営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)! その意味と注意点とは?
2023年3月23日
質問
業績好調で利益を計上できている会社がありますが、キャッシュ・フロー計算書を見たところ、営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字、資金流出)となっています。考えられる要因として当てはまるのは次のうちどれでしょうか?
パターン1
借入金の返済をしてキャッシュが出ていったため。
パターン2
大量の商品を現金購入し、売上済みであるが、販売代金はまだ回収できていないため。
パターン3
商品仕入代金の支払条件を、仕入時の現金払いから、仕入の1カ月後払いに変更したため。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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キャッシュ・フロー計算書の見方・使い方(営業キャッシュ・フローの重要性)
卸売業を営む「MJS物産」では、キャッシュ・フロー計算書を作成しているものの、その見方・使い方が分からず活用されていませんでしたが、新任経理部長が来てから、経理部門のスタッフや経営陣にその見方・使い方を伝授したことで、皆が活用に興味を持つようになりました。
最近のMJS物産では、キャッシュ・フロー計算書の区分の一つである「営業キャッシュ・フロー」の重要性を理解し、皆が注目するようになっています。
数カ月前 ~営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)ってどういうことだ?
MJS物産は中小企業であり、キャッシュ・フロー計算書の作成義務はないものの、以前からキャッシュ・フロー計算書を作成はしていました。ただし、それを活用できる人が退職して以降、いつしか宝の持ち腐れ状態になってしまっていました。そんなとき、新任の経理部長がやってきました。
経理部長 | あれっ、キャッシュ・フロー計算書を作成してるんだ!でも使っている雰囲気は全くないな……。なんてもったいないことを。活用しない手はないな |
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そう思った新任経理部長は、関係するメンバーを集め、キャッシュ・フロー計算書についての簡単な説明をした後、問題を投げかけてみました。
経理部長 | さて、この会社のキャッシュ・フロー計算書なんだが、【図表】のとおり、営業キャッシュ・フローがマイナス、つまり赤字で資金流出の状態となっているんだ。考えられる要因としてどんな要因が考えられると思う? |
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経理スタッフX | 本業で利益が出ていないということでしょうか? |
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経理部長 | そうだね。本業で利益が出ていないというのが、営業キャッシュ・フローがマイナスになってしまう最も典型的なケースだ。例えば、100万円で仕入れてきた商品を120万円で売ったけど、給料や賃借料や交通費等々の販管費が50万円かかっていたらどうなっちゃう? |
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経理スタッフY | 「120万円-100万円-50万円」で30万円の赤字になっていますから、どんどんキャッシュが減っていってしまいます |
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経理部長 | そういうことだ。こんな赤字の商売を続けていたらすぐにキャッシュがなくなってしまうよね。じゃあ、さっきの【図表】が、業績好調で利益を計上できている会社のものだったらどうだろう? |
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スタッフ一同 | …… |
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経理部長 | 実はね、本業で利益が出ているのに営業キャッシュ・フローがマイナスになってしまうこともあるんだ |
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経理部長からの問いかけに、最初のうちは経理スタッフたちからなかなか意見が出てこなかったのですが、しばらくすると徐々に意見が出始めました。経理スタッフたちからはパターン1、2、3のような要因が上がったのですが、あなたならどれが「本業で利益が出ているのに営業キャッシュ・フローがマイナスになってしまう」要因として、当てはまると思いますか?
質問
業績好調で利益を計上できている会社がありますが、キャッシュ・フロー計算書を見たところ、営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字、資金流出)となっています。考えられる要因として当てはまるのは次のうちどれでしょうか?
▼あなたの思うパターンをクリック▼
パターン1
借入金の返済をしてキャッシュが出ていったため。
パターン2
大量の商品を現金購入し、売上済みであるが、販売代金はまだ回収できていないため。
パターン3
商品仕入代金の支払条件を、仕入時の現金払いから、仕入の1カ月後払いに変更したため。
確かに借入金の返済はキャッシュ・フローのマイナス(資金流出)の要因の一つです。しかし、借入金の返済による支出は財務キャッシュ・フローのマイナスとなり、営業キャッシュ・フローのマイナスにはなりません。
大量の商品を現金購入し、売上済みであるが、販売代金がまだ回収できていない場合、それは営業キャッシュ・フローのマイナス(資金流出)の要因の一つとなります。どういうことかと言うと……
確かに、商品仕入代金の支払条件を変更すると営業キャッシュ・フローに影響します。しかし、仕入時の現金払いから、仕入の1カ月後払いに変更すると、仕入代金の支払タイミングが遅くなるため、営業キャッシュ・フローのプラス要因になります。
営業キャッシュ・フローってなんだ?
経理部長は簡単な設例を使って営業キャッシュ・フローがどう変わるかを経理スタッフたちに説明することにしました。
【ケースA】
100万円で仕入れてきた商品を120万円で売り、販管費が50万円かかっている。なお、費用の支払いや収益の入金はすべて済んでいるものとする。
【ケースB】
100万円で仕入れてきた商品を180万円で売り、販管費が50万円かかっている。なお、費用の支払いや収益の入金はすべて済んでいるものとする。
100万円で仕入れてきた商品を180万円で売り、販管費が50万円かかっている。なお、費用の支払いはすべて済んでいるが、収益の回収はまだ済んでいないものとする。
経理部長 | ケースAは商売で損失を出しているケース、つまり本業で利益が出ていないケースで、営業キャッシュ・フローがマイナスになってしまう最も典型的なケースだ |
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経理スタッフX | 損失30万円分だけ、営業キャッシュ・フローもマイナスになったということですね? |
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経理部長 | そういうことだ。そして、ケースBは商売で利益を出しているケース、つまり本業で利益が出ているケースで、営業キャッシュ・フローもプラスになっているケースだ |
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経理スタッフY | ケースAの反対で、利益30万円分だけ、営業キャッシュ・フローもプラスになったということですね? |
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経理部長 | そうだね |
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利益が出ているのに営業キャッシュ・フローがマイナス?!
経理部長 | 問題はケースCだ。ケースCは商売で利益を出しているケース、つまり本業で利益が出ているケースだが、営業キャッシュ・フローがマイナスになってしまっているね |
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経理スタッフX | 利益が30万円なのに、営業キャッシュ・フローは150万円のマイナスなんて、ビックリですね! |
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経理部長 | 何でこんなことが起きたのか分かるかな? |
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経理スタッフY | 商品の仕入代金100万円と販管費50万円の支払いで、合計150万円のキャッシュが出ていった……。でも、売上代金180万円が回収できていないので、キャッシュが150万円減ったまま…… |
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経理部長 | そのとおりだよ。だいぶ分かってきたね! |
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営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)の場合の注意点
経理部長 | ケースCのような場合は、儲かっているからって安心してしまいがちだけど、実は資金が回っていないなんてことになりかねないから、とても注意が必要だ |
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スタッフ一同 | なるほど |
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経理部長 | 商品を買った後、キャッシュが増えるまでには、それを売るまでの期間、さらに売上代金を回収するまでの期間がかかるわけだから、結構な時間がかかる。損益にばかり目がいっていると、キャッシュ・フローで落とし穴にはまりかねないんだ。他にも注意点はいろいろあるよ |
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そう言うと、経理部長は次のような注意点を挙げたのです。
営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)の場合の注意点
営業活動から得られている資金だけでは営業活動による支出をまかない切れていない状態である。不足分は手許の資金を切り崩してまかなったり、借入れや増資などを通じて調達したりしているはずである。
(1)利益が出ていないことで、営業キャッシュ・フローがマイナスになっている場合利益が出ていないことで営業キャッシュ・フローがマイナスになっている場合には、利益が出るような対策を検討する必要がある。
(2)利益が出ているにも関わらず、営業キャッシュ・フローがマイナスになっている場合利益が出ているにも関わらず営業キャッシュ・フローがマイナスの場合には、資金不足に陥るおそれがあることを見落としがちなので注意が必要である。
(3)営業キャッシュ・フローが大幅なマイナスの場合営業キャッシュ・フローが大幅なマイナスになっている場合には、原因(大幅な損失を計上した、多額の在庫を抱えている、重要な売上債権の回収が進んでいないなど)を把握し、対応策を検討する必要がある。大幅なマイナスが一時的なものなのかどうかが重要であり、資金が回るのか十分に注意が必要である。
(4)営業キャッシュ・フローのマイナスが継続している場合マイナスが一時的なものでなく、今後もこの状況が続くようであれば、資金が続かなくなるおそれがある。原因(利益が出ていない、在庫を抱えている、売上債権の回収が進んでいないなど)を把握し、対応策を検討する必要がある。資金が回るのか十分に注意が必要であるとともに、営業キャッシュ・フローを黒字化する方策の検討が必要である。
キャッシュ・フロー計算書を漫然と眺めるのと、注意点を頭に置きながら見るのとでは大違いなのだと、経理スタッフたちも理解できたようです。
ワンポイント解説
「営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)」
営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)になってしまう最も典型的なケースとしては、本業で利益が出ていないということが挙げられます。仕入代金の支払いが済んでいる一方で、その売上代金の回収が済んでいなければ、利益が出ていたとしても営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)になってしまいます。「営業キャッシュ・フローがマイナス(赤字)になっていないか」は、キャッシュ・フロー計算書の重要なチェックポイントの一つです。
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