なぜ買掛金がこんなに大きいんだ? 社会人経験がない娘の方が詳しかったこととは?

2022年2月13日

※本記事は2023年2月9日に内容の一部を更新しました。

小売業

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2021/06/23

質問

今期、生産効率アップのために思い切って新型の機械を購入したところ、貸借対照表の買掛金が猛烈に多額になってしまった会社。あなたが経営者なら次のうちどの指示を出しますか?

パターン1

機械の購入代金の未払額を買掛金にしたのが理由。このままで良い。

パターン2

機械の購入代金の未払額を買掛金から未払費用とする。

パターン3

機械の購入代金の未払額を買掛金から未払金とする。

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
決算書
勉強

新型の機械で生産効率が上がった会社

「みろく電機」は創業100年、社員数20名の中小企業です。他のメーカーではまねできない特殊な技術があり、売上は小さいものの、非常に高い利益率を実現しています。そのみろく電機は、前期思い切って大型の最新機械を購入したのです。

社員 社長、やっぱり最新機械は生産時間が短くていいですね!
社長 そうか、生産効率が上がればそれだけ納品時間も短縮できて、売上アップにつながる。大枚はたいた甲斐があったな

今期は設備投資が成功したみろく電機ですが、機械を購入した前期の決算作業ではちょっとしたハプニングがあったのです。

数カ月前 ~決算書の買掛金がやけに大きい!?

みろく電機の顧問税理士事務所の担当者から社長のところへ電話がかかってきました。

税理士事務所 社長、今期の決算書を拝見したのですが、買掛金がやけに大きいんです。売上原価と在庫の合計より大きいんですが、一体何があったんですか?
社長 あぁ、それは、最新の機械を購入して、その代金の未払分を買掛金に計上しているんですよ
税理士事務所 社長、それはおかしいですよ。この決算書を銀行や株主に見せたら、会計の基本が分かっていないって笑われちゃいますよ


社長の心の声 <まったく、この担当者は何を言っているんだ? こう見えても、私は社会人経験がうん十年のベテラン社会人だぞ。笑われるとはどういうことだ!>


質問

今期、生産効率アップのために思い切って新型の機械を購入したところ、貸借対照表の買掛金が猛烈に多額になってしまった会社。あなたが経営者なら次のうちどの指示を出しますか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

機械の購入代金の未払額を買掛金にしたのが理由。このままで良い。

パターン2

機械の購入代金の未払額を買掛金から未払費用とする。

パターン3

機械の購入代金の未払額を買掛金から未払金とする。

確かに買掛金は未払いの負債を表していますが、買掛金のままでは、税理士事務所の担当者の懸念どおり、決算書を見た外部の関係者からおかしいと思われてしまうでしょう。適切な勘定科目を検討する必要がありそうです。

確かに未払費用は未払いの負債を表していますが、時の経過とともに費用になるものが未払費用ですから、今回のように機械の購入代金の未払分としては適切ではありません。もっと適切な勘定科目を考える必要がありそうです。

実は、社長がとった行動はパターン3だったのです。買掛金と未払金の違いとは一体何でしょうか……


買掛金とは? ベテラン社会人が大学生の娘に教わった!

社長が、経理を担当している奥さんと、買掛金が大きすぎるのはおかしいと言われたことについて話しているときのことです。大学の商学部に通う娘が帰宅しました。

あっ、これお父さんの会社の決算書? 授業で上場企業の決算書を見たことあるけど、実物を見るのは初めてだわ~
社長 おっ、そうか、決算書は初めてか。貸借対照表と損益計算書というものがあってな。まぁ、いい、実物を見るのが一番勉強になるぞ
それにしても……、授業で見ている上場企業とは単位が違うわね~
社長 上場企業と比べるのはやめてくれ
ごめんごめん……。ところで、随分と買掛金が大きいんだけど、なぜなの? あんまり支払いをストップしていると取引先の信頼失うわよ
社長 何を言ってるんだ、知ったようなことを言って。それはな、前期に最新の機械を購入して、その代金をまだ払っていないからなんだ
社長の奥さん そうそう。でも、あなたもいいところに気づいたわ。税理士事務所の担当者もそこを指摘してきたのよ

すると、娘は少し考えて言いました。

その機械って、製品を製造するために使うものだよね。それなら、その未払い分は買掛金じゃなくて、未払金で計上する気がするな……
社長と奥さん えっ、未払金?

それから二人は簿記の教科書を購入し調べたところ、買掛金とは、仕入先から掛取引で商品等を仕入れる際の代金の支払い義務だということが分かりました。

仕入先から商品等を仕入れる際に、現金ですぐに代金の支払いを行うといった現金取引の場合は、支払い義務は残りませんが、支払業務の煩雑さを軽減するために、1カ月間の仕入代金を後日まとめて支払うなど、いわゆる掛取引を行う場合は、未払の仕入代金が支払い義務として残りますが、これを買掛金として計上するようです。

買掛金・未払金・未払費用との違い

また、代金を後日支払わなければならないという点で共通しているため、買掛金と間違えやすい科目として、未払金、未払費用があるが、それぞれ以下のような違いがあるということが書いてありました。

勘定科目 違い
買掛金 棚卸資産(商品や原材料など)の購入(仕入れ)や製造にかかるサービスの受け入れ(外注加工賃など)によって負債に計上するもの。
決算日時点で既に物品やサービスを受け入れ、債務となっている。
未払金 固定資産(工具器具備品や機械装置など)や消耗品などの物品の購入や、単発でのサービスの受け入れ(飲食代など)によって負債に計上するもの。
決算日時点で既に物品やサービスを受け入れ、債務となっている。
未払費用 一定期間にわたる継続的なサービスの受け入れ(支払家賃、給料手当、リース料、保険料、支払利息など)を行い、サービスの提供を受けた期間に応じて費用を計上するために負債に計上するもの。
決算日時点では確定した債務にはなっていない。


その結果、本来の営業活動以外の取引によって発生した未払額は未払金で計上するということが分かりました。

これは、今回のみろく電機のように、本業以外の債務が買掛金に多額に計上されてしまうと、決算書を見た外部者が「仕入代金の支払いをストップしているのか?」などと勘違いしてしまう可能性があるためです。

社長 お前はまだ大学生だと思っていたけど、社会人経験がうん十年の我々より賢かったってことか……
賢いとか賢くないとかの問題じゃないわ! ただ勉強したかどうかの違いよ。学校の先生も言ってたわ。会計や簿記は教科書どおりに実務が行われているから、勉強した分だけ実力がつくって
社長 俺も簿記の教科書で勘定科目の違いとか他のことも、もっと勉強した方が良さそうだな

社長の発言を受け、良い機会だということで、買掛金の処理や仕訳方法についても娘からレクチャーがあり、さらに理解を深めることができた社長でした。


買掛金の処理や仕訳方法

買掛金は、以下のように、商品等を仕入れた時(納品された時)に計上し、支払った時に減額します。
 
◇商品を掛で仕入れた時(注文した商品が納品された時):
 P/Lに商品仕入高(売上原価)を計上するとともに、B/S(負債)に買掛金を計上します(または、B/S(資産)に商品を計上するとともに、B/S(負債)に買掛金を計上します。
 
◇代金支払い時(現金預金で支払った場合):
 B/S(資産)の現金預金をマイナスするとともに、B/S(負債)の買掛金をマイナスします。
 
◇代金支払い時(手形を振り出した場合):
 B/S(負債)に支払手形を計上するとともに、B/S(負債)の買掛金をマイナスします。

なお、買掛金は別途、買掛金元帳などと言われる補助簿を使って相手先ごとの内訳を記録し、相手先別の残高などを管理することが重要です。
 
ワンポイント解説

勘定科目:「買掛金」と「未払金」

商品や原材料等の仕入といった本来の営業活動から発生した未払額は買掛金としますが、それ以外の取引で発生した未払額は未払金とします。したがって製造のための機械の購入代金は未払金となります。こうすることで、貸借対照表上、本来の営業活動による未払額とそれ以外の活動による未払額を分けて把握することができ、決算書を見る外部関係者の判断に役立つのです。
関連リンク「売掛金」と「未収入金」の違いについて確認したい方はコチラもご覧ください。
「売上より売掛金が大きいと何がおかしいんだ? 新卒君が新卒先生に格上げになったわけ」(経営センスチェック2019年9月13日号)

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