この経費は交際費?会議費? 交際費の適切な区別と管理方法

2024年8月3日

質問

「ミロク通商」では、経理経験の浅い担当者が、経費の勘定科目がわからずに困っています。次のうち、法人税法上、交際費として処理することが望ましい費用はどれでしょうか?

パターン1

当社の営業担当者が得意先担当者と喫茶店で商談をした際の喫茶代3千円

パターン2

当社の営業部長が得意先の社長を接待した際の2人分の飲食代3万円

パターン3

従業員全員を対象に慰安として行った納涼会の開催代金5万円

この質問をイメージして以下のストーリーをお読みください。

領収書
ミント

交際費の取扱いを理解して、効率的な経理業務を実現

輸入機器の販売を行う「ミロク通商」。近年は新たな顧客を開拓し、事業規模も拡大しています。会社の成長に伴い経理業務は増えているものの、効率的な処理が行われています。


社長

経理の業務はスムーズにいっているようだね

交際費と会議費などの区別を理解したら、処理に迷う時間が減って効率的に処理できるようになりました


経理スタッフ


社長

税制改正にも対応したし、経理部長が戻ってきたらびっくりするぞ

現在は効率的に経理業務が行われているミロク通商ですが、1か月前の経理部では未入力の領収書が山積みになっていました。

1か月前 ~これって交際費? どの勘定科目を使えばいいかわからない!

1か月前、ミロク通商の経理部長が手術のために長期の休みを取ることになりました。経理部では、経験の浅いスタッフが一人で悪戦苦闘しています。


社長

おや、領収書が山積みだね

いろんな経費があって、どの勘定科目を使えばいいかわからないんです。入力を後回しにしているうちに溜まってしまって


経理スタッフ


社長

どれどれ。この領収書は、営業担当者が得意先の担当者と喫茶店で商談した時のものか

得意先と会った際の経費ですから交際費で処理するんでしょうか……


経理スタッフ


社長

まあ、販売費及び一般管理費のなかの勘定科目を適当に選んで処理しておけばいいんじゃないか

質問

「ミロク通商」では、経理経験の浅い担当者が、経費の勘定科目がわからずに困っています。次のうち、法人税法上、交際費として処理することが望ましい費用はどれでしょうか?

▼あなたの思うパターンをクリック▼

パターン1

当社の営業担当者が得意先担当者と喫茶店で商談をした際の喫茶代3千円

パターン2

当社の営業部長が得意先の社長を接待した際の2人分の飲食代3万円

パターン3

従業員全員を対象に慰安として行った納涼会の開催代金5万円

会議に関連して、飲食物を供与するために通常要する費用は、会議費にあたります。当社の営業担当者が得意先担当者と喫茶店で商談をした際の喫茶代3千円はこれに該当すると考えられるので、会議費として処理するのが妥当です。

当社の営業部長が得意先の社長を接待した際の飲食代3万円について、一人当たりの額を算定すると、(3万円÷2人=)1万5千円になります。法人税法上の交際費等の範囲から除外できる上限の1万円を超えているため、この飲食代3万円は交際費として処理するのが妥当です。

従業員のみを対象として慰安のために行われる運動会や旅行等のために通常要する費用は、福利厚生費にあたります。従業員全員を対象に慰安として行った納涼会の代金5万円もこれに該当すると考えられるので、福利厚生費として処理するのが妥当です。

性質が違うものを区別しないで処理すると後で困る!

その日、社長は早めに帰宅しましたが、家の中には誰もいないようです。


社長

ただいま~。あれ、留守か?

おかえりなさい! 珍しく早いのね。庭にいたのよ。植えているハーブの区別をしていたの



社長

ハーブの区別? まとめて適当に植えておけばいいじゃないか

仕事一筋のあなたは庭の手入れなんてしないから知らないでしょうけど、ミントは他のハーブと性質が違って繁殖力が強いのよ。区別しないで適当に植えると庭中ミントに侵食されて、後で大変なことになるんだから



社長

性質が違うものを区別しないで適当に処理すると後で大変なことに……? いや~、耳が痛いな

翌日、社長は経理部に足を運びました。


社長

経理部長が休みに入る前に、交際費は他と性質が違うので気を付けて処理するようにと言っていたことを思い出してね。いろいろ調べたよ

交際費と他の費目との区別

会計上の費用は、法人税法上も損金として算入できるものが多いものの、なかには損金として算入できないものもあります。

法人税法上、「交際費等」の額は、原則としてその全額を損金不算入とする考え方が採られています。


社長

税法上の交際費等に該当するものとそうでないものを区別しておかないと、後で税務申告の時に大変になってしまう

交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、得意先や仕入先などに対する接待や贈答のために支出するものを言います。

交際費との区別に迷いやすい費目として、会議費や福利厚生費、広告宣伝費などがあります。


社長

交際費との区別に迷いそうな費目をメモしておいたよ。これらは交際費等の範囲からは除かれるから、全額損金算入できるんだ

・会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
 ⇒会議費として処理
・専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
 ⇒福利厚生費として処理
・カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
 ⇒広告宣伝費として処理


社長

当社の営業担当者が得意先担当者と喫茶店で商談をした際の喫茶代は、会議に関連して通常必要な範囲内のものだから会議費として処理しよう

納涼会は従業員全員を対象として慰安のために開催したものですから、その代金は福利厚生費として処理するんですね


経理スタッフ

交際費等の範囲に含まれない1万円以下の飲食費 ~税制改正に留意


社長

社外の関係者と接待飲食をした場合でも、一人当たりの支出額が1万円以下なら、一定の事項を記載した書類を保存しておけば、交際費等の範囲には含まれないんだ

それなら聞いたことがあります。税制が改正されたんでしたね


経理スタッフ

社外の関係者と飲食等をした際の支出(※1)についても、一人当たりの支出額が1万円以下であり(※2)、一定の事項を記載した書類が保存されている場合には(※3)、交際費等の範囲から除外されます。従前、この判定基準は一人当たり5千円でしたが、令和6年度(2024年度)の税制改正により一人当たり1万円に引き上げられました(※4)

税法上、1万円以下の飲食費は交際費等の範囲から除外され損金算入できることから、区別のために、通常の交際費とは異なる費目(会議費や少額交際費など)を用いて処理することが考えられます。

(※1)社内の役員や従業員等のみで飲食等をした際の支出は除きます。
(※2)1万円以下か否かの判定は、自社が適用している消費税等の経理処理に基づいて行います。
    税抜経理方式の場合は税抜金額、税込経理方式の場合は税込金額で判定します。

(※3)次の事項を記載した書類を保存しておく必要があります。
    ・飲食等のあった年月日
    ・飲食等に参加した得意先、仕入先等の氏名または名称およびその関係
    ・飲食等に参加した者の数
    ・その飲食等に要した費用の額、飲食店等の名称および所在地
    ・その他飲食等に要した費用であることを明らかにするために必要な事項
(※4)1万円の判定基準は2024年4月1日以後の支出から適用されます。

営業部長が得意先の社長を接待した際の飲食代は3万円ですから、一人当たりの額は1万5千円ですね。交際費等の範囲から除外できる上限の1万円を超えているので、これは交際費として処理しなければ


経理スタッフ

なお、交際費等は、原則としては全額損金不算入の扱いとされていますが、法人の規模に応じて次のような特例措置が設けられています(※5)

(※5)特例措置の適用期限は2027年3月31日までに開始する事業年度までです。

期末資本金の額が1億円以下の法人(※6) ①定額控除限度額(年800万円)まで損金算入
②(交際費等に含まれる)飲食費の額×50%を損金算入
※①又は②のいずれかを選択
期末資本金の額が1億円超の法人(※7) (交際費等に含まれる)飲食費の額×50%を損金算入

(※6)資本金の額が5億円以上の法人の完全子法人等である場合を除く
(※7)期末資本金の額が100億円超の法人は、交際費等の額の全額が損金不算入

交際費の管理方法

一定のルールに基づいて適切な勘定科目を選んで処理することで、経費の内訳をしっかり把握できますね


経理スタッフ


社長

交際費は、支出額をおさえつつ効果的に使うようにしなければいけないな

企業が取引先とコミュニケーションを深めたり、新規顧客を開拓したりするためには、ある程度の交際費が必要です。ただし、交際費はその効果が不明瞭な場合も多く、方針を欠いた交際費の使用は、経費のかさむ原因になります。交際費を使用する際には事前承認を得るといった社内規程を設けるとともに、定期的にその内容や予算枠を見直すとよいでしょう。


社長

この機会に、交際費の管理方法も見直すことにしよう。それと、週末に庭の手入れを手伝って、たまには妻を接待しなくちゃな

「交際費」

法人税法上、交際費等の額は、原則としてその全額を損金不算入とする考え方が採られています(ただし法人の規模に応じた特例措置があります)。そのため、これを区別して処理する必要があります。なお、令和6年度(2024年度)税制改正により、交際費等の範囲から除外される飲食費の基準が1万円に引き上げられています。今後の税制改正にもご留意ください。

お知らせ

次号は、2024年8月15日に公開となります。引き続きご愛顧くださいますようお願い申し上げます。

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