値引き価格で新規の注文を受けた方が良いのか、受注判断に使える会計ノウハウとは?
2023年7月23日
質問
チーズケーキが評判の洋菓子店「ミロクケーキ」は、あるホテルから「継続的に大量購入するので、定価の20%引きで200個販売してくれないか」という新規注文の打診があり、採算を検討してみることにしました。この注文を受けても追加で固定費がかからないものとして、次のいずれの方法で採算を計算しますか?
パターン1
1個当たりの費用(変動費+固定費)と販売価格を比較する。
パターン2
1個当たりの変動費と販売価格を比較する。
パターン3
1個当たりの固定費と販売価格を比較する。
この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。
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会計の考え方を活用して判断できた!
洋菓子店「ミロクケーキ」では、あるホテルからの値引き価格での新規注文を受けた方が良いのかを、会計の考え方を活用して適切に判断することができたことで、社長の会計への関心が深まったようです。
そのきっかけとなったのが数カ月前のある出来事でした。
数カ月前 ~新規注文が舞い込んだ
ミロクケーキは、郊外の駅の近くにあるケーキ屋さんです。イートインもでき、レトロな店構えや立地の良さもあってか、常に人が絶えません。店のパティシエは、国際的なコンテストで入賞したこともあり、美味しさはどれもお墨付きです。中でもチーズケーキには定評があり、販売個数も順調に右肩上がりです。
社長はちょうど販路拡大を考えており、そんな矢先に新規の注文が来ました。とはいっても、定価の20%引きを要求されており、慎重に意思決定しなければなりません。
チーズケーキの1個当たりの製造コスト等は、次のようになっています。また、現在の生産量は3,600個ですが、生産量4,000個までは現在の固定費(総額432,000円)のままで製造可能です。
社長 | 1個当たりの製造コストが255円かかるのか。では、定価の20%引きの240円で販売したら、1個当たり15円の損失になってしまうではないか。ということは、新規注文を断るのが良いのだな |
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このケースのような場合、受注した際の採算をどのように計算したら良いのでしょうか。
質問
チーズケーキが評判の洋菓子店「ミロクケーキ」は、あるホテルから「継続的に大量購入するので、定価の20%引きで200個販売してくれないか」という新規注文の打診があり、採算を検討してみることにしました。この注文を受けても追加で固定費がかからないものとして、次のいずれの方法で採算を計算しますか?
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パターン1
1個当たりの費用(変動費+固定費)と販売価格を比較する。
パターン2
1個当たりの変動費と販売価格を比較する。
パターン3
1個当たりの固定費と販売価格を比較する。
今回の注文では、1個当たりの製造コスト(255円)が販売価格(240円)より高く、注文を受けると損をするように思えます。しかし、製造コストの内訳によって採算が大きく変わってくるため、製造コストの内訳の情報を見た方が良さそうです。
今回の注文の採算を考える際には、1個当たりの販売価格(240円)が変動費(135円)より高いかどうかが重要です。どういうことかと言うと……
今回の注文では、1個当たりの固定費(120円)が販売価格(240円)より低く、注文を受けると採算がとれるようにも思えます。しかし、今回のケースのように生産量が増えても追加で固定費かかからない場合、重要なのは変動費なのです。
飲食店経営の親友との会話 ~デリバリーを始めて採算がアップした理由
ある日、社長は飲食店経営の親友と久しぶりに再会しました。
社長 | 久しぶり。元気にやっているかい? |
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親友 | 元気にやっているよ。コロナも少し落ち着いたし、こうやって会うのも久しぶりだな |
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社長 | 確かに、ここ2年ほどは緊急事態宣言などで、なかなか友達と会う機会もなかったな。ところで、君の店、以前はイートインだけだったけど、コロナ禍になってデリバリーを新たに始めたよね。コロナ禍でデリバリーを始めた店って多いよな |
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親友 | ああ。今はかなり戻ってきたけど、一時期は外食する人がほとんどいなかったからね |
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社長 | でも、なんでデリバリーを始めたんだい? コストが余計にかかって利益が減りそうな気もするんだけど |
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親友 | いや、そうじゃないんだよ。デリバリーをやってもやらなくてもかかるコストがあって、それを上手く活用すればコストはそれほど増えないんだ |
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社長 | えっ、例えば? |
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親友 | 手待ちになっている人員をデリバリーに回してもコストは増えないし、デリバリーを始めても店舗の賃借料は増えない。それどころかデリバリーによって多少でも利益が得られれば、人件費や店舗の賃借料などの支払いに回せるしね |
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社長 | そうなのか。やってもやらなくてもかかるコストがあるから、それを除いて考えて、多少でも利益が見込めるのであれば、引き受けてもいいのかもしれないってことか。この考えは、今直面している新規注文を受けるかどうかの問題にも使えそうだな。多少でも利益が出るのかを経理部長に調べさせよう |
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新規注文を受けない場合と受けた場合の採算の比較
新規注文を受けることで多少でも利益が出るのかを社長は経理部長と一緒に調べることにしました。
経理部長 | 新規注文を受けない場合と受けた場合の採算の比較は、次のようになります。この表から営業利益が21,000円増加していることが分かります |
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社長 | なるほど、確かに営業利益が21,000円増えているから、新規注文を受けた方が採算が良いことになるな。ところで、限界利益というのがあるが? |
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経理部長 | 限界利益とは売上高から変動費を差し引いた額のことを言います。ここでは、分かりやすいように比較表に固定費を入れましたが、今回新規注文を受けても受けなくても固定費は変わりません。変化するのは売上高と変動費です。新規注文による売上高から変動費を差し引いた額である限界利益が黒字なら、新規注文を受けるのが良いことになります! |
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社長 | 新規注文を受けると変化する売上高は200個×240円で48,000円、変化する変動費は200個×135円で27,000円、限界利益は21,000円の黒字か。結局、変動費135円よりも売上高240円が大きいから、注文を受ければ利益が増えるってことか! |
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経理部長 | その通りです |
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限界利益が黒字かどうかで判断する際の注意点 ~定性的な要素の加味
社長 | なるほど。注文を受ける際の採算の計算方法が分かったぞ! 実際に注文を受けるかどうかは、新規注文を受けることによるリスクなんかも考慮しないといけないがな |
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経理部長 | また、たくさん作ってしまうことで品質水準が落ちてしまうこともあります。ですので、限界利益などの会計情報を踏まえた上で、それ以外の定性的な要素も含めて総合的に判断する必要がありますね |
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社長 | では、そうしよう |
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社長は、限界利益が黒字であることを確認することで、追加受注による採算の計算をしっかり行うとともに、他の定性的な要素も勘案して、新規注文を引き受けるかどうか最終決定することにしました。
ワンポイント解説
「追加受注による採算の計算」
注文の打診があった際、「販売価格 < 製造原価」であると採算がとれないと考えてしまいがちです。しかし、本記事にもあったように、製造原価の中には、製造数量が増えても追加で原価が生じない固定費も含まれています。「販売価格 > 変動製造費」であれば、追加受注により採算が良くなる点に留意が必要です。
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