不確実な環境で利益の見通しはどう立てる? 水槽の汚れが気付かせてくれた分析法
2023年1月23日
質問
アウトドア用品を製造・販売する「MIROCS」は、新製品の販売を計画していますが、不確実な環境下で利益の見通しを立てにくい状況です。あなたが経営者なら、次のうちどの行動を取りますか?
パターン1
新製品販売による利益に影響を及ぼす要因を洗い出して分析する。
パターン2
不確実な要素がなくなるまで新製品の販売を延期する。
パターン3
新製品の販売を急ぎ、不確実なまま取りあえず始めてみる。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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着実に利益を重ねるアウトドア用品メーカー
アウトドア用品の製造・販売を手がける「MIROCS」。目まぐるしく変わる環境下でも、新製品や人気商品を的確に市場投入することで、安定して利益を計上しています。
社長 | 着実に利益を確保しているおかげで、継続的に新製品開発を行うことができるから、これも今後の利益の源泉になるだろう。いい流れだな |
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現在は利益を重ねるMIROCSですが、2年前は企業環境の変化に翻弄され、利益の見通しが立たない状況でした。
2年前 ~五里霧中? 不確実な環境で利益の見通しが立たない
2年前のMIROCSは、新型コロナウイルス感染症の流行や、それに伴う市場ニーズの変化の影響を受け、利益見通しも立てにくい状況に置かれていました。
社長 | 計画している例の新製品だが、販売でどれくらいの利益が見込めるだろうか? |
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経理部長 | 利益計画はひとまず作成しましたが、最近は不確実なことが多くて、その通りの利益を達成できるかが分からない状況です |
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社長 | 確かに、販売単価は決まっていても、今後の市場動向によっては販売数がぶれるかもしれないしね |
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経理部長 | 原材料価格が不安定な場合もありますし……。利益の見通しを立てにくくて、手探り状態ですよ |
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質問
アウトドア用品を製造・販売する「MIROCS」は、新製品の販売を計画していますが、不確実な環境下で利益の見通しを立てにくい状況です。あなたが経営者なら、次のうちどの行動を取りますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
新製品販売による利益に影響を及ぼす要因を洗い出して分析する。
パターン2
不確実な要素がなくなるまで新製品の販売を延期する。
パターン3
新製品の販売を急ぎ、不確実なまま取りあえず始めてみる。
実はMIROCSの社長が選択したのはパターン1でした。新製品販売による利益は、様々な要因の影響を受けて変動しますが、各要因が利益に与える影響の度合いは異なります。社長は、利益に影響を及ぼす要因を洗い出した上で、各要因が利益に対してどの程度影響を与えるかを分析することにしたのです。
新製品を販売しても損失を計上することが明らかな状況では、新製品の販売を中止する方が適切なこともあります。ただし、新製品の市場投入を過度に避けると、利益獲得のチャンスを逸してしまうことにつながるおそれもあります。
製品の販売を進めることは重要です。しかし、販売を急ぐあまり不確実な要因を検討しないまま取りあえず販売を始めてみるというのは危険かもしれません。その前にやっておいた方がいいことがありそうです。
要因が変化することで、結果はどのくらい変わるのか
社長 | ただいま~ |
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妻 | お帰りなさい! |
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社長 | あれ? この金魚の水槽、掃除したばかりなのにもう汚れているな |
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妻 | 水槽の位置を変えたから、日差しが当たってコケが生えやすいのかしら |
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息子 | エサのやりすぎかも |
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妻 | フィルターの交換頻度も影響しているんじゃない? |
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社長 | いったい何の影響が大きいんだ? |
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息子 | じゃあ、水槽の位置やエサの量、フィルターの交換頻度の条件をそれぞれ変えた場合に、水槽がどれくらい汚れるか観察してみるよ |
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社長 | それはいいアイデアだな。何の影響が大きいのかが分かれば、しょっちゅう掃除をしなくて済む |
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このとき社長は大事なことに気付いたのです。
社長 | ……何の影響が大きいのか? 新製品の利益見通しについても同じことが言えるかもしれないぞ |
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妻&息子 | ? |
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利益についての感度分析
翌日、社長は、経理部長が作成した利益計画を見てみました。
社長 | 新製品販売による利益に影響を及ぼす要因を洗い出すと、『販売数量』・『1個当たり変動費』・『固定費』の3つと考えることができるな |
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経理部長 | 各要因について、取り得る範囲の下限と上限を調べてみました。1個当たり変動費は引き下げが難しい一方で、上昇するリスクが高めです |
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社長 | 各要因がこの範囲で変動することによって、利益にどれくらい影響を及ぼすか分析してほしい |
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様々な原因が影響して水槽が汚れるのと同じように、様々な要因が影響して利益は大きく変動します。特に、近年のような不確実な環境下では、利益に影響を及ぼす各要因がぶれやすく、その結果、利益も大きくぶれることが想定されるため、利益の見通しを立てにくいと言えます。
このような環境下では、各要因が変動することによって、利益に対してどの程度影響を及ぼすかを分析することが有用です。こうした分析を「感度分析」と呼び、利益の見通しを立てたりその計画を実行するか否かを意思決定したりする際の参考になります。また、感度分析を行うと、利益に対する影響度合いの高い要因が判明するので、その要因について重点的に調査を行ったり検討したりすることができます。特に、検討や判断のためにかけられる時間が限られているケースでは、利益への影響度が高い要因について優先的に検討することが求められます。
感度分析を分かりやすく表す方法として、「トルネードチャート」があります。各要因について下限と上限を想定し、要因の値がその範囲で変化することによって、利益がどのように変化するかを横棒グラフで表したものです。
経理部長 | 感度分析をすると、利益の取り得る範囲が明確になって、見通しが立ちやすいですね |
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社長 | この新製品の利益に特に大きな影響を及ぼす要因は、『販売個数』と『1個当たり変動費』ということだな |
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経理部長 | 販売個数の落ち込みや、1個当たり変動費の上昇への対策をさらに検討しておいた方が良さそうです |
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社長 | 利益の見通しをしっかり分析した上で、新製品の販売を開始しよう! |
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ワンポイント解説
「感度分析」
利益や売上などを予想する際、ある要因が変動することで、利益などに対してどの程度影響を及ぼすかを分析することを言います。近年の不確実な企業環境では、利益などに影響を及ぼす要因がぶれやすいため、感度分析を利用して多角的に検討を行うことが有用です。
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