粗利の意味と計算方法、粗利が重要な理由、他の利益との違いとは?
2023年2月13日
質問
あるスーパーで商品10個を100円で仕入れて店に並べたところ、このうち9個が135円ですぐに売れました。このとき粗利(売上総利益)はいくらでしょうか?
パターン1
売上150円(10個分)から仕入額100円(10個分)を引いて、50円の粗利。
パターン2
売上135円(9個分)から仕入額100円(10個分)を引いて、35円の粗利。
パターン3
売上135円(9個分)から仕入額90円(9個分)を引いて、45円の粗利。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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社長からの出題: 商品の粗利はどのように計算するのか?
「スーパー・ミロク」の二代目社長である弥勒松太郎氏は、大学在学中の3人の息子のうち1人を将来の三代目社長にしようと考えています。自分の後継者を決めるにあたっては、経営センスを最も重要視する方針です。
社長 | おい、お前たちのうち、誰かしらは、将来スーパー・ミロクの三代目になる気はあるのか? |
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長男 | ま、悪くはないよね? 就活しなくていいし…… |
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次男 | 相続の手続が面倒なんだろうけど、おじいさんからの事業を継承するのはいいかもしれないな |
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三男 | そのつもりで大学で勉強してるんだよ! |
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社長 | そうか。全くその気がないわけではないのだな。では、今後は、三代目に誰が一番相応しいかを判断するのに、折に触れて試験をして、その結果で三代目を指名するが異存ないか? |
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息子一同 | うん |
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社長 | よし、じゃ、早速問題だ! |
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三男 | 粗利って、売上高から売上原価を引いた差額の利益って考えていいの? |
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社長 | そう、それが粗利だ |
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長男 | こんなの小学生だって計算できる。1個10円で仕入れた商品を15円で売って、それが10個だから、50円の儲けだよね? |
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次男 | いや、売れたのは9個だから、15円×9個で135円が売上高だよ、兄さん。そこから仕入れた商品の原価100円を引いたら、35円の儲けだよ |
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三男 | 売上高は15円×9個で135円だけど、売上原価は90円だから、45円の粗利だよ |
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質問
あるスーパーで商品10個を100円で仕入れて店に並べたところ、このうち9個が135円ですぐに売れました。このとき粗利(売上総利益)はいくらでしょうか?
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パターン1
売上150円(10個分)から仕入額100円(10個分)を引いて、50円の粗利。
パターン2
売上135円(9個分)から仕入額100円(10個分)を引いて、35円の粗利。
パターン3
売上135円(9個分)から仕入額90円(9個分)を引いて、45円の粗利。
パターン1の計算は、仕入れた商品が完売した場合の粗利になっていますが、完売していない場合には正しい粗利計算ではありません。
パターン2の計算は、売上額から仕入額全額を引いて粗利を計算してします。キャッシュの動きには合致しているかもしれませんが、正しい粗利計算ではありません。
パターン3の計算は、売れた分だけ売上と売上原価を計上しており、正しい粗利計算になっています。
粗利計算のポイントは、売れた商品の数に注目することだった
息子たちの反応を見ながら、松太郎社長は、内心ほっとしていました。誰が三代目になるにせよ、一応は実家の家業に全く興味がないわけではないことを確認できたからでした。
設例で考える売上原価と粗利の計算方法
ではここで売上原価と粗利の計算方法を、「松太郎社長からの出題」を元に考えてみましょう。
【前提条件】
第1案の計算は、今日仕入れた商品(10個分)を今日の売上原価にし、売上も10個分計上してしまう方法です。確かに、仕入れた商品が完売した場合にはこの粗利と一致します。商品仕入額100円(10個分)を売上原価にするなら、売上高は150円(10個分)計上したくなるかもしれませんが、今日まだ売れていない分の商品まで含めて売上計上してしまうのは、さすがにダメです。
第2案の計算は、今日仕入れた商品(10個分)の仕入額をすべて今日の売上原価にする一方で、売上高は今日売れた商品分(9個分)を計上し、翌日売れた残りの商品(1個分)は翌日の売上高にする方法です。これは売上代金の入金(9個分)と仕入代金の支払い(10個分)という、キャッシュの動きに合致しているとも言えますが、今日9個と翌日1個売れたのに、売上原価は今日10個分、翌日はゼロとなっており、粗利がバラバラになってしまいますので、正しい粗利計算とは言えません。
第3案は、今日売れた商品(9個分)だけを今日の売上高に計上するとともに、その9個分の仕入額だけを今日の売上原価に計上しています。翌日もう1個売れたので、その分の原価は翌日の売上原価に計上しています。そうすることで、粗利は売れた個数に応じて今日と翌日に計上され、正しい採算計算になりました。
第3案のような正しい採算計算にするためには、今日商品を10個仕入れたからと言って、そのまま売上原価にするのではなく、翌日以降に売る分の原価は、今日の売上原価には含めないようにする必要があります。
なお、粗利(粗利益)は、損益計算書(P/L)では売上総利益として表示することになっています。この売上総利益から販売費及び一般管理費(給与手当、賃借料、水道光熱費など諸々の費用)を引いて、営業利益を計算します。
このように、粗利(=売上総利益)はその期に売り上げた分だけの売上と売上原価から計算し、キャッシュの動きに合わせて計上するわけではありません。
粗利が重要な理由
粗利(売上総利益)は、提供する商品や製品、サービスそのものの価値を表す指標となります。粗利の水準は業種や企業によって異なりますが、粗利が高いということは、それだけ顧客にとって価値のある商品等を提供できていると言えるでしょう。
また、企業が負担する販売費及び一般管理費は、この粗利(売上総利益)から差し引かれますので、十分な粗利(売上総利益)を稼ぎ出せていないと、販売費及び一般管理費を差し引いた段階(営業利益)で赤字になってしまいかねません。
粗利と他の利益との違い
損益計算書(P/L)には全部で5つの利益が表示されます。その中で最も上に表示される利益が売上総利益(粗利)で、商品やサービスそのもので稼ぎ出した利益と言えるものです。5つの利益にはそれぞれ次のような意味があり、「利益」と言っても中身は大きく異なります。
ワンポイント解説
「粗利」
粗利(=売上総利益)は売上高から売上原価を引いて計算しますが、その期に売り上げた分だけの売上と売上原価から計算する必要があります。キャッシュの動きに合わせて計上するわけではありません。
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