成長企業の罠(1) 市場全体が拡大して売上が増えているケース
2023年3月13日
質問
この数年大ヒットしている新型ゲーム機を販売する小売業。この新型ゲーム機の売上高は毎期、順調に伸びており、今期の増収率は20%でした。ところで、増収率20%で十分なのでしょうか? 皆さんが経営者なら、どのような分析をしてみますか?
パターン1
増収率20%を、日本の経済成長率と比較する。
パターン2
増収率20%を、新型ゲーム機の国内市場の成長率と比較する。
パターン3
増収率20%を、前期の増収率と比較する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
|
|
増収率30%では納得しない会社
「みろくカメラ」は、全国規模で量販店を展開する小売業です。この数年、AI(人工知能)機能を搭載した家庭用の新型ゲーム機が飛ぶように売れています。みろくカメラでも、この新型ゲーム機の売上高が前年比30%も伸びています。ところが、経営者も従業員もこの増収率では納得していません。
営業本部長 | 社長、今月の新型ゲーム機の売上高が対前年同月比で30%増を達成しました! |
---|
幹部社員 | お~! 素晴らしい! |
---|
社長 | ありがとう。でも、みんなこれで気を抜いてはいけないぞ。もしかしたら、30%でも十分ではないかもしれないんだ。もっと、売って売って売りまくろう! |
---|
幹部社員 | お~! |
---|
今でこそ、増収率30%でも危機感があるみろくカメラですが、実は前期が終わったころは、社長を含めてみな危機感がなかったのです。
新型ゲーム機の増収率20%! みんな良くやった!
前期が終わり、最初の経営会議でのことです。営業本部長から、新型ゲーム機の年間の売上高が前年比で20%増加したことが報告されました。
営業本部長 | ……ということで、新型ゲーム機の増収率はなんと20%という結果になりました |
---|
幹部社員 | お~! 素晴らしい! |
---|
社長 | みんな良く頑張ってくれた。増収率20%とは驚きだ。おかげで今期は利益も増えそうだな。社員の賞与もはずもうじゃないか! |
---|
幹部社員 | ありがとうございます! |
---|
賞与が増えることに大喜びの幹部社員たちを見ながら、社長はふと気になりました。
社長の心の声 | <ちょっと待てよ。増収率20%は確かに高い数字だが、これで十分と言えるのか? 何かと比較しなければいけないんじゃないか?> |
---|
質問
この数年大ヒットしている新型ゲーム機を販売する小売業。この新型ゲーム機の売上高は毎期、順調に伸びており、今期の増収率は20%でした。ところで、増収率20%で十分なのでしょうか? 皆さんが経営者なら、どのような分析をしてみますか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
増収率20%を、日本の経済成長率と比較する。
パターン2
増収率20%を、新型ゲーム機の国内市場の成長率と比較する。
パターン3
増収率20%を、前期の増収率と比較する。
確かに、日本の経済成長率を上回る成長率があれば安心ではありますが、そもそもほとんど成長していない、成熟期の日本経済の成長率と比較してもあまり意味があるようには思えません。何か良い比較対象があるはずです。
実は社長が選んだのはパターン2でした。新型ゲーム機の国内市場の成長率と比較するとはどういうことでしょうか……。
確かに、新型ゲーム機の前期の増収率を上回る増収率であれば、ますます売上が増えているわけですから安心ですが、自社の外に目を向けて考える必要もありそうです。
中学生の息子の期末テストの点数が10%も伸びた!
経営会議で新型ゲーム機の売上高の伸び率が20%だったことが報告された日の夜。社長が自宅に帰ってくると、うれしそうな顔をしながら、中学生の息子が話しかけてきました。
息子 | お父さん、この前の期末テストの合計点が275点だったんだ。前回250点だったから、25点も伸びたよ |
---|
社長 | お~。それは大したもんだ。10%の増収率、いやいや、得点アップか! |
---|
息子 | それで、お願いがあるんだ。今、人気の新型ゲーム機を買ってほしくて…… |
---|
と、そこに妻が割り込んできて言いました。
妻 | あなた、だまされちゃだめよ。確かに250点から275点に10%もアップしたけど、学年全体の平均点は20%もアップしたのよ |
---|
社長 | つまり、平均点は20%アップしたのに、お前は10%しかアップしなかったということか? |
---|
妻 | そうよ。だから、学年の順位は、前回より落ちてるわ |
---|
息子 | へへっ。ばれちゃったか~ |
---|
社長の心の声 | <ちょっと待てよ。自分がアップしても、周りがそれ以上にアップしていたら、自分の順位は下がる、ってことか。うちの会社も同じことが起きているかもしれないぞ> |
---|
翌日、社長は経営幹部を集めて、新型ゲーム機の去年1年間の全国販売高がいくらだったか、その金額は前年比どの程度の増加率だったか、という国内市場の成長率を調べるよう指示をしました。
その調査の結果、新型ゲーム機の国内市場は、前年比25%も伸びていたことが分かりました。
社長の心の声 | <しまった。20%の増収率で喜んでいたけど、実はうちの会社のマーケットシェアは低下していた可能性があったってことか……> |
---|
ワンポイント解説
「マーケットシェア」
市場占有率のことを言います。今回の事例であれば、年間の新型ゲーム機の国内市場において、みろくカメラの売上高が占める割合を指しています。官公庁の統計資料や、各種業界紙、情報提供会社の調査資料などが参考になる場合があります。
売上高の成長率(増収率)が高い場合でも、マーケットの増加率を下回る場合にはマーケットシェアを落としている可能性があるのです。
経営センスチェックの記事の中から、資金繰りの改善、好業績を錯覚しないためのポイントなど、テーマにそっておススメの記事を抜粋した特別版冊子を掲載しています。
最新版では、「値上げ前に考えたいコスト削減方法」について取り上げています。世界的な原油や原材料の価格高騰により、値上げが多い一方、競争戦略的に値上げをしない、または値下げに踏み切る企業もありました。
皆さまがコスト削減するにあたり、ぜひ参考にご覧ください!
X(旧Twitter)で最新情報をお届けしています
Tweets by mjs_zeikei