見方を変えればコストも変わる? 娘の「おにぎり」に学ぶコスト削減のキーポイント
2022年9月3日
質問
産業用機械を製造・販売する「ミーロック・マシン」では、新製品の開発資金を捻出するため、コスト削減の必要性に迫られていますが、コストに関する勘定科目で顕著に増えているものは見当たらず、どこに手を付けたら良いのか分かりません。あなたが経営者なら次のうちまずは何に取り組みますか?
パターン1
コストに関する勘定科目の中で大きな割合を占める材料費を削減すること。
パターン2
物流コストなど、関連コストが様々な科目に分散して計上されているものの実態を把握すること。
パターン3
コストに関する勘定科目の中で販売した後のアフターサービス費を削減すること。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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業績好調! 確かな技術で信頼される堅実企業
産業用機械の製造・販売を手がける「ミーロック・マシン」。長年の確かな製品技術やきめこまかいアフターサービスに加え、新技術も積極的に取り入れていることが奏功して、近年の業績は右肩上がりです。
社長 | コスト削減で捻出した資金を活用して、新製品や新技術の開発に取り組んだ成果だな。あのときコストを削れなかったら、開発に立ち遅れて、今頃苦戦していただろう |
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現在は業績好調のミーロック・マシンですが、3年前はコストの増加で技術開発に取り組む資金的な余裕が全くない状況でした。
3年前 ~開発資金がない! 削減できるコストもない?
3年前のミーロック・マシンは、コストの増加が経営を圧迫し、新製品や新技術の開発に取り組むための資金がない状況でした。ライバル企業が次々と新製品を発売する一方で、従来品のみを取り扱うミーロック・マシンの業績はじわじわと悪化しており、社長は焦りを感じていました。
製造部長 | これまで扱ってきた製品や技術には自信がありますが、我が社も新製品の開発に取り組まなければ、時代に取り残されそうですね…… |
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社長 | 分かっているが、最近は全体的にコストがかさんで資金に余裕がないんだよ |
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製造部長 | コストを削って開発資金を捻出できませんか |
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社長 | 損益計算書を眺めてみたが、顕著に増えているコスト科目は見当たらなくて、どの科目も全体的に増加しているんだ。開発に取り組む必要があることはよく分かっているから、少し待ってほしい |
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質問
産業用機械を製造・販売する「ミーロック・マシン」では、新製品の開発資金を捻出するため、コスト削減の必要性に迫られていますが、コストに関する勘定科目で顕著に増えているものは見当たらず、どこに手を付けたら良いのか分かりません。あなたが経営者なら次のうちまずは何に取り組みますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
コストに関する勘定科目の中で大きな割合を占める材料費を削減すること。
パターン2
物流コストなど、関連コストが様々な科目に分散して計上されているものの実態を把握すること。
パターン3
コストに関する勘定科目の中で販売した後のアフターサービス費を削減すること。
コストに関する勘定科目で顕著に増えているものが見当たらないので、まずはコストの中で大きな割合を占める材料費削減のために、仕入条件の見直しや、従来と異なるサプライヤーとの交渉などに取り組むことが考えられます。ただし、材料の品質を下げると製品の品質が下がるおそれがあります。また、安価な材料や部品を使用した結果、製造工程において仕損などが発生し、かえってコストが増加するケースも想定されるため、注意が必要です。
実はミーロック・マシンの社長が選択したのはパターン2でした。コストに関する勘定科目で顕著に増えているものが見当たらなかったのですが、損益計算書において一つの科目にまとまっていないためにコストの実態や増加原因を正しく認識できていないものがあったのです。どういうことかと言うと……
コストに関する勘定科目で顕著に増えているものが見当たらないので、まずは販売に直接影響しそうもないコストを削減するために、部品やパーツの共通化・標準化を図ることでアフターサービス用の在庫を減らす、アフターサービスの受付体制についてアウトソーシングやチャットボット導入を検討する、などに取り組むことが考えられます。ただし、アフターサービスの実施は、製品の継続的な販売や顧客の獲得・維持に貢献しており、あまりに簡素化すると販売不振や顧客離れの一因になる可能性もあるため、注意が必要です。
見かけの分類に惑わされないのがコスト削減のコツ
社長 | ただいま~ |
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妻 | お帰りなさい! 遅くまで大変だったわね |
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社長 | 損益計算書とにらめっこしたが、コスト削減案は思い浮かばなかったよ |
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娘 | ママ、明日も、部活の朝練の後に食べるおにぎりを作っておいてね! |
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社長 | コンビニで買っていくんじゃないのか? |
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妻 | 以前はそのために毎朝300円渡していたんだけど、節約のためにおにぎりを持たせることにしたの |
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娘 | ママったら、家計簿とにらめっこして、『食費』の節約を心がけているのに全体的な出費が減らないわ、ってぼやいていてね |
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妻 | よく調べたら、実質的には食べ物のための出費なのに、家計簿で『食費』として分類していないものが意外に多かったの。毎朝の300円は『教育費・お小遣い』として分類していたから節約対象になっていなかったってわけ |
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娘 | 分類に惑わされないと、削れる余地が意外にあったりするんだね! |
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このとき社長は大事なことに気付いたのです。
社長 | ……分類に惑わされない? 『毎朝の300円』みたいなコストが、損益計算書にも埋もれていそうだぞ |
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妻&娘 | えっ? |
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翌日、社長は損益計算書のコスト項目を細かく調べてみることにしました。
増加する物流コスト
近年、増加傾向が顕著なコストの一例として、物流に関連するコスト(輸送・包装・保管に関連するコスト)が挙げられます。物流コストの中心を占める輸送費は、オンラインショッピングの急速な浸透やドライバーの人手不足、原油価格の上昇などを背景に、価格が大きく上がっています。特に、海運輸送費については、世界的なコンテナ不足が要因となった高騰が続いています。また、消費者意識の変化や感染症予防の観点などから、包装や梱包に関するコスト、保管に関するコストが増加した企業も多く見受けられます。
物流コストが計上される損益計算書の勘定科目
こうした物流コストなどは、財務会計における損益計算書では一つの勘定科目にまとめて計上されるわけではなく、様々な勘定科目に分類されて計上されています。
【財務会計上の分類例】(※企業により異なる場合もあります)
材料や商品を仕入れる際の運賃や保険料…「材料費」や「仕入原価」に加算
倉庫や配送拠点の家賃や減価償却費…「賃借料」や「減価償却費」
出荷や配送作業を行う人員の人件費…「給与手当」
製品や商品を出荷する際の輸送費や梱包費…「荷造運賃」
物流コストの内容は多岐にわたり、これらは財務会計上の損益計算書では様々な勘定科目に散らばって埋もれています。そのため、物流のために実質的にどのくらいコストが生じているかが認識されにくく、漫然とした支出を続けがちです。管理会計の視点から、物流コストがどの程度生じているかを集計して分析してみると、コスト削減の糸口が見つかることがあります。
物流コスト削減のアイデア
社長 | 倉庫でのピッキング作業にずいぶん人件費がかかっているんだな。業務フローを見直した上で、可能な範囲でアウトソーシングすれば、倉庫での人件費はかなり削れそうだ |
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製造部長 | この特殊材料は仕入時の運賃と保険料が特に高いことが分かりましたよ。仕入ロットを調整すれば、運賃と保険料をもっと減らせそうです |
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社長 | 出荷量に対して輸送費が高くついている営業所がいくつかあるな。配送効率が悪いルートについては、他社との共同配送を検討しよう |
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製造部長 | 製品によって出荷時の梱包費がかさむものがありますね。製品仕様を工夫することで梱包資材を大幅に減らせるものもありそうなので、早急に検討します |
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社長 | よし! 開発資金を捻出して、我が社の底力を見せようじゃないか! |
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物流コストの実態を把握できたら、多角的に分析してみましょう。材料や製品別の物流コストの分析、倉庫・配送拠点・営業所別の物流コストの分析など、自社の状況に応じて複数の角度から分析すると削減できる項目を見つけやすくなります。また、物流コストを削減しても、製品そのものの品質を直接下げるおそれは比較的少なく、主要な材料費や部品代を極端に削ったり、アフターサービスのためのコストを大幅に削減したりするよりも、削減によるマイナスの影響が生じにくいと考えられます。自社の強みを支えるために必要なコストの削減よりも、物流コストの削減に優先して取り組めると良いでしょう。
なお、物流コストは一例なので、他にも複数の勘定科目に散らばっているコストがないか調べ、手を付けられそうなものがあれば削減に取り組めると良いでしょう。
ただし、財務会計とは別に管理会計上のデータを収集するには、時間や手間がかかります。会計システムの機能を活用するなどの方法で、無理のない形で取り組む姿勢も大切です。
ワンポイント解説
「物流コスト」
輸送・包装・保管など物流に関連するコストです。財務会計における損益計算書では、様々な勘定科目に分類されて計上されます。近年は物流コストが増加しているため、物流コストの実態を把握・分析してコスト削減につなげることが重要です。
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最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!
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