来店客数の回復が見込めない…。休業中の居酒屋がとった営業再開策とは?
2022年5月13日
質問
「居酒屋みろく」は、ビジネス客をターゲットとしていますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2カ月近く休業しています。感染者数の減少で営業再開を検討していますが、以前程の来店客数が見込めません。この状況であなたが店主なら次のうちどの行動をとりますか?
パターン1
休業前と同じように営業する。
パターン2
コストを抑えつつ、メニューのバリエーションは確保して営業する。
パターン3
人気上位のメニューのみに絞って営業する。
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営業再開
2カ月近く休業していた「居酒屋みろく」がようやく営業を再開することができ、それからしばらく経った現在の様子です。来店客数はコロナ禍が始まる前よりも減っていますが、来店されたお客さんは皆、満足そうです。
そんな居酒屋みろくですが、営業再開に際して店主は大いに悩んだことがありました。ちょっとその頃の様子を見てみましょう。
休業中 ~どのように営業を再開したらいいのか?
居酒屋みろくは、開業以来10年、東京のオフィス街で店主と女将が二人で切り盛りしてきた飲食店です。平日の夜のみの営業で、常連客を中心に賑わっていました。特に、メニューにバリエーションがあるため、それを楽しみにグループで来店する常連客が多く、それが強みとなって、主要な収益源となっていました。常連客のグループごとに来店する曜日が違うので、売上も上々の状態でした。
しかし、新型コロナ感染症が発生し、度重なる緊急事態宣言で宣言期間中は営業していても採算がとれそうもなかったため、思い切って休業していました。2カ月近く休んでいましたが、感染者数も減少してきたので、営業を再開するかどうか、店主は思い悩んでいます。店主と女将さんが今後の営業方針について相談しています。
店主 | やっと緊急事態宣言が明けそうだ。6週間は長かった |
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女将 | 休みが長かったから、体がなまってない? |
店主 | ま、徐々に慣らしていくしかないな |
女将 | どんな感じで営業するの? 仕入があるんだから、早く決めなきゃダメなんじゃないの? |
店主 | そうなんだけど…… |
女将 | 常連さんがリモートで仕事しているって言ってたから、会社に来ない日も多いみたいだし |
店主 | そうなんだよな……。客足はせいぜい7割ぐらいしか戻ってこない感じだよなぁ |
再開後に客足が戻ってくればいいのですが、オフィス街の企業も、オンライン業務の進展とともに出勤日を減少させるなどの業務改革を行っています。そのため、客足はコロナ禍前の7割ぐらいしか見込めません。
質問
「居酒屋みろく」は、ビジネス客をターゲットとしていますが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2カ月近く休業しています。感染者数の減少で営業再開を検討していますが、以前程の来店客数が見込めません。この状況であなたが店主なら次のうちどの行動をとりますか?
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パターン1
休業前と同じように営業する。
パターン2
コストを抑えつつ、メニューのバリエーションは確保して営業する。
パターン3
人気上位のメニューのみに絞って営業する。
休業前と同じように営業すると、費用がこれまでと同じように発生します。客足がコロナ禍前の7割ぐらいしか見込めない状況で、フル・ラインナップでメニューを用意する場合、これまでどおりの食材を少数のロットに変更して仕入れることになり、その在庫管理も大変な上に、場合によると仕入単価が割高になりかねません。その上で、廃棄などが出てしまうと、食材費の増加につながり、一方で少ロットで仕入れた結果、品不足になるとせっかくの販売機会を失うことになります。
店主が選択したのはパターン2でした。コストを抑えつつ、メニューのバリエーションは確保したのですが、一体どんな方法を使ったのでしょうか?
従来程の来店客が見込めない以上、メニュー数を絞り込むことは一つの方法かもしれません。ただし、人気上位のメニューのみに絞って営業する場合、メニューのバリエーションが乏しくなってしまい、バリエーションを楽しみにグループで来店する常連客が多いことが強みの居酒屋みろくでは、客離れを加速してしまいかねません。
ターニングポイントは交通機関が間引き運転をしていることに気づいたことだった
悩みながら、鉄道が趣味の店主は、馴染み客に土産でもらった東海道・山陽新幹線の携帯用時刻表の最新号を気晴らしに見ました。
女将 | 何そんなの見てんのよ、来週からどうするのよ? |
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店主 | ちょっと待って。なんか変だぞ! |
女将 | 何が変なのよ? |
店主 | 時刻表の冊子が薄いんだ |
女将 | それがどうしたって言うのよ? もぉ~、店のことちゃんと考えてよ! |
店主 | そうじゃなくて、時刻表の冊子が薄くなったっていうことは、間引き運転をして運行数が減っているはずなんだよ。ほら、東京駅発の新幹線の発車時刻の間隔が大きくなってる |
女将 | 時刻表のことは分からないけど、そりゃ、乗客が減ってるんだもん、JRだって空気を運んだってしょうがないじゃない |
店主 | そうだろう。うちだって同じだよな? |
女将 | うちは、空気は運ばないわよ |
店主 | いや、間引き運転のことだよ。お客さんが減ってるんだから、今までどおりの営業をしていたんじゃ、食材を仕入れるにしても種類は変わらなくたって数は少しずつにしなければ、食材のロスが出て赤字になる。かといって、しょっちゅう品切れじゃお客さんがガッカリするじゃん。そうすると、食材の在庫管理だって大変だよ |
女将 | そうね |
店主 | そこで、うちも間引き運転じゃないけど、人気上位のメニューだけに絞って提供するっていうのはどうかな? |
女将 | メニューが減るのは、オーダーを覚えるのが楽だわ。でも、うちの常連さんはメニューがいろいろあるのを楽しみにしていらっしゃるんだから…… |
店主 | 確かにそのとおりだ! メニューのバリュエーションはある程度確保しとかないと、常連さんの楽しみを奪っちゃうよな…… |
女将 | もしかすると、間引きするのはメニューじゃなくて材料なんじゃない? |
店主 | と言うと? |
女将 | 材料の種類はある程度絞り込むの。で、同じ材料をうまく使っていろんなメニューにアレンジするのよ |
店主 | その手があったな! |
店主は店の再開を決めました。メニューのバリュエーションは確保しつつも、材料の共通化を図ることで仕入単価を抑えることができるし、廃棄ロスの発生も抑えることができます。また、1人客も多くなることを予想し、これまで1皿を2~3人で分け合って食べる形から、1人前ずつ提供するようにして、感染予防の姿勢を示すとともに、客1人当たりの単価を上げるように検討しました。連絡の取れる常連客には、店を再開することを連絡しました。ほとんどの常連客はまた行くからという返信をしてくれました。
「材料の共通化」
飲食店での変動費の多くは、食材費です。食材費を下げると言うと、品質が悪くなると考える方もいるかもしれませんが、食材の種類を絞ったり、在庫管理を徹底したりすることによって、無駄をなくすことにより、食材の品質を保ったまま食材費を削減することは可能です。その場合、小ロットで多くの種類を仕入れるよりは、種類を絞ってある程度の数量を仕入れるようにした方が、配送費などの流通コストを抑えることにつながります。こういった方法によって、変動費率を下げられれば、限界利益率を上げることができます。
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