倒産注意の会社を見破る方法(2)! 流動資産の“あるもの”が多いと危ない!
2022年6月3日
質問
営業部長が営業部の「みろく主任」に質問しています。流動比率が良い会社でも、流動資産の中の“あるもの”が多いと危険だ。その“あるもの”とは何でしょうか?
※流動資産とは、現金預金、売掛金、有価証券、棚卸資産等です。
パターン1
流動比率が良くても、棚卸資産が多いと危ない。
パターン2
流動比率が良くても、有価証券(株式や国債など)が多いと危ない。
パターン3
流動比率が良くても、売掛金が多いと危ない。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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営業部の若手に、決算書の読み方を指導する営業主任
ミロク商事の営業部の「みろく主任」が、若手の営業部員を前に与信管理のレクチャーをしています。
みろく主任 | 取引先のB/SとP/Lから安全性を分析するときは、まず流動比率だ。流動資産を流動負債で割った数値が200%以上あれば安全と言われている |
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若手営業部員 | まずは流動比率を見ればいいわけですね |
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みろく主任 | ただ。流動比率にも問題があるんだ |
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若手営業部員 | えっ! 問題って何ですか? |
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みろく主任 | 実は、流動資産の“あるもの”が多い場合には流動比率が高くても危ないんだ…… |
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みろく主任の指導ぶりを見ながら、営業部長が微笑んでいます。今でこそ、部下に財務的な安全性の分析を指導できるようになったみろく主任ですが、ほんの1年前は全くB/SとP/Lが読めなかったのです。
流動比率が良くても、流動資産の“あるもの”が多かったら要注意!
1年前のある日のこと。みろく主任が、取引先のB/SとP/Lを見ながら、営業部長に説明していました。
みろく主任 | 部長。この会社は流動資産を流動負債で割った流動比率が200%を超えていますから、まずは安全性に問題はなさそうに思います |
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営業部長 | 確かに、流動比率はいいが……。実は、この会社はちょっと危ないぞ |
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みろく主任 | えっ、どこが危ないんですか? |
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営業部長 | 流動資産の中の、“あるもの”が多いと危ないんだ。分かるか? |
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みろく主任 | えっ? あるもの? |
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営業部長 | ちょっとヒントを出そう。例えば、売掛金1億円、有価証券1億円、棚卸資産1億円があったとして、好きなものをもらっていいって言われたらどれをもらう? |
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みろく主任 | 私はどれでも、いただけるのなら喜んで…… |
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営業部長 | ちゃんと考えなさい……。まぁ、1日じっくり考えたまえ |
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質問
営業部長が営業部の「みろく主任」に質問しています。流動比率が良い会社でも、流動資産の中の“あるもの”が多いと危険だ。その“あるもの”とは何でしょうか?
※流動資産とは、現金預金、売掛金、有価証券、棚卸資産等です。
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
流動比率が良くても、棚卸資産が多いと危ない。
パターン2
流動比率が良くても、有価証券(株式や国債など)が多いと危ない。
パターン3
流動比率が良くても、売掛金が多いと危ない。
実は営業部長の答えはパターン1でした。流動比率が良くても、棚卸資産が多いとなぜ危ないのでしょうか……。
確かに有価証券が多い場合、株価が大暴落などすれば、資金化したときに目減りしてしまいますから危険です。しかし、もっと資金化のリスクが高いものがあるようです。
確かに売掛金が多い場合、その入金が数カ月も先であれば流動負債の支払に充てるのは危ないですし、また得意先が倒産するようなことがあれば資金化できなくなります。さらに、そもそも取引先が架空売上をしている場合にはその売掛金は入金されませんから危険です。しかし、もっと資金化のリスクが高いものがあるようです。
妻の金銭感覚にはかなわない!
部長から質問された日の夜。みろく主任が自宅で妻と食事をしながら聞いてみました。彼女はみろく主任とは会社の同期であり、新卒研修で知り合って結婚したのです。
みろく主任 | ここに、売掛金1億円、有価証券1億円、棚卸資産1億円があったとするよ。君ならどれが欲しい? |
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妻 | あなた何考えてるのよ! まさか変なことしようとしてないでしょうね! |
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みろく主任 | いやいや、例えばの話だよ。どれが一番魅力的かな? |
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妻 | そりゃあ、有価証券よ。だって、すぐに株式市場で売れば、現金1億になるでしょ |
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みろく主任 | なるほど、そう考えるのか。で、次は? |
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妻 | 次は売掛金ね。1~2カ月すれば得意先からお金が振り込まれるでしょ |
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みろく主任 | 確かにそうだ |
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妻 | だめなのは、棚卸資産ね。だって、在庫は売れるかどうかも分からないし、売れたとしても売掛金になって、そこから1~2カ月しないとお金にならないでしょ |
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みろく主任の心の声 | <そうか。すぐに現金になるかどうかで考えればいいんだ。流動負債の支払に充てるという意味では、棚卸資産が多い場合、売れずに残って、資金繰りに行き詰まる可能性があるってわけか> |
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翌日。みろく主任が営業部長に話しかけました。
みろく主任 | 部長。昨日の答えが分かりました。流動資産の中で金額が大きいと危ないのは棚卸資産ですね! |
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営業部長 | その通りだ! よく分かったな。棚卸資産は現金化まで時間がかかる。だからすぐに現金化できる現金、預金、有価証券、売掛金という当座資産を、流動負債と比べるといいんだ |
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みろく主任 | なるほど。それは何という指標なのですか? |
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営業部長 | 当座資産を流動負債で割って求めるから、当座比率だ。当座比率は一般的に100%以上が望ましいと言われている |
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みろく主任 | 早速、取引先の安全性の分析をするとき、流動比率だけでなく、当座比率も分析するようにします! |
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営業部長 | それにしても、よく1日で答えが分かったな。君は財務のセンスがあるぞ |
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みろく主任 | あっ、ありがとうございます…… |
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ワンポイント解説
「当座比率」
「当座資産÷流動負債」より算出される財務的な安全性の指標であり、流動負債に対して当座資産が大きいほど資金繰りに余裕があると考えられます。当座資産には現金、預金、有価証券、売掛金等の売上債権を含めます。一般に当座比率は100%以上が望ましいと言われます。すなわち当座資産が流動負債と同額以上ある方が良いということです。
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