまで新しい設備は導入しない。

パターン2

銀行から借入れを行う。

パターン3

増資を行う。

自己資金だけで設備投資を行う場合、借入や増資をしないため、会社の負債や自己資本に変化はありません。ROEは、利益が増えれば高まりますが、新設備の導入が遅れることで売上や利益の増加チャンスを逃す可能性もあります。「安全重視」の選択ですが、ROEを高めることにはつながりにくいかもしれません。

銀行から資金を借りて設備投資を行うと、負債が増え、総資産も増加します。新しい設備で利益が増えれば、自己資本に対する利益の割合であるROEは高まる可能性があります。借入による「財務レバレッジ効果」で、少ない元手でも大きな利益をねらえるのが特徴です。ただし、利益が増えなければ、利息負担でROEが下がるリスクもあるので注意が必要です。

増資(新たに株式を発行)して資金を調達する場合、自己資本が増えます。新設備の導入で利益が増えても、自己資本が増える分、ROEはあまり高くならないことがあります。財務的な安全性が高まる選択ですが、ROEを高めるには、増資による資本増加以上に利益を伸ばすことが必要です。

設備買換えの資金調達方法をどうする?

社長が製造機械の買換えのための資金調達方法に悩んでいるとき、財務部長との間で次のような話し合いがありました。


社長

製造機械の買換えのための資金をどうやって、調達しようか?

現在保有している現金預金では買換えができないので、新設備を導入するには別のかたちで資金を用意しなければなりませんね


財務部長



社長

どんな方法があるかな?

事業で使用していない遊休資産があれば、それを売却することもあるのですが、遊休資産はないですねぇ。ですから、新たに資金調達するしかないと思います。大別するならば、借金するか、元手を増やすかです。要するに、負債を増加させるのか、払込資本を増加させるのかです


財務部長



社長

どちらの方がいいのかな?

それぞれ、長所も短所もありますね


財務部長



社長

というと?

借入が少なすぎる場合は、自己資本だけで事業を運営している状態となり、せっかくの自己資本を十分に活用して事業規模を拡大できていないと見なされることもあります。一方で、増資をする場合は、自己資本が厚くなり財務の安定性は高まりますが、自己資本の活用度が下がる可能性もあるため、バランスが重要です


財務部長



社長

わが社の場合は?

1つの指標として、財務レバレッジがあります。自己資本の何倍の総資産を利用しているのかを示す指標です。いわば、少ない元手でどれだけ多くの資産を利用できているのかを示すものです。ただし、財務レバレッジが高すぎると、財務状態が悪い企業と思われ、取引にも影響が出てきます


財務部長



社長

どうすればいい?うちの財務レバレッジはどれくらいなのかな?

わが社の場合は、現状は自己資本10億円、総資本20億円で財務レバレッジは2倍です


財務部長


資金調達方法の違いによるROEへの影響


社長

ところで、うちはROEを高めることを重視しているが、資金調達方法の違いでROEにはどんな影響があるのかな?

そして、財務部長はROEへの影響を次のように試算してみました。

図2

今回、設備投資に必要な5億円を銀行から借入れた場合、総資本は25億円となります。新設備導入によって、売上高は50億円から55億円、純利益は1億円から1.5億円に増加すると見込んでいます。借入5億円の年利2%(0.1億円)を差し引くと、純利益は1.4億円となります


財務部長



社長

この場合、ROEは銀行借入で新設備導入をするケースが最も高くなると見込まれるわけか

新設備導入による売上・利益の増加に加えて、財務レバレッジが高まる影響が大きいですね


財務部長



社長

少ない自己資本でより大きな利益を獲得できるってことだな

借入や増資などの意思決定は会社の成長状況等によって異なるため、数字だけで判断できないことは当然ですが、ミロク機械部品工業では、さらなる検討の末、銀行からの借入れによる新規資金調達を目指すことになりました。

その後の課題

社長は、この度の借入れを行うことができた後、自己資本と総資産、負債と総資産、負債と自己資本との関係を意識して、経営を行うようになりました。効率的な経済的資源の活用と、財務上の安全性等について理解することが大切であり、財務に関係する従業員だけでなく、社内での研修にも、こうした財務比率の勉強を取り入れるようになりました。

財務レバレッジ

財務レバレッジは「総資本(総資産)÷自己資本」で計算し、自己資本(元手)の何倍の経済的資源(資産)を利用して事業を営んでいるのかを示す指標です。財務レバレッジが高ければ、その逆数である自己資本比率(自己資本÷総資本)は下がります。
財務レバレッジはROE(自己資本利益率)とも密接に関係しており、ROEは次のように分解できます。

  ROE = 当期純利益/自己資本=売上高利益率×総資本回転率×財務レバレッジ
      = 当期純利益/売上高 × 売上高/総資本 × 総資本/自己資本

こうした関連性から、財務レバレッジを高める(=借入を増やす)場合、同じ自己資本でもより多くの資産を活用できるため、利益がしっかり増えればROEも高まります。ただし、借入による利息負担も増えるため、利益の増加が見込めない場合はROEが下がることもあります。また、返済リスクが高まる点にも注意が必要です。

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